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天国の門 3. BLOODY HELL 《小説》

3 . BLOODY HELL

街に蔓延る幾つかのギャンググループ          
その中でも1番残忍で凶悪なグループが勢力を強め統合を始めていた

女達は犯され
子供や老人は殺された
逆らう者は見せしめの為に
手足を切断され
メインストリートに放置された

切断された手足から腐食が始まる
血の匂いを嗅ぎつけた
野良犬が人肉を貪り喰らう
絶対的な力の前に誰もが服従する様に          

その手段は人間のやる事では無い
悪魔そのものだった

暴力、武力、恐怖により幾つかの
ギャンググループを自分の支配下に
置き大きなギャング組織を構築していた

奴等がアジトに選んだ場所は
海沿いにある
工場跡地 そこには
自家発電装置もあり夜中でも
サーチライトが
そのアジトを照らし暗闇に浮かび上がらせている

工場跡地の入り口には
黒い布に白い文字で
BLOODY HELLと書かれた旗が
たなびいていた

BLOODY HELL のリーダーは
政と言う名の日本人だ
長髪に髭面のピッピーの様な
風貌をした男で
奴等は皆 黒尽くめ服に銃、火炎放射器、ナイフなどで武装していた

今夜もBLOODY HELL
のパトロール部隊がアジトから出発する
黒いランクルに
数人の武装したギャング
数台のランクルで廃墟の街を巡回し
食い物やガソリン、衣類や武器などを盗み調達している様子だった

無症状で生き残った僅かな
街の人々は怯え姿を隠して
暮らしていたが
BLOODY HELL の連中はそんな
無抵抗の人間まで捕虜として
アジトへ連行した
命を助けてやる代わりに奴隷の様な労働を強要していた

この街は独裁者 政の思い通りに動き始めていた

政は1人アジトの最上階の部屋から廃墟の街を見下ろしていた

そして何枚かの写真を胸のポケットから取り出し
指先で愛おしく撫でる様な仕草をして涙を流した

その写真には疫病で命を落とした愛する妻とまだ小さな娘の写真だった

沢山の人が感染し命を落とした
政は妻と娘の亡骸にさえ合う事が出来なかった それほどまでに
大量の死体が散乱し山積みとなり身元確認すら出来無い状態だった
愛する妻と娘を失い
この世界に取り残された男

政の心は常に悲しみの傍にある
思う事は妻と娘と一緒に
暮らしてた時間

未来に夢を見る事も無く 
ただあの時に戻りたい
愛する人に触れ抱きしめたい
孤独と寂しさの中に政は生きている

そんな政の本当の姿を知る者は
誰も居なかった

政はベッドに横たわり
天井を見上げた
そこには失くしたものも
得たものも何も見えない
闇だけがあった

静かに朝日が水平線から顔を出し
薄い紫色に
空の色を変え始めていた

Photo : Free Pic

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