1st Full Album「己の影を歌う者」全曲歌詞解説
1.はじめに
僕のキャリア初のアルバム「己の影を歌う者」。
今回の記事ではそのアルバムに収録された曲達の詩世界を、文章という形で掘り下げていきます。
この記事を読むことで、これまでに聴いてくれた人はまた新しい発見や楽しみ方が、
まだ聴いていない人は、聴く時により深い体験が出来ると思います。
よろしくどうぞ。
2.歌詞解説
1.新世界
歌詞の元になったのは、僕の学生時代に感じたことになります。
戦争とか犯罪とか、もっと身近な悲しい出来事とか。
そういったものが無い世界に行ければいいのに、と思ったことからこの曲の歌詞の物語ができました。
話の概要としては、「子供が悲しみの無い世界へ行き、幸せに暮らすお話」。
この悲しみのない世界を「新世界」と名付け、タイトルにしています。
ちなみに元はもう1つストーリーがありまして、それは
「生と死の狭間を彷徨う子供が見た夢」
といったものになります。
この(元)2つ目のストーリーを踏まえ、解説していければと思います。
文字通り、主人公が現実を知って絶望するシーンですね。
自分が楽しく平和に暮らしているのと同時に、自分の知らないところではその対極にあるような暮らしをしている人達がいる。
「魂の殺人」に関して、大学の卒業論文で取り上げたことがあります。
「魂の殺人」というものが何かは調べていただくとして、少なくとも僕はその行為に対してひどく怒りを覚えるため、歌詞に入れています。
また、「醜い大人が夢を壊す」件とは某アイドルグループのいざこざが元ネタとなっています。
そういった事象がこの世に生を受けた時点で起きるか決まる(=運命)世界なのであれば、そこにこだわるつもりはない。
そのような、主人公が他者に共感を抱き、その結果として感情が露わになるシーンです。
ここから今の世界から抜け出すシーンになります。
ここで意識したのが、「夢」と書いて「りそう」と読むことですね。
「夢」という言葉自体、目指すものとしての意味があったり、寝るときに観るものとしての意味があったりと複数の顔がある言葉です。
一応メインのストーリーとしては悲しみのない世界へ行く話なので、「りそう」の意味を優先してそう歌っていますが、セカンドストーリーである「夢」の世界としても捉えられる表現になっています。
まさに現実世界のことを歌っています。
そして、その内容は主人公が目の当たりにした場面。
最後に「目を瞑った」のは、単純に「見たくない」という意識の表現としても、「夢の世界へ行く」という行動の表現としても成り立つようにするため採用した表現です。
ここまでと変わらず、ずっと絶望している主人公。
ここで出てくる「見下ろす」表現は、悲しみのない世界へ行く道中、もしくは夢の中だからこそできる行動として使っています。
一人で空に浮いているイメージ。
まあストーリー上細かいことを言うと一人ではないのですが。
それについては追々、別の形で。
そして主人公はやっと夢の世界へたどり着きます。
悲しみのない夢の世界、「新世界」に主人公がたどり着くシーン。
そこは非常な現実を知らない子どもが思い描いていたような世界だった。
その世界で、希望だけを手にして生きていく。
物語はこれで終わりを迎えます。
ちなみにここで愛する「もの」としているのは、人のみならず、自分の愛情を向ける何かを一緒に生きていく糧として含められるようにするためです。
The 多様性。
2.羽化
2nd Single、そしてアルバム内ではリアレンジ.verが収録されています。
実はここだけの話、元々は1st Singleとして出す予定だったんです。
歌詞も新たな世界へ踏み込む、まさに「はじまり」を意識した内容ですからね。
一度記事にはしていますが、「己の過去の絶望や心の傷さえも自らの一部として受け入れ、未来へ歩み始める」前向きな内容となっています。
続いて、タイトルの由来。
※以降、下記記事より引用。
僕が推していたバンドllll-Ligro-では、ファンのことを「虫けら」と呼んでいました。
勿論僕もその「虫けら」の1人だったわけでして。
それが大学4年生、所属していた軽音楽部の卒業ライブでオリジナル曲をステージに立って演奏しまして。
