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魔法の薬 《詩》

「魔法の薬」

この世界で一番綺麗な水と
悲しみの涙と枯れない花を
混ぜて浄化させたら
魔法の薬が出来るんだって

そいつを飲めば苦しみの
無い世界に行けるって噂だ

小さな瓶に入ったその魔法の薬を
今夜 街外れの教会で配るらしい
もう通りには行列が出来ている

僕も汚れた服で汚れた髪を
撫で付けながら
その弱者の列に並んだ

高そうな毛皮のコートを着た
牧師が現れ

魔法の薬はもう残り少ない 
そう言って薬の値段を
跳ね上げやがった
それはとても僕には
買えないほどの金額

クソ野郎!
小さく呟いてポケットの中で
中指を立てた

お金を持ってる奴は
我先に牧師へと駆け寄り
小さな瓶に入ったその薬を
買おうと必死だ
自分だけは苦しまずに済む様にと
金持ち共の喧嘩が始まったのさ

やっちまえ! 
集まった野次馬がけしかける

僕はキャメルに火を付けて
その滑稽な様を見ていた

なんだかアイツらに似てる…

僕は少し笑った

Photo : Jun Takeichi

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