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パワハラ、サビ残、家族の鬱・・不幸の波状攻撃から転職によって好転した未来


①はじめに

20代中盤の夏、私は勤めていた(当時)一部上場の自動車部品製造会社を退職した。
普段Xで部品メーカーは薄給だのOEMの奴隷だのと言っているが、実は私が前職を辞めたきっかけは上が直接的な理由ではなかった。
確かに元々チャンスがあったら転職したろと思ってはいたが、実は前職で大きなきっかけがあり、それがトリガーとなって本格的に転職活動を開始していた。
この記事では(きっかけを含む)転職に至る背景と、どのようなことを考えて転職したのかについて書き記す。
転職というのは人生における一大イベントだ。
転職を考えている方に一つの参考になれば幸いである。

②就職

改めて、私が新卒で働き始めたのは自動車部品を作る会社だ。
私の印象では昭和な雰囲気の漂う会社で、
・上司から部下への罵声熱い指導
・公開説教は当たり前
・上司に相談にいくと「あぁ?」とコミュニケーションを拒絶するかのような態度
・上司は部下から渡された書類はひったくるように取る
・サービス残業(勤怠システムで退勤ボタンを押した後に仕事)
・有休休暇拒否
こんな会社である。

上司がこんな感じでコミュニケーションを積極的に取りたくなかったので一社目では社会人としての報連相が全くやる気にならず、仕事は誰にも相談せずに自分の思った通りに進めるという癖が付いてしまって二社目で苦労することになったのは秘密である。

ちなみに前職の時は「社会人というのはこんなものだろ」くらいに考えていたが、転職後の会社の廊下に貼ってあったパワハラ啓蒙ポスターで「罵声を浴びせたり公開説教したりすることはパワハラである」と書いてあるのを見て、罵声や公開説教はパワハラであることを初めて知ったクチである。
みなさんも重々気をつけてもらいたい。

③父親の単身赴任

不満を抱きながらもなんとなく仕事をしていたが、数年経った頃に私の家庭に大きな出来事が起きた。
父親の働いていた工場が閉鎖となったのだ。
父親の会社は地元ではかなり大きな工場で、小中学校のクラスのうち数人はそこで働いているような会社であった。
会社からは一応系列会社である別の工場(直線距離で数百km)への転籍を勧められたが、父親は産まれてから50年近く一度も地元外はおろか、実家すら出たことが無い人間である。
転籍して少しでも給料をキープするか、それとも地元に留まるために転職するか。

出した結論は「転籍する、そして単身赴任」であった。
当時私の妹はまだ学生で学費を稼ぐ必要もあったし、実家には祖母も母親も住んでいたからだ。
そして何より父親は転職というものをやったこともないし、やろうとも思わない古い人間だ。
しかしこの選択は後に父親を苦しめることとなる。

④鬱の総合商社爆誕☆

単身赴任をして1年程経った頃、父親が鬱になった。
元々が繊細な人である。
住み慣れない土地かつ、初めての一人暮らしは身に応えたのだろう。
母はこの頃から父に対して精神的に支えていた。

さらなるイベントとして、私の弟が就職した。
誰もが知る、超有名メーカーだ。
「大きな会社に行けば、一生安泰」
昔からはこんなことを私の親は言っていた。
つまり弟は親の言葉を忠実に守ったわけだ。
しかし1か月経った頃、なんと弟までも鬱になった。

父の鬱とは違い弟の鬱症状は激しかった。
一言で言って、まともな精神状況ではなくなってしまったのだ。
当時、私は実家で母と祖母の3人で暮らしていた。
しかし、祖母は当時痴呆が入り始めていて戦力にはならない。
私と母親と一人暮らしをしていた妹(学生)で弟の精神面のサポートをしていた。

悪いことは立て続けに起こる。
弟の鬱がひどくなり始めて1か月後、家族の精神状態に引っ張られたからか今度は母まで鬱になり始めた。

これによって私の家族は以下の構成となった。
祖母:痴呆(実家)
父:中程度の鬱(一人暮らし)
母:小程度の鬱(実家)
私:健常(実家)
弟:重度の鬱(一人暮らし)
妹:健常(一人暮らし)