(しかも部活のライブにしては割とデカ目の箱)
今まで下から見上げてステージに立つ推し達を観ていたのが、ついに同じようにステージに立って、オリジナルの曲を演奏している。
つまり、地を這う「虫けら」だったのが、見上げる対象であった空を舞う蝶(ここではllll-Ligro-のこと)と同じ場所にいるわけで。
完全に蝶になったわけではないのだろうけど、少しは近づけた。
そんな「虫けら」から蛹を経て蝶になる過程である「羽化」という言葉・意味を、先述の軽音楽部の卒業ライブをする自分に重ね、バンド名にしたわけです。
さらにその際、まさにこの曲をメインにしようとしていたのと、歌詞の内容が卒業の時の心情に合ったので、バンド名と同じ「羽化」というタイトルを付けました。
<補足>
実は「孵化」と「羽化」で迷っていたんですけど、蝶になる幼虫は蛹になり、「羽化」の現象を通って成長する「完全変態」という種類(?)なんです。
先述の「虫けら」から蝶になるなら「羽化」は外せず。
それに加えて、大学を卒業すれば社会人。
これまでの学生生活とは大きく生活環境が異なるわけです。
幼虫から蝶になり、生きる環境が大きく変わる成長を僕の環境の変化と重ねた結果、「羽化」を選びました。
ここでいう「終わり」とは、学生生活の終わりですね。
そして社会に羽ばたいていくわけですが、そこでの生き方に対して迷いを抱いているというのがこのシーンの主な内容。
夜景を見ながらただ1人、頭の中で自問自答を繰り返すイメージ。
ここではっきりしているのは、何かを世に残したいという「大義」があるということくらいでしょうか。
「数ある人間の1人」ではなく、「ただ1人」になりたかったのだと思います。
ここで見つけた答えというのがまさに音楽の道、「アーティストとしての人生」でした。
普段からアーティストの作る音楽に触れていましたから、まさに目の前にあったんですよね。
「式」という表現ですが、意味合いとしては「設問」の方が近いかも。
自分の生き方に対する問い。
その解が先述の「アーティストとしての人生」であることを導きだし、どう生きていくかを示したということです。
このパートは僕のアーティストとしてのコンセプト「絶望で華を咲かせる」を表現したものになります。
「感情に名前を付ける→曲にする」
っていうことです。ざっくりいうと。
また、その「感情」というのも大体は暗いものになります。
大げさな言い方をすると、それが「絶望」なわけです。
心理学において「昇華」という、満たされない欲求を世に受け入れられる形にする防衛機制(身を守るための心理的反応のようなものと捉えるとわかりやすい)があります。
これまでの人生で感じた絶望を、音楽という1つのエンターテイメントに落とし込み、リスナーがなんらかの形で価値を抱くことで初めて完全な形で「昇華」されるということです。
この一連の流れがまさに「絶望で華を咲かせる」ことなわけです。
まあ「昇華」とコンセプトの「華」がうまく被っているのは偶然なんですが。
ここでは自分なりの生き方を見つけ、また、自分が自分であることを受け入れる場面になります。
自己肯定感パネエ。
「物語の幕は今 開かれたばかりだ」
僕の大好きなヴィジュアル系バンド「llll-Ligro-」の曲のオマージュで取り入れたワンフレーズです。
原曲では「幕は開かれた」というフレーズが使われていますが。
自分の傷を受け入れ、武器とし、かつ希望を未来に抱いて歩みを進める。
「誠影」という1アーティストが作る物語がついに幕を開けます。
End
タイトルは日本語で「行き止まり」という意味があります。
また、「死」と「終わり」という2つの単語を合わさっていることから、「(人生が)死(を選ぶこと)で終わる」という意味も持たせています。
あえて直接的な表現は使いません。
この曲を聴いていただいた方はわかるかもしれませんが、アルバム中最も暗い詩世界のナンバーです。
この曲の詩世界の概要をまとめたシーンになります。
論文でいう序章ですね。
ここでいう物語とは「人生」の比喩になります。
つまりは、物語の終わりというのは「死」を意味します。
過去の自分の行動を悔やみ、未来に絶望している描写が特徴。
実はサビ以上にお気に入りのパートだったりします。
