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焚き火、ガス、そして星

普段はそんなこと聞く必要もないし、みっともないような気がしてあまり言わないのだけれど、こないだ彼と暖かいこたつに入ってごろんと横になっているときに、ふと気が向いたので「今も私を好き?」と聞いてみた。

彼は私の髪を大きな手で撫でながら、好きだよと言った。けれど私はそこで会話を終わらせるのがなんとなくいやだったので、隣にいる彼をぼんやり眺めながら、もう付き合って3年くらい経つのに?と尋ねてみた。

すると彼は「もちろん。でも、3年前とは好きが少し違うよ」と、私の髪を優しくもてあそびながら言ったので、私はどこがどう違うのか気になってしまい、すぐさま「どんなふうに?」と聞き返した。

彼は、ほら、杉の葉を火の中にいれたらよく燃えるでしょう、3年前はあんな感じだった、けど今はガスで燃えている感じかな、というようなことを言った。なあにその喩え、と言うと、でも本当にそんな感じなんだよ、今の方が火力が強くて安定している感じ、と彼がまじめに言うので、私は胸のどこかでとてもほっとして、うふふと笑ってしまった。

そしてこれから先もどんどんその火が強く安定していくといいね、というような話をした。好きという気持ちは少しずつ変わっていくものだと思うけど、好きがなくならないままでいたいねと。そしてその後で私が、安定して落ち着いた好きに飽きて、新しくてわくわくする好きに走ってしまうひとびとの存在について話すと、彼は私の話を聞きながら目を細めて笑っていた。

これからどうなっても、この日を思い出してまた彼と話がしたい。

彼が家へ帰ってしまった夕方、お風呂で熱い湯舟に浸かりながら、少しずつその炎が強まり、同時に少しずつ安定して燃えるようになれば、いつかそれはきっと星のように静かに、けれど何よりも強く青く、きらきらと燃えるのだろうと思った。

たとえばそこへ行き着くまでには、もっと違う火や燃え方を経ていくのかもしれない。炎がゆらめくことも、もしかしたらあるのかもしれない。

けれど私は最後に行きつくのが星だといいなと、ほわほわ白い湯気に囲まれながらぼんやり思ったのだった。

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