鬱の総合商社爆誕である。

家庭内が鬱の総合商社の状況では、積極的に出張したり転勤したいなどとは思わない。
仕事はマジメにはやるが、「働き方」については会社側にもある程度融通を効かせてもらわないと詰んでしまう。

私は当時の主任に我が家の状況を話した。
「出張はやってもいいが、2週間程度にしてほしい」
このようにお願いし、理解を得ることができたのだ。

そして半年が経った頃、会社から驚きの辞令が下る。
タイへの出張の厳命だ。

⑤そんななかタイへの出張

当然のごとく、私は半年前の主任への話を盾に拒否した。
私「主任に伝えています。2週間までしか出張できません」
会社「そんなこと聞いてない。いいから行ってこい」
こんなありさまだ。
いったん保留として、家族会議を開くこととなった。

家族と相談し、2か月弱であればなんとかなりそうだという結論になった。
幸いなことに、この当時はちょうど弟の鬱症状が落ち着いていたのだ。
そのため、少し長めの出張でも大丈夫そうという判断ができた。
会社には2か月弱の出張であればなんとかという回答をし、私のタイ出張が正式に決まった。

ちなみにタイでの労働環境がどうだったかと言うと、
・月120時間残業
・残業時間はもちろんサービス残業
・(言葉が通じないので当然だが)現地の人はあまりあてにならない
・圧倒的なリソース不足は自分でなんとかしろの一点張り
・出勤は集団行動のため、現地日本人メンバーとはホテルにいる時間以外はいつも一緒の濃密な人間関係
・当然ド僻地のため遊んで息抜きは不可
・休みは原則日曜の週1のみ
・隙をみて土曜を休もうとすると嫌味を言われる
という日本企業の悪い所をギュッと濃縮還元したような、最低のその下な職場環境であった。

当時の私は嫌すぎて、毎晩日本に帰る夢を見ていた。(ネタではなくマジである)

そんなこんなで昼はタイに、夜は日本(?)の二拠点生活も終わりを告げ、なんとか私は帰ることができた。
スワンナプーム空港で一人で飛行機を待っている時間、私はタイの思い出の最後にと好物のグリーンカレーを食べていた。
この時に味わった高揚感は今でも覚えている。

しかし私はこの時知るよしもなかった。
これがさらなる地獄行きの飛行機であるとは。

私が帰国した次の日、弟は遺書を残して失踪したのだ。


⑥転職を決意

即、警察のお世話である。
捜索願なんてドラマの中だけかと思ってた。

幸いなことに弟は失踪したものの、ギリギリのところで帰ってきてくれた。
今まで拒否していた入院についても、とうとう観念して精神科の病院に入院してくれることになった。
入院を決意してくれたことは非常にうれしかったことを覚えている。
「良かった、これで安心して寝れる」

しかし不幸の波状攻撃は止まらない。

入院した次の日、なんと私は交通事故を起こした。
下り坂でサイドブレーキが甘く、車がじりじりと下がっていることに気づかずに後ろの車とぶつかったのだ。
不幸中の幸い、軽く擦った程度の事故で、けが人0かつ保険請求もない程度の事故だ。
とは言え、自動車を扱う会社で自動車事故を起こしたら、当然会社に報告をしないといけない。

交通事故の次の日、私は喫煙所にいる課長に声をかけ、ことの顛末を話した。
私「課長、すみません」
課長「(あからさまに不機嫌な態度で)何?」
私「失踪していた弟の件ですが、無事見つかり、入院することになりました」
課長「(不機嫌そうな声で)どこ?」
私「・・え?何がですか?」
課長「お前の弟が入院するところだよ」
私「・・〇〇です、神奈川の」
課長「あ、そう」
私「それともう一つ、昨日私事故を起こしてしまいまして」
課長「(びっくりした顔で)はぁ!?」
私「(事の顛末を話す)ということです。総務とかに話す必要はありますか?」
課長「まあ俺から言っとくからいいわ」
私「わかりました、ではよろしくお願いします。すみませんでした。」
立ち去ろうとした、その瞬間。