歌詞と悲壮感のあるメロディー・コードがめちゃくちゃマッチして、胸が締め付けられる感覚になるんですよね。
この歌詞を見て、「いやお前の人生「想い」か「夢」の二択しかないんか」とか思う人もいると思います。
全然そういうわけではないんですけど、音楽を始めるにおいて、また、自分の音楽をやっていく上でのコンセプトにおいて、「想い」が叶った経験の有無って結構大きいんですよね。
もう結婚してたら必死こいて働いて、それこそ音楽自体やっていなかった可能性だってあるわけで。
そういった理由から、「想い」と「夢」という言葉を並べているわけです。
完全にこれまでの人生を後悔している心情が表れているパート。
この「あの時」というのが具体的にいつか、思い浮かんでいる訳ではありません。
これから来るものなのか、もしくはすでに通り過ぎているのか。
叶わない結末を知った主人公であるからこそ、過去の自分を否定するシーンです。
全てに絶望したパート。
ちなみに、本来のサビの高さより1オクターブ下げているのがこのパートの特徴で、それが歌詞とぴったりなわけです。
また、ここでやっと「願いを抱くのはもうやめよう」という具体的に諦める旨のフレーズが出てきます。
ここまで何度も過去の自分が進んだ道を悔やんでいましたが、心の奥ではまだ希望を持っていた。
しかし、それがここで完全に潰えたということです。
ここで序盤の「夜空」の伏線回収です。
僕の中では夜空を見上げ、人生を振り返った後に自ら命を絶つシーンをイメージ。
足を進めるのは「死」に向けて。
ちなみにここでも「想い」に関する歌詞が出てきます。
理由は先述の通り。
我ながらやばいなと思うのは、自分が頑張ってきた人生を全否定する最後の「陳腐な人生」というフレーズ。
努力を重ねて、頑張ってきたのに何一つ願いを叶えられない、無力な自分の人生に対する軽蔑。
物語を締めくくる最後の言葉がこれっていうのも、なんだか悲しいけどどこか痺れますね。
ちなみにこの歌詞をこの記事に書き出した瞬間、夜空に関連する別の曲の歌詞のテーマが思いつきました。
きっと世に出るのはそう遠くないでしょう。
乞うご期待。
4.睡蓮
僕の過去の出会いを基にした詩世界。
実はこの曲、1st Singleである「あすなろ」の前日譚になります。
実際、「あすなろ」で出てきたようなフレーズを散りばめています。
歌詞の概要としては、過去の想い人と過ごす日々を大事に過ごすといったもの。
『今の感情の名さえわからない』
「あすなろ」の「愛してたんだ~」のところとリンクします。
この時点ですでに失恋しています。壮絶だなあ。
しかし、それでも「あなた(以降、彼女と表記)」が自分の中で特別な存在としているんですね。
『言い聞かせて』
楽しく会話をして、笑い合う。
そんな『素敵な日常』を過ごす。
それで充分だと、言い聞かせているんですよ。
つまりは、本心はどこか、それこそ『奥底』にあることが推測できる。
「奥底であなたを思っていた」というフレーズとリンク。
想いの有無に関わらず、彼女の存在が日常に彩りを与える。
それだけ、彼女は大きな存在だったわけです。
実際に彼女と出会ったのが、「別れ」を避けられない場所で。
それ故に、日常の中で「終わり」を意識せざるを得ませんでした。
僕の過去の経験の中には、それこそ「会わなければ良かった」というような、出会いそのものに後悔するレベルで傷ついたというか、またそれだけ思いを寄せていたことがありました。
しかし、この曲のテーマになった過去はそれらとは異なり、叶わぬ想いだと知っても、純粋に、彼女の『側にいたかった』のをよく覚えています。
それ故、出会ったことに対して前向きでいられたと。
『夢を語る』彼女の言葉で、過ごしていた日常の終わりを考えてしまう。
しかし、その居心地の良さから、変わらないことを望む。
子供っぽいと言われればそれまでですが(記事書きながら自分も思ってる)、それだけその日常に価値を感じていました。
終わりが来ることを受け入れながらも、それまでは彼女と一緒にいたいと願う。
ここから「あすなろ」に繋がります。
5.The Proof
アルバムのリードトラック的な扱い。
故に、アルバムや僕の活動上のコンセプトを彷彿とさせるフレーズが多めです。
