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フィンセント・ファン・ゴッホ / メトロポリタン美術館
上野の秋
公園口の改札を出るとそれほど多くはない人の流れが秋の木々の向こうまで繋がっているのが見える。そのゆったりとした流れに身を任せて歩いていくとケーナの音がアンデス山脈の風をここに運び舞いあげている。
煉瓦色の四角い大きな塊が近づいてくるとそこから人の流れが右に曲がっていく。そうすると建物の2階で食事をしている人たちの楽しそうなひとときが一服の絵画のように眼前に広がり、あの絵画の中に没入し、同じ食事をする人としてこの身を固定したくなった。
食事をすませ二次元の絵画の中から解き放たれて展覧会の会場に入る。ゴッホだ。オランダのアムステルダムの美術館で見たゴッホとは違ったコレクションを眺めながら私より100年早く生まれた人がオランダのハーグで薄暗い絵を描き始めフランスで明るい色彩の絵を描いたのを眺めあるいた。
美術館を出てしばらくすると五重の塔が見えてきた。そうだ、あの向こうに東照宮がある。歩を進めると石の鳥居がここだと呼んでいる。その声のまま鳥居に向かい一礼して鳥居をくぐった。
石畳みの向こうにキラキラ光る唐門が見えた。両側には地震があってもびくともしないであろう丸い太い石の台に支えられた灯籠が並んでいる。
嬉しいことに手水舎があるではないか、そこで手を清め唐門に向かい礼拝する。
東照宮の作法に従い二拝二拍手一拝の礼をすると神君の力を借りたのか、またここから始まるそんな想いに満たされた。これから秋は深まる。
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