課長「(怒気を含んだ声で)気を付けろよ!」

「す、すみません」
私はびっくりした勢いで思わず謝ってしまっていた。


そのまま仕事に戻ったが、私の頭は混乱していた。
・なぜこんなことを言われないといけないのか?
・ここは普通の感性なら「大変だったね、色々心配事あるかもしれないけど事故にも気を付けようね」じゃないのか?
・仕事とは関係ない点で会社にも譲歩してもらったかもしれない。でも、なんとか結果を残そうとしている人間に対して、いくらなんでもこの仕打ちはひどくないか?
・こんな仕打ちをする人間が組織内で出世する会社に、私はこのまま居続けて良い人生が歩めるのか?

私は決心した。
「絶対に転職をする。私の人生を好転させるために。」

⑦転職の準備活動

私は転職をすると決意したが、いきなり辞表をたたきつけるという男ではない。慎重なのだ、良くも悪くも。
なぜなら、「会社を辞めること」や「転職すること」は目的ではない。
あくまで「転職を通じて人生を好転させる」ことが目的なのだから。

いきなり転職サイトに登録したり、転職エージェントの話を聞いても良かったが、私はあえてこの選択肢は取らなかった。
その前に、私は転職のための「準備活動」を始めた。
そこで考えたことは大きく二つ。
転職の目的目的を達成するための手段の検討だ。
通称「転職の軸」だ。

⑦-1転職の目的について(What)

まずは転職の目的について。
転職をする目的は2つ、成長機会がある場所で働くことと、自分自身が納得できる会社で働くだ。

⑦-1-(1)自身の成長機会があること
このように考えた理由は大きく2つある。
1つ目に当時の情勢の影響が大きい。
私が転職を考えた時期は日本の大手メーカーが軒並み業績が悪い時期であった。
誰もが知る超大手メーカーも、複数年に及ぶ巨額の赤字により息も絶え絶えの惨状で、リストラも当たり前の社会情勢であったのだ。
(実際に父親の会社もそれにより工場閉鎖に追い込まれている)

・大きな会社に行けば将来は安泰なんてことはない
・自分の身は自分で守らないといけない
・自分の身を守るためには自分自身が代替えの効かない人材にならないといけない

これを身にもって感じた時代であった。

2つ目に働く会社でやっていた仕事のレベルだ。
前職は正直3年程度働いていると、仕事も一定こなせるようになったもののその会社で働くうえでの仕事のレベルの上限もなんとなく見えてきていた。
そのままぬるく働くという選択肢もあるのだが、上のこともあり自分の中で危機感を抱いていたのだ。
もちろん「会社に成長をさせてもらおう」という他力本願ではまずいのだが、転職する限りは当時働いていた会社よりもやや実力主義的な会社を選ぶことにした

⑦-1-(2)自分自身が納得できる会社で働くこと
当時の私は働き方で納得できないことがあった。
・サービス残業
・有給休暇拒否
・愛社精神の強要
・ムダな会議
・問題が起きた時は火消しよりも犯人捜し

私たちサラリーマンの給料の原資というのは打ち出の小づちで出すわけではない。
会社のお客様から支払われる対価が原資であり、強引な言い方をすれば会社は原資を受け取るためのオペレーションを行い、得た原資を振り分ける役割を持っているに過ぎない。
それならば会社を見て仕事をするよりも、お客様の方を向いて仕事をする方が原資はより拡大する方向であり、より生産的なわけだ。

社員は会社の顔色を覗って仕事をするわけでなく、お客様側を見ることで成果を出して会社に利益をもたらし、そして会社は成果に応じて対価を支払う。
私はこの納得感が欲しかった。
犯人捜しという本質的でない仕事は私は1秒たりともやりたくなかった。
会社選びとしては判断が難しいが、この価値観を共有できる会社で働きたかった。

⑦-2目的を果たすための手段について(How)