時期としては、「羽化」と被るところがありますね。
自分の生き方を見つけたわけですから。
その生き方が音楽を通した自らの存在の「証明」なので、このタイトルになっています。
「物語=人生」
可能性に満ちあふれた自分の未来に、希望を持っているシーン。
こんな歌詞を書いておきながら、別の曲では「叶わない夢を追っていた」とか書いちゃうんだからなあ笑←他人事
傷つき、劣等感を抱き、「影」が生まれた。
その「影」というのが、コンセプトでいう「絶望」になります。
「影を華に変える術」というのが「音楽」になります。
「羽化」の歌詞解説でもあったように、それが心理学でいう「昇華」というもので。
その「昇華」と「華」がうまくかかっているわけです。
ぶっちゃけ偶然ですが笑
そして、その絶望(影)で未来に向けてどう歩みを進めるのか。
「何者かに成る」
大多数のうちの1人ではなく。
それが自分の描く未来。
そして、今まで傷ついた記憶も、抱いた絶望も全て自分(の一部)だと、受け入れます。
それが現在、僕の楽曲の歌詞、いわば1つの武器として活きています。
強気なことを言いながらも、やはり不安はあるわけで。
先述のDead endの詩世界のような、暗い結末がどうしても頭をよぎる。
どう定義するかにも寄るところではありますが、「成功」があれば「失敗」もある。
また、「成功」したとしてもその時点で失ったもの、失うものも少なからずあるんですよね。
その失うものが何か。
それについても不安を抱いています。
前のシーンで出てきた未来への不安。
それすらも受け入れ、武器としようとする、夢を追う者の力強さが表れているシーンです。
「絶望で華を咲かせる」という僕のアーティスト上のコンセプトががっつり出てきます。
そして、「影を歌う(い)」フレーズも。
自分のありのままを受け入れ「何者」かに成るべく、歩み始める。
まさに「物語の始まり」を描いたパートになります。
6.薔薇の棘と傷
薔薇の花言葉は「あなたを愛しています」。
その内容から、「想い人」という意味合いで「薔薇」をタイトルに加えることにしました。
加えて、その薔薇(想い人)の持つ「棘」を、「裏の顔」や「裏切り」という意味合いでタイトルに加えました。
そして、それによってできた「傷」。
「傷跡」としなかったのは、癒えたわけではなく、「まだ痛みが残っている」ことを表現する目的があります。
この曲は「想い」を「呪い」と捉え、それによって「(呪いに)蝕まれていく(=想い人を忘れることが出来ない)」という詩世界になっています。
また、細かな歌詞よりも先にタイトルが決まりまして、その字面から90年代からあるようなコテコテのヴィジュアル系を意識したフレーズや表記を使っているのも特徴になります。
物語のプロローグ。
ここで出てくる「天使の仮面を被る」というフレーズは、僕の大好きなヴィジュアル系ロックバンドNIGHTMAREの「D線上のトラジェディ」という曲のオマージュです。
曲中ではちゃんと「マスク」と歌っています。
天使の仮面というのは、美しい外見や表情、形になった優しさなど「目に見える魅力」を意味しています。
もちろん、「仮面」ですから裏があるわけですね。
一応説明しておくと、悪魔は先述の「想い人」の隠喩表現です。
我ながらひどいな。
悪魔が被る、先述の「天使の仮面」に騙され、惚れ込み、呪われるシーンをイメージ。
前のシーンと次のシーンを繋ぐ、ナレーションをイメージ。
「薔薇の華が咲く」=「恋に落ちる」という意味。
しかし、手を出した禁断の果実(先述の「悪魔(想い人)」を指す。手を出してはいけない存在としての隠喩)に毒される。
つまりは「良い影響を与えない(存在)」ということです。
恋という「呪い」に犯され、蝕まれていくシーン。
前半の花を咲かせるというフレーズの意味は前のシーンのナレーションの説明通りです。
後半では恋に落ちた成れの果てを示す内容になっています。
想いに溺れた様を描いているシーン。
「目を覚ますこと」は「恋が冷めること」を指します。
そして、それを完全に否定する。
それだけ「呪い」が強いことを意味します。
「天使の虚像」というフレーズは先述の「天使の仮面」を指し、つまりは偽物という意味合いで用いています。
