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天国の門 4. 美紀の夢 《小説》

4 . 美紀の夢

ジョーとその仲間は
タワーマンションのロビーに集まり
旅立ちの話していた

いったい何処に安全な場所があるんだ          
何処へ行ったってBLOODY HELL の
奴等に見つかってしまう

何処か遠くへ ずっと遠くへ 
そんな話をしていた

しばらくすると仲間の1人 
美紀が起きて来た
眠たそうに目を擦りながら

美紀は15歳の少女で
ショートカットのキュートな娘だった          
元々は僕等の仲間ではなく
ベースのセンターゲート近くで
泣きながら震えていたのを
ポールが見つけて
米国基地内に招いた娘だった

美紀は小さな時に何か大きな病気を患ったらしく その影響なのかあまり長い時間起きていられない
一日のうち15時間以上を寝て過ごす様な生活を続けていた

起きている時には
いつも不思議な話を聞かせてくれた           
それは 夢で見た話し

美紀の右手の甲には小さなハート型のアザがあり
それが美紀のトレードマークだよって笑ってた

僕等の傍に来て椅子にちょこんと
座り美紀は言った

うん…高い塀に囲まれた場所
大きな鉄の扉
中にはね林檎の木が沢山生えてるの
赤い林檎が沢山なってたよ

そこで写真を撮ったよ
沢山の人が居て 皆んな笑ってた
車椅子のお爺ちゃんみたいな人も居たよ
皆んなそこに居たよ
だけど美紀は居なかった
だけど だけど 美紀は皆んなの事
ちゃんと見てるからね
不思議な夢だったよ そう話した

ポールは本当?
沢山の人が笑ってたの
なんだか良いね 林檎の木があって
楽園みたいだね

美紀 お前さ ずっと寝てるけど
寝てる間に未来にタイムトラベルしてるんじゃ無い?

もっと話し聞かせろよ!
ポールは美紀をからかう様に話しかけた
その様子を見て仲間は笑った

美紀は僕等の不安や心配を消してしまうほど
希望に満ちた夢の様な話をいつもしてくれた

ジョーは 高い壁に大きな鉄の扉…
なんだか刑務所みたいだな
そう口にした

仲間は顔を見合わせて
刑務所だよ そう刑務所
街の西の外れに昔さ 
刑務所があったよね
いつ頃だったかな
使わなくなって廃墟になってた場所
あったよな

口々にそう話し出した
その刑務所のある場所は街からかなり離れており
周りには何も無い
山間の場所だった

そこならBLOODY HELLの奴等が来ても直ぐわかるよ
それにそんな山間の場所まで来ないだろう
そう話した

美紀は屈託の無い笑顔で笑った

その日から旅立ちの支度が始まった

ある者は武器をあるだけ集めた
またある者は衣類や毛布や布団を
またある者は食べ物を

美紀は林檎の木の苗木を沢山集めていた
やっぱり林檎、絶対に林檎だよ
そう言って沢山の苗木を軍用ハマーに積み込んだ

新たな居場所への旅立ちの支度は終わり
出発の時を待っていた

僕等の心の中には
不安の欠片も無かった

早朝ハマーに乗り込み
山間の場所へ向かった
ジョーのハマーのバックシートに乗った美紀は
車の窓を開けて何か歌を歌っていた
まるで遠足にでも出かけてる様な楽しそうな顔で
ショートカットの
髪の毛が風に揺れていた

車のバックミラーに映る美紀の姿を見て
安全に仲間を新たな場所まで連れて行ってやる 
そう心に誓い
ジョーはゆっくりとアクセルを踏み込んだ

希望の場所へと向かって

Photo : Fee Pic

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