転職の目的を定義したところで、次に考えるべきは目的を果たすための具体的な手段だ。
私の転職の目的に合った会社を無事に探せたとしても、内定を得られなければ意味がない。

私は転職市場において有利になるであろう人間を定義した。
(1)前向きに仕事に取り組む人間と思ってもらうこと
(2)仕事において客観的に証明できる成果をアピールができること
(3)仕事に関係した資格を保有していること(技術士、TOEIC等)

⑦-2-(1)前向きに仕事に取り組む人間と思ってもらうこと

仕事で前向きな人間であるという印象を持ってもらうため、私は課長に対してあるお願いをした。
「仕事の幅を広げたいので、別の仕事もやらせてください」
課長は私の企みは気付いていないようである、二つ返事でOKを出した。

課長は仕事の負荷を分散することができ、私は転職を有利に進めるための武器を得ることができ、お互いwin-winだ。
これによって、私は転職の面接において「私は自らの成長のため、主体的に仕事の範囲を広げた」という発言をする権利を得た。

⑦-2-(2)仕事において客観的に証明できる成果をアピールができること

採用してもらうためには「御社に取ってお金になる人間です」を体裁よく伝えることが大切だ。
しかし、面接において
「仕事を頑張ってました」
「成果を出してました」
「会社からも良い評価を受けてました」
と言っていたのでは面接官には何も伝わらない。
具体性が足りず、入社後に活躍する姿が面接官側から見えないからだ。

そこで、数字を交えて具体的な言葉にすることを行った。
「改善提案は課で一番出していて、その状態を3年キープしていました。改善提案は〇〇件/年ほどです。」
「海外経験もあり、具体的にはタイへ2か月弱出張しています。プロジェクトをしっかり進捗させるため、自らスケジュールを作りました。これによってプロジェクト進捗率100%を達成しました。」
このように、面接官に対しどのような伝え方をすれば私と言う人間を理解してもらい、良い印象を抱いてもらえるかを考え抜いた。

⑦-2-(3)仕事に関係した資格を保有していること(技術士、TOEIC等)

当時の日本は英語ブームで、英語がしゃべれないヤツはオワコンという雰囲気が流れていた。
TOEICは確かに大きな武器になる。
大きな武器になるとは思ったが、ここから勉強して600点以上にするには少々時間がかかりすぎる。

弟は入院したとは言え、毎週お見舞いに行っている状況では取れる時間にも限りがある。
正直な話、ものづくりの会社では資格よりも実績をアピールした方が良いと当時考えていた。(宅建や弁護士のように仕事をするために資格が必要な仕事ではないからだ)
それならば、「資格を取ること」に時間を使うよりも「自分のこれまでの実績を上手にアピールする」方がタイムパフォーマンスは良い。
そのため、私は「資格を取ってアピール材料にする」という選択肢は戦略的判断により、あえて捨てた

⑧転職活動、本格的にスタート

転職活動の下準備を終え、転職エージェントに登録した。
利用したのは総合系の転職エージェントと、ものづくり系に強いの転職エージェントだ。
幸運なことに、どちらのエージェントも無理に転職を勧めてくるようなツーブロックなゴリラではなく、しっかりと私に向き合ってくれる方たちだった。

いくつか会社を紹介されて、気になった会社があった。

気になった理由は大きく2点だ。
1つ目にハイレベルな仕事をやっていて、お客様からの高い評価を受けている。これによって高い売上を立てることができているという点。
これについては競合と数字で比べて定量的な数字で示された。
この点で私は厳しくも成長できる環境であると判断した。
(転職の目的⑦-1-(1)を満足する)

そして2つ目にその会社の当時の社長が言っていた言葉だ。
「会社のために仕事をするな。お客様の方を向いて仕事をして、会社を利用しろ。そうすれば最終的にはあなたも会社も得をするから。」
私が当時理想としていた考え(転職の目的⑦-2-(2)の価値観)と完全に一致していたのだ。