ちなみに、この曲の中でテーマとなっている女性と3rd Singleの「侵蝕」でテーマとなっている女性が同じ人なので、ガッツリ「侵蝕」という言葉を使っています。
叶うことのない想いを抱き続ける主人公。
そして、その想いを向けた対象の本質を、いつからか見抜いていた。
それでもなお想い続けている、という主人公の純粋さが顔を見せるシーン。
向日葵の花言葉は「あなただけを見つめる」。
その純粋さを、ここでは愚かなものと表しています。
ちなみに知っている方もいると思いますが、僕は音源のジャケットには必ず1つは「花」を描いてもらっています。
まあ余談ですが。
先述の通り、幻想は覚めないまま物語は一度終わりを迎えます。
7.桜が見た夢
実は「桜のような僕の恋人」という恋愛小説がテーマ。
大学時代、ブックオフでなんとなく気になって読み出したのがきっかけです。
そしてまさか、レコーディングすらしていない時期にNetflixで映像化するとは思いませんでしたよ。
密かにタイアップ狙っていたんだけどなあ笑
まあ冗談はさておき、この曲では小説の中で描かれた世界を忠実に描いております。
本を読んだ人は歌詞を見て「お!」となってくれるのかな。
ネタバレを防ぎたい人はこの章とWikipediaは読むな。
※後者に関しては内容がほぼ載ってしまっているため。
それと、ヒロイン?の名前は「美咲」です。
これ結構重要なので覚えておいてください。
余談ではありますが、この曲以外にも恋愛小説をテーマにした曲があります。
世に出るのはかなり先でしょうけど。
「切り取られた世界」=「写真」
写真を撮ることで、その風景がいつまでも形として残る。
その事実から、このフレーズを使いました。
主人公の晴人は一応カメラマンですからね。
「桜の花が開く」=「恋が実る」
という意味。
後半から物語の次の展開に繋がります。
現実というのが美咲の病気のこと。
急速に老化が進むという症状なんですけど、これ本当にある病気らしいです。
そして、優しい美咲は晴人との(恋)物語を終わらせることを決意します。
「いつか~」から始まるフレーズですが、小説では隣で眠っている晴人の頬にキスをするシーンを指しています。
そのキスが、美咲の心情としてお別れの言葉も意味するのだろうと捉えたので「さよなら」と表記しました。
晴人を思い、(優しい)嘘をついて離れていった美咲。
それでも美咲を想い続けた晴人。
ここから物語はクライマックスに。
「美しく咲く」は美咲の名前とかけています。
うまい(自画自賛)。
「散りゆく」は察していただければ、と。
そして、その散りゆく中で美咲が思うのは「切り取られた世界(写真)でずっと2人、一緒にいる」こと。
それは美咲の、「現実の世界で2人寄り添い、生きていく」という夢が途絶える中で、せめて「恋人の愛した写真の中ではずっと一緒にいたい」という願いを表します。
美咲がいなくなった世界で生きる、晴人の視点。
それを表現するために、あなたを「貴女」と表記しています。
「『過』ぎ『去』りし時」=『過去』
ではなく、
「『想』い『出』し浸る」=『想い出』
この表現から、晴人がどれだけ美咲のことを大事に想い、そしてこれからを生きていくのか。
なんとなくでも伝わるような表現にしました。
伝わればいいな。
8.侵蝕
以前記事にしていますが、改めて細かく解説を。
元ネタは、僕が大学時代に想いを寄せていた先輩と食事に行こうと約束をしたものの、「課題やら実習やら忙しいからまた連絡する」という感じの言葉を送られ、結果そのまま「おじゃん」になった出来事。
そんな悲しい想い出から、切なく、そして壮大さも感じられる詩世界を描きました。
「侵蝕」というタイトルは、それだけ相手のことを忘れられず、ずっと想いを寄せつつ傷ついてきたことを表すものになっています。
いつか来るその時というのが、いわば「約束の日」。
それを純粋に待ち続ける、というこの曲の詩世界のあらすじにあたるパートです。
恋心のモチーフとして使われるハート(心臓)を、ここでは「胸」と表記し、それに「約束」をしまうことで「まだ想いが途切れていない」という主人公の心情を表現しています。
