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北海道警察柔道大会~選手選抜からの猛特訓編②

柔道の選手に抜擢された私は、警察学校くらいの強度だと思って、「あのくらいの適当な練習して終わりだろうな」くらいにしか思っていませんでした。
初日は顔合わせで道場に集まり足りないものとか買い足しに捜査用車両(覆面)で出かけてそのままお昼ご飯を公費(雑費)でごちそうになりました。
この柔道大会の選手に選出されるとお昼代が浮くのが地味にうれしかったですね。

交番ではどうしてもテンヤ物(出前)が多く、交番に備え付けてある出前簿冊(ビリビリなものや閉店した店も未だに出前メニューが残っているだらしなさ)から選んで出前を取るのです。
当時は、近くのコンビニに制服でフラッといくのがダメな風潮でした。
私は制服でコンビニ行った方が警戒になっていいだろって勝手にやっていましたが、当時は根拠もなしにダメな感じでした。
ちなにみ数年後、警戒もかねて制服でどんどんコンビニに買い物警戒しにいきなさいと通達がでましたが。
どうやら時代が私に追いついたらしいです。

2日目からは、道場の物品が少し充実したので、ダラダラとやるかーって集合して準備体操を円になり実施して、(もちろん掛け声は私)打ち込みから寝技、乱取りとなんとなく流れていきました。

みんなそれぞれ本業としての仕事があります、柔道も仕事の一環ですが、やはり刑事なんかは事件があれば刑事部屋に帰りみんなと仕事をしますし、私ももちろん当直明けの非番と休みをすべて返上し柔道をしました。
はい、へとへとでした。

練習は結構ガチ目にやりました。
みんな体がデカく選手に選出されるくらいですから、それなりに強いのです。

以前記事にもしましたが、北海道の警察官は運動しなさすぎですね。
ただこの一割強くらいが運動したりなんらかの格闘技をかじっていますので、その人達が活躍の場といわんばかりにこの大会にこぞって出てくるのです。
だから柔道大会などはメンツが毎年変わらず猛者ぞろいなのです。入れ替えは新人くらいではないですかね?
私はこの大会の雰囲気が大好きでした。
柔道 剣道 逮捕術は、大体札幌のきたえーるで行われますので、いわゆる同窓会みたいなノリで「おおー今年もきましたか、お互いね」というような会話があちこちで聞こえます。

この大会に出るようになってから、もっと鍛えなければいかんと鍛える事に火がついたように感じます。
上には上がいます。
新人枠でこの大会に足を踏み入れると、私のように常連となるか、もう術科は嫌や!と脱落するかになります。

交番では通常通り24時間仕事をして、非番は雑用をほかに任せて道場へ直行、夕方に解放され独身寮で風呂に入り、風呂場で意識を手放し溺れそうになったこと数回を経験し、また寝て休日はまた昼前ころに道場に集合し夕方まで訓練をやる。
休日はこれでつぶれ、翌日は交番勤務・・
ブラックすぎないか?
大好きだったドライブもやらなくなり、代わりに筋肉痛でシップの匂いを醸し出しながらパトカーにのる始末。

余談ですが、私の立場は「新人」から、「術科をする地域課の若い馬力のある奴」に変化しました。

それには理由があります。

これまで新人枠、といってもまだ新人ですが
先輩や周囲の上司から新人と呼ばれ「名前」を呼んでもらえませんでした。
しかし、この術科をやりだすと、毎回へとへとになりながら交番勤務に就く姿勢や非番、休日と毎日道場に行って訓練する姿勢を見せる(勝手にみられるのですが)と周囲の反応というのが「あいつ頑張っているな、名前何だっけ」「地域の馬力のある奴だろ?異動でうちの課にほしいな」と変化するわけです。

どこの課も若くて馬力のあるやるがほしいのです。

過去記事を貼りましたが、「アメリカの雇用」と同じ原理です。

また人間の心理といやつでしょうか、イタリヤの思想家マキャヴェも言っています。
群衆を統率するには利益と圧倒的な暴力だと
ちょっと違いますが、特に警察官は暴力に敏感です。

他人は立場を持った人間や暴力を備えた人間にやさしくなります。
敵に回したくない、やその立場にすり寄りたいなど打算的な意味で優しくなるのです。

余談の余談ですが、私と同じ刑事で同僚で同い年で彼は柔道特錬出身、私はずっと格闘技やっていて、そのころには柔道3段の段位を取得していました。
彼とは馬が合い2人でペアで行動していた時期がありました。
ある時110番通報が入り、やくざが暴れているという内容でした。
現場には交番員数名がそのやくざらしき男を取り囲んでいましたが、何もしていません、しかし男は交番員に威嚇していて、つまり交番員は手出しができなかったという訳です。
なぜ、理由はその男が「極真空手出身者」だったからです。
交番員は、そういった暴力に自身がなく、向かって言ってやられたらどうしようという変なお巡りさんプライドがありました。
しかし、私と彼はそんなことは気にもしないで接近しました。
男は「俺は極真空手をやっているんだぞ、近づくな」とファイティングポーズを取りながら吠えていましたが、お構いなくずいっと接近すると、勢いで男が私を殴ってきました。
私はそんなものいたくなかったのですが、彼はムカついたのでしょう。男をぶん投げました。
そうして、私も男をもう一度立たせ再度ぶん投げました。

交番員は「公務執行妨害だ」と騒いでいましたが、そんなものの被害者になるのはごめんですので、いらないいらないと取り消し、男を警察署へ連行していきました。
暴れていただけで罪は犯していませんが、焼きを突っ込んで解放するために、男を私と彼でサンドイッチで連行しました。

警察署についた男は、先ほどの勢いはなくシュンとなっていました。

男は「極真空手っていえばビビッて手を出してこなかったから調子に乗りました」
「でもお二人にはかなわないと悟りしかも投げられたのでもう観念しました。」
とのこと。

人は暴力を前にして敵わないと思ったらおとなしくなる典型ですよね。
ちなみに男は極真空手を1か月経験し稽古がつらすぎて逃げた口でした。

※空手や格闘技をやっている本物は強く優しくバカなことをしません、あしからず。


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