「私が行くべき会社はここだ。」
そう確信して選考に進んだ。

⑨応募から内定まで

私が行くべき会社はここだと思ったものの、やはりそれだけでは判断として甘い。
選考に進む前に私は転職先の会社を調べ上げ、転職の口コミサイトに課金し、さらに大学時代の知人がそこで働いていたという情報を聞き直接会いにいって話まで聞いた。

「中で働いている人は会社に対してどう思っているのか?」
「どんな人間が評価される文化なのか?」
「どのような評価制度になっていて待遇はどの程度なのか?」
といった会社の文化や待遇に関わることは当然として、

「この会社が欲する人材とはどのような人物か?」
「何を話したら自分という人材をアピールできるか?」
といった会社が欲しいと思う人材像についても調べ上げた。

面接は2回行った。
「私は自分としてなぜ転職するという決断をしたのか」
「なぜこの会社で働きたいと思ったのか」
「今後どんなキャリアを歩んでいきたいと思ったのか」
想いの丈を話した。

1週間もしないうちに連絡が来て、私は無事内定を得ることができた。
すぐに承諾し、その3か月後にはその会社で働き始め、私は無事に転職活動を終えることとなった。
ちなみに前職を辞める時も有給の消化で揉めに揉めることで自腹で録音機を買って上司の発言を録音したりと最後までコンプラに引っかかるような目にあわされたが、キリがないので書かないことにする。

⑩転職して感じたこと

この記事を書いた時点で転職して数年経つ。
幸いなことに、家族は全員鬱から復活して何事も無かったかのように元気に暮らしている。

そして転職したことについても、数年経った今でも一切後悔がない。
前の会社を退職したことも、その会社を選んだこともだ。
私は転職と同時に(偶然ではあるが)人生を好転させることに成功した。

「たまたま転職に成功した人間が成功者バイアスにとらわれているからそんなことが言えるんでしょ?」
このように思うかもしれない。

しかし、転職について悩んでる人に対し、ここはあえて私からアドバイスをさせてほしい。
以下3点だ。
①行く先に未来が無いと感じたら撤退する勇気をもつこと
②情報は広く集め、その情報の真贋を判断する能力をつけること
③自分には価値があると信じ、その価値をどこで発揮できるか考えること

⑩-1行く先に未来が無いと感じたら撤退する勇気をもつこと

ニンジンをぶら下げられた馬は、目の前にあるニンジンを追いかける。
それはぶら下げられた人参をつかまえれば、おいしく食べられるという景色が見えているからだ。

あなたはどうだろうか?
あなたが今やっている仕事の行く先には、どんな景色があるのか高い解像度で見えているだろうか?
「一つのことをあきらめずに粘り強く取り組む」
「会社に入ったら転職なんて考えずに会社のために滅私奉公し、定年まで勤める」
「先輩の言うことはよく聞き、疑問を持たずに取り組む」

これらの昔ながらの価値観は、確かに耳心地はよい。
なぜなら2024年現在の日本においてはこれらの価値観を信じている人が多数であり、賛同を得やすいからだ。
正論だからではない。
己の信じていることを代弁してくれているからだ。

しかし、N=1ながら撤退したことで人生を好転させた男がここにいる。
ここまで書いた通り、私がかつて働いていた会社は働き続けてもすり潰されたまま終わる会社であり、良い未来は描けない会社と感じていた。
(ただし、「それはあなたの感想ですよね?」と言われたらその通り、これはあくまで私の感想だ)
幸い、父や弟のように鬱になることはなかったが、毎週日曜の夕方になると胃が痛くなったり、血尿を出すという社会人の洗礼(?)も受けた。

物騒な話ではあるが、軍事においては戦略的撤退もまた作戦である。
退くべきときは勇気をもって退く。
(1)行く先に未来が無いことがわかってる
(2)行く先に未来はあるが、そこまで到達するためには多大な犠牲を支払う必要がある

あなたの状況が上記のどちらかであると判断したら潔く撤退することを検討してほしい。
体、精神がむしばまれては周りに迷惑もかけるし、何より再起の一歩目が何テンポも遅れてしまう。
思考停止状態で「退くことは恥」なんて信じてはいけない。

⑩-2情報は広く集め、その情報の真贋を判断する能力をつけること

あなたは情報を自ら取りにいってるだろうか?
自分の頭で考えているだろうか?
世間の声と言う、あいまいで無責任な言葉に振り回されていないか?