また、後述しますが「言い聞かせて」というフレーズから、この時点ですでに主人公の頭の中では叶わない可能性が浮かんでおり、少なからず葛藤を抱いていることが伝わるかと思います。
約束の日が来て、想い人と時間を共に過ごすことを夢見る主人公の心情が描かれたパート。
しかし、最後の方には、夢が覚め始めていました。
「交わした「約束」。それは彼女の情によるものだった」
今まで押さえ込んでいた考えが流れ出るシーン。
「「約束」が果たされ、想いが叶う」
と思いきや、それは夢の中の話。
ちなみにこの曲の前に入っているインスト「夢中」はこのシーンをイメージして作りました。
文字通り「夢中(惚れ込んでいる)」という意味と、「夢の中」という意味の2つがタイトルの由来です。
そして、ここから物語はクライマックスへ。
2つの意味で夢から覚めたシーン。
そして、どれだけ待っていても、どれだけ信じても想いが叶うことはないという現実を実感したシーンです。
彼女がいなくなった後も想いを忘れることができず、苦悩するシーン。
最後の「さよならを今、あなたに」というのは、過去に僕がAmazon Kindleで出していた短編小説のタイトルである「さよならをあなたに」と掛けています。
同じ女性がモデルなのでね。
ちなみにこの最後のフレーズ、元は自ら命を絶つシーンをイメージしていました。
この約束をする前にも1度失恋していて、その日の帰り、ふと線路に飛び込むことが頭によぎったのを覚えています。
今の僕じゃ絶対考えないですね。精神弱すぎか。
9.決別
ここでやっと説明しますが、この曲と「侵蝕」、「薔薇の棘と傷」が同じ女性がモデルになってます。
どんだけ固執してんねん気持ち悪。
まあ人間の他人に見せない内面なんて、誰の物でもきっとそんなものでしょう。
僕は見せてるけど。
この曲の時系列は「卒業式」。
当時の想い人が先述の通り1つ上だったので、僕は大学に残り、その彼女は卒業するという別れのタイミングでした。
※「誓い」が何かというのは「侵蝕」の歌詞解説の項目をご参照ください。
「誓い」が果たされないという現実に薄々気づいていながらも、ただただ想い人を信じ、「誓い」が果たされる日を待つ。
まさに「夢中」。
午前0時を「始まり」の一表現としています。
その「前を指す」ということで、「誓いが果たされることを信じる日々」から変わることに抵抗している心情を表しています。
先述と同様に、「約束の日」というのがまさに夢幻であることに気づいていながら、まだ諦めきれない心情を描いたシーン。
「桜の花が咲く」=「恋が実る」という意味になります。
しつこいようですが、主人公は想いが叶わないことに気がつきながらも、密かに希望を抱いています。
「まだ夢が叶う夢を見ている」わけです。
少しずつ現実に目を向け、夢が徐々に覚めてゆくシーン。
「夢が夢のまま終わる結末から逃れられない」というフレーズは、意図的に夢から覚めようとするのではなく、自然に覚めてきてしまっているという自分の意思と相反する現状を指しています。
やっと主人公が夢から覚め、現実と対峙しようとするシーン。
止めた針を動かすことで、
「午前0時より前を指す時計の針→午前0時を刺す(=想いが叶わない現実を受け止め、新しい日々へ進む)」
という表現になります。
想いを寄せた彼女と、その彼女に対する想いに別れを告げる(決別する)シーン。
「悲しみ」を「記憶」に変えることで、
「その事実(彼女への想いが叶わない事実)が過去になった=前を向く」
という表現になっています。
その心情が最後の「願い」となり、彼女と彼女に抱いた想いと「決別」することで物語は終わりを迎えます。
3.終わりに
コンセプトに忠実な叶わぬ夢や失恋等の「絶望」を描いた詩世界や、夢を追うような前向きな詩世界の曲もあり、アルバムらしいそこそこ幅広い内容の曲達が揃ったのではないでしょうか。
「はじめに」でも書きましたが、これまでに聴いてくれた人はまた新しい発見や楽しみ方が、
まだ聴いていない人は、聴く時により深い体験が出来ると思います。
色とりどりの「絶望の華」を、是非堪能してみてください。
それでは、今回は以上。
あざした!!
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