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「人生100年時代」の“お金の不安”と“ライフシフト”

かつて、とあるセミナーで「貯蓄金額の多寡は、その人の“不安の総量”に比例する」と語っていたのは、“いい会社”に投資する投資信託というユニークな金融会社「鎌倉投信」を創業し、今は、共感資本社会の創造を目指す非営利株式会社eumoのCEOを務める新井和宏さん。

とても考えさせられる言葉でした。

先の見えない将来を想うとき、“お金の不安”を感じないという人はいないでしょう。
いつ病気になるかもしれないし、突然、事故に巻き込まれて怪我をするかもしれない。いつ地震に襲われるかも分からないし、台風や大雨の被害も年々、甚大になっている。経済情勢もまったく安心できない。突然、仕事を失うことがあるかもしれないし、そもそも、会社が倒産することだって絶対ないとはいえない…。

考えてみると、人が「不安」を感じる大半は「お金の不安」といえるかもしれません。そして、この「お金の不安」の厄介なところは、いくらあれば安心できるかがさっぱり分からないこと。つまり、「お金の不安」は「お金」では解決できそうもないのです。

2019年に「老後2,000万円」問題が話題になりましたが、「じゃ、2,000万円あれば、安心できるのか」といえば、恐らく多くの人は「全然、安心できない」と感じるのではないでしょうか。

大きな会社では、こうした不安を少しでも解消するために、定年が近づいてきた世代に対して「マネープラン研修」なるものを実施するケースが多いと思います。

一般的なケースでは、会社の人事や労務の担当者が自社の退職金の状況や企業年金の制度を説明し、社外のファイナンシャルプランナー(FP)が社会保障制度(例えば「ねんきん定期便」の見方、など)やライフプラン・シミュレーションのやり方を教えるといったプログラムが多いようです。

企業としては、自社の定年とその後に関わる制度をちゃんと伝えておかなくてはならないという、ある種の“義務”があるので、マネープラン研修を「やらなければならない」と考える背景は理解できなくもないのですが、一人ひとりの人生のさまざまな要素に一切触れず、「お金のことだけ」を考えさせるマネープラン研修は、よっぽど工夫しなければ、「百害あって、一利なし」と私は思います。

「お金の不安」には、大きく分けて二つの段階があります。

最初の段階は、「分からない不安」。
自分の資産状況や年金制度そのものに対する知識不足から、自分のお金に関する将来像がまったく見えず、霧の中を手探りで歩いているような不安を感じる段階です。実は、この不安を感じている人は意外と多いと思います。
この段階の人には、企業の「マネープラン研修」は、一定の意味を持つと思います(そうだとしても、個人的には、「研修」までする必要はなく、「資料配布」程度で十分だとも思いますが)。

そして、次の段階が「考え過ぎる不安」。
新井さんが指摘する「不安の総量」に比例する不安といってもいいかもしれません。
将来のリスクを考えれば考えるほど、「不安の種」はどんどん見つかります。
人によっては個人的な不安の要素だけではなく、国際紛争や地球環境の不安まで考えて、「お金の不安」をさらに大きく「育ててしまう人」もいるかもしれません。
(そういう意味で私は、企業のマネープラン研修は「百害あって一利なし」と思っています)

「人生100年時代」を迎え、人生が長くなることによって、必然的に「お金の不安」は大きくなります。
現在の年金制度は、「定年55歳、平均寿命65歳」程度の時代に考え出されたもので、概ね8〜10年程度の「老後」を想定していたといいます。
もちろん、その後の制度の見直しによって、ある程度の対策は取られているわけですが、もはや「悠々自適の年金生活」が幻想となっていることは、誰もが認めるところでしょう。

そこで国は、躍起になって「お金がお金を生む」「お金に働いてもらう」制度に国民のお金を向けることで、経済を活性化しながら、「お金の不安」の解消を図ろうとしているかのようです。
(「老後2,000万円」問題の発端になった金融庁のレポートも、元々はこうした意図をアピールするためのものでしたね)

超低金利時代において、タンスで眠っているお金を投資に回すことの全てを否定するものではありませんが、こうしたムーブメントの根底には、「お金の不安」を「お金で解決」しようとする発想があるように思います。

しかし、どこまでいっても「お金の不安」を「お金(を増やしたり、貯めたりすること)で解決」することは出来ません。

発想の転換が必要なのです。

それでは、「人生100年時代」の「お金の不安」から脱出するためのアイデアを考えみましょう。他にもアイデアがある方は、ぜひ、コメントをいただければ嬉しいです。

1・毎月の生活費をミニマムまで下げる
  →生活に必要な最低限のコスト水準を下げると、人生は自由になる
2・毎月の固定的な出費を止める
  →保険、車(&駐車場)、使っていないサブスク・サービス、等
3・長く働く
  →「定年」までではなく、「生涯」働く
4・助け合える仲間(コミュニティ)を増やす
  →何かの時に助け合える仲間がいる安心を手にいれる
5・「結婚する」「子供をつくる」
  →家族は、最強の助け合いのコミュニティ
6・大切なことにはお金をケチらない
  →お金の価値は「使い方」で決まる
7・依存先を増やす
  →経済的な依存先が一つしかないと不安は大きくなる
8・「ねんきん定期便」をチェックする
  →年金は、そう簡単には破綻しない
9・「お金の不安」を消そうとしない。「不安」と共に生きていく
  →「不安」とお友達になれば「不安」は消える
10・「ライフシフト」する!
  →老後のためではなく、「今」を生きる!

私が代表を務めるソーシャル・ベンチャー「ライフシフト・ジャパン」が開催している、100年ライフをデザインするワークショップ「LIFE SHIFT JOURNEY」に参加される皆さんは、標準的な日本人の意識に比べれば、これからの人生に向けてチャレンジする意欲を持った方々が多いのですが、そうした方々の中にも、やはり「お金の不安」を理由に、新しい生き方・働き方への挑戦をためらう人は多いです。

そんな人たちに無理に挑戦を強いるようなことはしませんが、対話をしながら、ちょっと残念な気持ちになってしまうのが正直なところです。

「お金の不安」は、「ライフシフト」の最大の敵かもしれません。
「お金の不安」と闘い、消し去ろうとするのではなく、「お金の不安」から脱出するアイデアを少しづつ実践することで、「ライフシフト」の小さな一歩を踏み出す人が一人でも増えていって欲しいと願っています。



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