清風堂のおすすめ vol.5(2023/10/8)
清風堂書店の谷垣です。
イスラエルでの軍事衝突という大きなニュースがありました。
次の記事をぜひ読んでみてください。3年前のものではありますが、現地で暮らしている人々がどのような思いでいるのか、その一端を知ることができます。
これから出る本
11月の文庫・新書は筑摩書房が熱い。
『ルールはそもそもなんのためにあるのか』
住吉雅美/ちくまプリマー新書
安定のちくまプリマ―です。ヤングアダルト向けのレーベルですが、もちろん大人が読んでもおもしろい。本当にいい本が揃っています。「そもそも〇〇とは」という大きな問いを立てるものが多いからかもしれません。それを新書サイズで答えようというのだからすごい。この記事を書いている時点では、目次などの詳細が発表されていませんが、どんな内容か楽しみですね。
ルールといえば。ジャニーズ事務所が先日に行った会見で、ある新聞記者が「一問一答ルール」を破ったことが問題となりました。ここでは、その記者が正しいのかどうかは置いておきます。私が気になったのは、どんなルールであっても守らなければならないのかということです。つまり、そのルールは誰が決め、何のために運用されているのか。
今回のジャニーズ会見について、次のように考えることもできるでしょう。そもそも会見を開いているのは一民間企業である。会見を開く主体となるジャニーズ事務所の裁量が大きいのだから、会見運営に利するようルールを決めるのは当たり前であって、そのルールを破るのは記者としての「マナー」に反していると。しかし、テレビはメディアとして大きな影響力を持っています。民間企業であっても公共性を意識するべきはずなのに、それがなぜ免除されてしまうのか。公共性の概念が抜け落ちてしまっていないでしょうか。
そして「マナー」とは何なのでしょう。この言葉もまた、使い勝手がいい分悪用されやすいような気がします。個人的にも、そのあたりのことを書いてくれているのか注目してみたいです。
11月のちくま文庫/ちくま学芸文庫
『やわらかい頭の作り方』細谷功
『ひみつのしつもん』岸本佐知子
『新版 慶州は母の呼び声』森崎和江
『京都食堂研究』加藤政洋・<味覚地図>研究会
『具体と抽象』でおなじみの細谷功さんがちくま文庫に登場。絵はヨシタケシンスケさんです。どんな装丁になるのだろう。ビジネスパーソンだけでなく、いろんな方に手に取ってもらえそうですね。
ちくま学芸文庫のラインナップは以下のとおりです。
『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』ジャック・デリダ/鵜飼哲
『所有と分配の人類学』松村圭一郎
『国家とはなにか』萱野稔人
『晩酌の誕生』飯野亮一
11月発売です。首を長くして待ちましょう。
Books(tore) witness you. vol.1
X(旧Twitter)が仕様変更されつつあるなか、いよいよ使いものにならなくなる予感がしています。そのことが情報発信の手段を見直すきっかけともなっているのですが、そもそも書店もメディアのひとつであるはず。ならば、自前の手段で情報発信できるのが理想ですよね。そういう状況もあって、lighthouseの関口さんが日記を刊行されるのはとても楽しみなわけです。そして、日記(あるいはZINE)は発信手段のひとつになるんじゃないかと思うのです。
SNSは基本的に不特定多数の人を相手にします。一方で、ZINEは自主製作であるため届く範囲は限られている。一般的には前者を<開かれた関係>、後者を<閉じられた関係>と捉えることも可能でしょう。この図式にしたがえば、ZINEにはどこか内側に閉じこもっているようなマイナスイメージがあるように見えてしまいます。しかし、本当にそうでしょうか。私にはむしろ、閉じられているからこそ開かれているような、逆説的な意味がZINEの周りに生まれているようにおもいます。先日大阪で行われた文学フリマに参加し、その熱量に圧倒された体験があったからこそ、そのように感じるのかもしれません。
フィルターバブル・陰謀論・誹謗中傷などSNSの問題点はたくさん挙げられますが、そのどれもがどこか<閉じられた関係>を連想させます。開かれているがゆえに閉じてしまう、という場合もあるということです。X(あるいはSNS全般)がまったくダメになったわけでもないとおもいますが、伝えたいことが正しく伝わらない場になってしまっているのは事実です。その代わりになる場として、ZINEが必要とされているような気がします。
『山學ノオト 4』サイン本あります
青木真兵さんがご来店。ご著書にサインしていただきました!
『つくる人になるために』フェアも引き続き開催中です。
『山學ノオト 4』には当店の名前もチラッと登場します。どこに載ってるだろうとパラパラめくってみると、11月にその日のことが記されていました。私が青木さんに初めてお会いしたのはこの日でした。もうすぐ一年たつことになります。早いものですねぇ…。
そして今年強く感じたのは、日記の魅力です(早すぎる気もしますが今年一年を振り返る気分になってしまってます)。柿内正午さんの本をはじめて仕入れたのも今年に入ってから。柿内さんも日記を公開されています。
日付があることの意味について、これまで考えたことがありませんでした。個々の日付に意味はないのかもしれないが、日記として一冊の本(束)となったときに生まれる何かがあるのかもしれません。お二人がどのようなことを考えながら日々の記録を残しているのか気になるところです。
私はせめて週一回配信のこの記事だけでも続けていきたい…。ただ、この配信をはじめて日は浅いものの気づいたことがあります。書くことがないと思っていても、実際に手を動かせば意外と湧いてくるものだということです。そして、常にそうとは限らないということも。
ちなみに来月、ON READINGさんで青木さんと柿内さんのトークイベントがあるそうです。ご興味のある方はぜひ。
おわりに
近日中にイベントの告知ができるとおもいます。それにともない、配信環境の見直しを行っています。オーディオインターフェースやらミキサーやら、いろいろ勉強中です。これまでよりも快適にイベントをお楽しみいただけるよう、改善できればとおもいます。ぜひお楽しみに。(終)