「転職は悪」
「一生同じ会社で勤め上げることが理想的な人生」


これら全て、私は自らの判断の元捨ててきた。
これらの価値観が正しいと、あなたは自分の言葉で語れるだろうか?
語れないというのであれば、それは人の発信した情報を思考停止したまま、無条件に信じているということに他ならない。

もちろん、判断するための材料が足りないということもある。
だが、今は令和も6年である。
クローズドな場所でしか情報を得られないという時代ではない。

この記事は転職について書いた記事のため、例として転職に限定した話をする。
オフラインな情報であれば私のように中で働いてた経験のある人をつかまえる、転職エージェントに話を聞く、本を買って読むなどできる。
オンラインな情報であればコミュニティサービス、転職の口コミサイト、掲示板などで入手できる。

ただし、情報にもその媒体によって以下のような様々な特徴がある。
・信用できる/怪しい
・入手しやすい/入手しにくい
・有料/無料

発信された情報と言うのは、私も含めて発信者に取って都合の良い情報だ
これは断言して100%だ。
自分にとって都合の悪い情報を積極的に話す人間などいるはずがない。

発信者は決して、あなたにとって都合の良い情報を発信しているわけではない。
情報を発信した人間の意図、背景、目的、これらがわかると情報としての精度の見極めがたやすくなる。
一度考えてみると楽しいし、情報の真贋を身につけるトレーニングができるためおススメだ。

⑩-3自分には価値があると信じ、その価値をどこであれば発揮できるかを考えること

ブラック企業ですり潰されていくと、どんどん自己肯定感が低くなっていく。
なかには教育と称して社員にマウントをとりまくる職場だってある。

そこでまずは、思い込みでもいいから信じてほしい。
あなた自身は価値ある人間であることを。
考えるべきポイントはあなたに価値がある/ないという二元論の話ではない。
あなたの価値を発揮する場所はどこなのか?が考えるべきポイントなのだ。

具体的な話をする。
個人的な話で恐縮だが、私はパートナーには共感力の低い人間と思われており、それを重々の重に自覚している。
しかし、(言い訳に聞こえるという声も重々承知のうえで)これは良い悪いという問題ではないのだ。
私は何かが起きるとその背景まで考えてしまう癖がある。
誰かが悩んだり、悲しんだりしていたとしても、真っ先にかわいそうとかつらそうなど、「感情面」に思考がいかないのだ。
では思考がどこに行ってしまうかと言うと、起きたことに対して、そこに至った経緯や、仕組みの問題など、「構造面」に思考が進んでしまうのだ。

ただただ話を聞いてやればいいと言うのは頭ではわかってはいる。
わかってはいるが、どうしても「構造面」から思考がスタートしてしまうのだ。
そのため、ねぎらいの言葉を言うテンポが2テンポ遅れてしまう。

なんで悩みに解決策で返すんだとパートナーにはなじられるが、いつもこう返してしまう。
「八百屋に行っておいて、なんで魚を売ってないんだと言われても困る。ここは野菜を売っているんだ。八百屋とわかっておきながら魚を求めてくるのはどんなクレーマーだ。」と。

つまりそういうことだ。(どういうことだ)
こうしていらない一言を言うことで私は家庭内のポジションを一つ、また一つと落としてしまう。
この場所は私の価値を発揮できる場所ではなさそうなので、パートナーからの戦略的撤退も検討したい。
ちなみに私の好きなタイプは・・・おっと誰か来たようだ。

察しの良い方にはお分かりの通り、私には感情労働は絶対的に向いていない。
感情労働とはBtoCの営業(住宅、保険など)、カウンセラー、介護職などだ。
これらの仕事はこれまでもやりたいと思ったこともないし、これからもやることはないだろう。
わざわざ自分が不利な勝負を挑む必要はないからだ。

