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家の作りやうは、冬をむねとすべし?

 家の作りやうは、夏をむねとすべし。
 700年前に書かれた吉田兼好のエッセイ『徒然草』が、未だに強い影響力をもつ。 それくらい京都の夏は蒸し暑い。 ぶぶ漬けを勧めたくなるほど暑い。

 吉田兼好は京都・仁和寺の近くに住んでいたと言われている。 冷蔵庫や下水道が無かった時代、食べ物はすぐ腐る、赤痢などが流行る、とにかく夏は恐ろしい季節だったはずで、体感の問題だけでは無かったのだろう。 京都の夏の風物詩『祇園祭』は、もともと疫病の原因=たたりを鎮めるための祭りだったと言うではないか。

 さて、現代は冷蔵庫も下水道もエアコンもあり、夏の暑さはかなりコントロールできている。 東大の先生がおっしゃる通り、人間は暑さに強い動物だから、冬をむねとすべし。 かも知れない。 

 しかしである。 夏の暑い時期に、古い家を訪れると本当に涼しい。 深い庇が影を作り、熱い空気は上へと逃がす。 色も音も香りもすべてが涼しげ。 頭と五感を総動員して作り上げた夏涼しい家。 そんな昔の人の知恵が、忘れ去られていくのは勿体ない。

 ちなみに、若い頃「ぶぶ漬けでもどうどす?」って、本当に言われたことがある。

29/5/2018

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