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『重度側弯症の選択肢―娘と私の闘病記』

小社から自費出版をされた著者にアンケートしてみました。本を作ってみての感想などを聞いています。自費出版に興味のある方はぜひ参考にしてください。

今回は2019年に『重度側弯症の選択肢―娘と私の闘病記』を出版された、
あるくん商会合同会社 代表の東 史(あずまふみ)さんにお答えいただきました。

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自費出版をしようと思ったきっかけは何ですか?

生まれつきボディイメージが弱く「運動」という言葉と無縁な肢体不自由児の娘。小学校4年生頃からの成長期に次々と起こった病気や怪我。筋力低下と側弯症が進んで、体は頭からつま先へと螺旋を描くように捻じれた状態になってしまいました。
幼い頃から、少しでも歩けるようにと頑張って獲得した独歩ができなくなり、寝たきりも覚悟するまでになりました。
少しでも歩けるようにと過ごしてきた思いを、これからも捨てることができない。そう覚悟を決めてから、娘の体の歪み(代償)を改善するための介助でできる筋トレ体操を考案し試しました。
この体操を続けて、娘の硬く固まって役割を果たさなくなった筋肉が蘇りました。体を螺旋に捻じっていた筋肉の癖から解放された娘は、大の字のリラックスした姿で眠れるまでになりました。体の歪みに苦しんでいる人や筋力低下から健康を諦める人のないように娘との経験を伝えなければと思い出版しました。

専業主婦だった東さん。娘さんの側弯症が進行し手術を決意しますが、あまりに複雑な歪みに断念せざるをえませんでした。なんとか歪みを改善したいといろいろ試行錯誤され、独自の筋トレ体操を考案し、自作で運動器具を作られました。本にはそのおすすめ体操を紹介した別冊が付いています。

実際に本を作ってみていかがでしたか?

とにかく自分の体験を伝えたい私でしたが、出版社の方に本の内容を話しながらも心が落ち着いていくようでした。一冊の本にしたことで伝えたい気持ちが叶ったことと、今まで娘を健康にしてあげたいと頑張ってきた自分自身の気持ちが救われるように感じました。
内容を詰める中で、担当の方から「運動器具を自分で考えたのなら特許を取られたらいいのではないですか?」と助言をいただきました。それから本で伝えたかった「健康や歩くことを諦めてほしくない」気持ちは、実行へと移り特許出願・登録、会社設立、運動器具の発売と、どんどん前に進みだしました。
現在、さらに新しく障害者や高齢者のための運動器具を開発中。今年10月からは、寝屋川市高齢者デイサービスと協力して「足腰安定プロジェクト」をスタートし、足腰強化トレーナーとしても活動しています。

最初に相談に来られたときは、あふれる思いから涙ながらにお話しくださいました。そんな東さんから「会社を設立しようと思っています」と報告をいただいたときは、びっくりしました。ホームページを立ちあげたり、手作りだった運動器具の製造ルートを確保したり、特許を出願したりと、日に日に進化していく東さんに驚くばかりでした。

本を出版された後、ご家族や友人など、周りの反応はどうでしたか?

本を出版したいと言い出した時に、夫は「主婦の考えた体操が受け入れられるはずがない」と反対で出版の費用を出すことも快諾していませんでした。そのためにクラウドファンディングに挑戦しましたが失敗しました。
重度の側弯症が、お医者さんでなく主婦の考えた体操で良くなるなんて考えてくれる人は、ほとんどいませんでした。患者を支える医師や理学療法士の先生も肢体不自由児の側弯症が良くなることを信じて診療に当たってくれていない現実と、患者側も仕方のないことと諦めてしまっている現実がありました。
諦めている人の多い中、調べてやっとこの本の存在を知ったと喜んでくれる人。この本を出版してくれて良かったと言ってくれる人がいて、直接お話したいとお問い合わせいただいたことも出版して良かったと思えた経験でした。
出版した後も、体操と体操の研究を続け娘の側弯症はずっと改善を続けています。側弯症の改善は、単に背骨の状態が良くなっただけでなく呼吸器や消化器の働き、歩行のしやすさ、睡眠の質まで良くなります。続く嬉しい変化を一緒に喜びながら、渋々協力してくれた夫も今では認めてくれているようです。

出版から2年。専業主婦だった東さんは、現在は経営者であり開発者であり、トレーナーでありと、マルチな活躍をされています。どこまで進化されるのでしょう。楽しみです。

『重度側彎症の選択肢―娘と私の闘病記』
東史 著/A5判・96頁+別冊カラー16頁/本体価格1500円+税
2019年9月10日発行