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カツレツを食べて、愛を考える

ウィンナーシュニッツェル

8月末の日曜日、昔の教え子(現アラサー女子)が、僕のうちに遊びに来ました。
いつものことながらの華やかな女子会のおしゃべりに耳を傾けながら、僕は厨房に立ちます。
お昼の献立は、鶏の胸肉のカツレツにしました。


皮をとった鶏の胸肉を、うす~く、スライスする。
そして叩く(ここがポイント!)。
それから塩をして、しばし放置。


イメージとしては、ウィンナーシュニッツェルを作る感じ。
「ウィンナーシュニッツェル」は「ミラノ風エスカロープ」とも呼ばれる、子牛の薄切り肉のカツレツです。ただ日本では子牛が手に入りにくいので、僕は鳥の胸肉を使います。

以前、マドリッドの大衆食堂で、この子牛のカツレツを注文したのですが、僕の顔よりも大きいのが出てきて、驚きました。さすが闘牛の国だなあ、と感心しました。
と同時に、スペインでもこの料理が人気なのを知って、妙に納得してしまいました。だってスペイン=北イタリア=オーストリアときたら、これはハプスブルク家ではないですか。


小麦粉、卵、パン粉、そしてフライパンで揚げ焼きする。
できればオリーブオイルだけで、カリっと軽く、揚げ焼きする。
そもそも薄切りなので、たくさん油を使う必要はない。

ソースやケチャップなど、無粋なものはかけない。
なぜ、せっかくのサクサクを、ベチャベチャにするのか、わけわかんない。


サクサクサク、バクバク、かなりいけます。
軽快な食感、そして胸肉のしっとりと深みのある味わいを、お楽しみいただけたら幸いです。
是非、レモンの輪切りを浮かべた白ビール、あるいは辛口のロゼワインとともに。


ふと考えます。
そもそも師弟愛って、なんなのだろう。
そもそも愛を分類するって、可能なのかしらん。
師弟愛、兄弟愛、親子愛、夫婦愛、恋愛、友情、人情などなど、いろいろな分類があるけれど、外観が違うのはわかるのですが、内実においてどこがどう違うのか、よくわかりません。
映画『ミリオンダラー・ベイビー』の女子ボクサーと老トレーナーの関係だって、どういう言葉で表現したらよいか、よくわからないじゃあありませんか。

ただ少なくとも僕にとって、愛は信頼の類義語です。
信じ合うことが大事だと思っています。

だから「すべてを疑え!」というマルクスの言葉を、僕は疑います。
むしろ大事なのは、何を根拠に他人さまを疑うか、ではないでしょうか。
「所詮、人間なんて、みんな、金が欲しいのさ。アイツもキレイゴトを言っているけど、実は、金めあてなんじゃない?」とか、
「所詮、人間なんて、みんな、色欲の塊なのよ。アイツもアンタのためとか言っているけど、実は、劣情発散がめあてなんじゃない?」とか。

「金銭欲」「色欲」「名誉欲」「権力欲」、何でもかまわないけど、
「疑いの根拠」から透けて見えるのは、疑うひとの人間観であり世界観ではないかしらん。


カバラン

気が付くと、外はもう暗い。
甚平に着替えて、庭で教え子らと花火に興じる。浅草橋の花火専門店で買っておいた花火だ。
いつまでもガキのままの大人は気持ち悪いが、いつでも童心に戻れるのは良いことだろう。

夕食は、フムス、そしてナスのペースト。
朝のうちに作って、冷蔵庫で冷やしておいた。
パリの高級レバノン料理店のようにはいかないが、自分が好きなようにアレンジできるのが楽しい。
ひよこ豆のフムスは、クミンとチリをきかせました。
ナスのペーストは、皮をむいたナスを揚げてミキサーにかけ、おろし玉ねぎと、かなりたっぷりレモン汁を加えました。
ビスケットと一緒に、さあ、どうぞ召し上がれ。
デザートには、教え子から頂戴したフレッシュなイチジク。

食後酒は、カバランウィスキー。
「ウィスキーがお好きでしょ」と歌いながら、封をあける。
香りはフルーティーなのに、口あたりはスッキリとねばつかない。
つまみは、ミント風味のチョコレート。
たまりません。とまりません。おしゃべりも、おかわりも。


カバランは、我が家に置いておくと、僕の健康によくないと判断し、「お持ち帰り」してもらいました。


あと何回、夏を越せば、お墓に入れるのでしょうねえ。
す~、ひょろひょろ、ふわふわと、闇夜に浮かぶひとだまに、はやくなりたいものです。
だって、おどかされるよりも、おどすほうが楽しそうだもん。

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