繰り返しになるが、あなたはあなたの価値を見つける。
そしてそのあなたの価値は輝かせることができない場所はどこで、逆にどこであれば輝くのか。
このテーマについてじっくりと考えることが良き人生を歩む一歩目である。


⑪最後に

今回の記事は転職がテーマだったので、転職に役立つと思われる本とマンガを紹介する。

・転職と副業のかけ算
転職を見据える意義やマインド面、成功させる具体的方法(職務経歴書の書き方、どの転職エージェントを選べばいいか等)、さらには副業について(Xでの発信についても書かれている)が体系的にまとまっていて非常に読みやすい。
リクルート出身者だけあってリクルート時代の話もあり、当時上司から言われたという「リクルート事件があった当時、明日にも会社が潰れそうな状況で採用したかったヤツは『活躍できるエリート学生』とか『前職で優秀だったヤツ』ではなく、会社を潰さないために『一生懸命努力できる人間』だ。そういうスタンスのある人間はどんな会社でも活躍できる。どこで働くかは重要じゃない、スタンスの問題だ」と言うのは私自身も働くうえでの本質だと考えている。


・転職2.0

上で紹介した『転職と副業のかけ算』と同じく、転職に対して体系的に書かれている本。
この本の特徴としては自身を理解させるための方法としての「タグ付け」の概念を紹介しているところ。
また、ビジネスSNSの会社を経営している社長が書いてあるだけあって、社外の人との繋がりが身を助ける話も書いてある。

・転職の思考法
転職の思考法という題名ながら、転職に限らずキャリアをサバイブすることがテーマ。
ストーリー調なので話の筋が理解しやすく書かれていておススメ。
本文の中に「強い会社と言うのはいつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社」とあるけど、正にその通り。
「辞表を書いてから仕事は楽しくなる」は名言すぎる言葉。


・苦しかったときの話をしようか
マーケターの森岡毅さんが自分の子供に向けて職業選択の考え方について書いた本。
前半は社会というものについて、中盤は自分の強みを見極めるための方法、後半は森岡さん自身の苦しかったときの話で構成されている。
一番の見どころは本の中盤に書かれている、自分の強みを見極めるための方法論。

「自分が信じられないものを人に信じさせる辛さ」
「結果を出さなければ誰も守れない」
2つの言葉がこの本には出てくるけれど、働いていると誰もが実感することだと思う。
特にこれから巣立つ子供を持つ方には読んでほしい本。


・エンゼルバンク

主人公が高校教師を辞めて転職エージェントになり、様々な人に転職支援をしていく話。
三田紀房さんの漫画が好きだという理由もあって、転職活動中には擦り切れる程読んでいた本で私にとっても思い出深い本でもある。
「30超えたら利息で暮らせ」は有名な言葉。


・銀のアンカー
パッとしない大学生が就職活動を通じて成長をしていく様を描いた話。
新卒向けの話ながら、仕事の本質を突いた話もあり、転職者にも役立つ構成となっている。

「迷ったら金で選べ」は有名な言葉。
会社というのは入社してみないとわからない変数(人間関係、やりがい、有給の取りやすさ等)が多い。
それならば変数として見えやすいもの(お金)で会社を選ぶのは当然な話とも思う。

最後に、上で紹介した銀のアンカーでは世界で勝てるビジネスマンを以下と定義している。
仕事人としてこのようにありたいと私自身のベンチマークとして仕事をしてきた。
これを紹介して終わりとしたい。
・自分で考えること
・他人の意見に追随しないこと
・自分の主張を表現できること
・相手に理解させる説得力を持つこと
・リスクを取ること
・好機は逃さないこと
・思い切って勝負に出ること
・用意は周到であること
・退くことを恥としないこと
・会社の言いなりにはならないこと
・拒否して辞めても食べていけること
・会社人間でなく自立した一人の人間であること
・絶対に死なないこと

あなたが転職をしようとしまいと、この記事があなたの人生を好転させる小さなきっかけになれば幸いである。
これだけの長文を最後まで読んでいただき、深謝。

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