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富士山の麓、西湖にて。夫の小さな夢が叶ったかも?と思った話

最近、夫の小さな夢が叶ったかも?と思うことがあった。

わが家には、私が密かに「若気の至りカヌー」と名付けていたゴム製のカヌーがある。夫が20代の頃に勢いで買ったカヌーだ。

まだ夫と結婚する前のお付き合いを始めた頃に、そのカヌーと出会い買うことになったのだけど、10年以上の間、それはわが家で埃をかぶったままだった。

けれど、今やそのカヌーは、わが家の欠かせない相棒になった。

最近、このカヌーと共に家族で遊ぶ時間がとっても幸せで、何より夫が嬉しそう。今日はそんなことを書いてみようかなと思う。

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ふり返ってみると、このカヌーに出会った頃は、お互いのことを時間をかけて知っていく期間だった。

川辺をただ話しながら散歩したり、一緒に山登りをしたり、料理を作ったりした。海外旅行にも一緒に行き、ベトナムで魚介類を食べた後に夫がお腹を壮絶に壊してトイレにこもるのを見て「お腹がけっこう弱いんだな…」とか、そんなふうにお互いの弱い所にも理解を深めていった。

そんな時間の中で、2人でアウトドアショップにでかけたときに、その「若気の至りカヌー」に出会った。

学生時代、北海道でアウトドアサークルを作って活動していたらしい夫。イカダを作って、仲間と川下りして死にかけたこともあるらしい。(さいきんも、大学生のそんな事件を聞いたような……。他人事と思えない)

そんな夫だが、どうやらカヌ―イストで冒険家の野田知佑さんに憧れているらしい?と知ったのもその頃だ。

アウトドアショップで私達の眼の前に現れたそのゴム製のカヌーは、野田さんが乗るような素敵なフォルムの木製カヌーとは全く似てもつかないような代物ものだったけど、当時、社会人になりたてだった私達には、それなりに高価なものだった。

しかし、カヌーを目の前にして、夫は何かしらピンと来たようだった。

急に、「これ買おうかな」と言いだした。

もし、結婚していたら反対してたかもしれない。そのカヌーは空気で膨らます式のもので、畳んだとしても大人の腰くらいまでの高さにはなり、小型の冷蔵庫くらいの存在感がある。明らかに場所を取りそうだった。

しかも、都市圏に住んでいる私たちにとって、そのカヌーを使う機会は限りなく少なそうだった。

「えっ、わざわざ買わなくてもレンタルにするばいいんじゃないの?」くらいは意見したような気がする。でも、夫は無駄遣いを嫌うタイプだったので、そんなふうに何かを思いつきで買おうとするのは珍しいことだった。だから、何か特別な思い入れがあるのかもしれないな…と、私は強く反対するのをやめた。

そして、ちょっと驚きつつ、まっすぐにレジへ向かう夫を「この人、本当にこれ買うんだーー」なんて思いながら横目でぼんやりと見ていた。

その後、「若気の至りカヌー」は私の予想通り、一度だけ一緒に川下りを楽しんだ後、夫が学生時代の友達と数回遊んだだけで、見事にお蔵入りした。

しかし数年後、結婚して一緒に住むことになった時、当たり前のようにカヌーが家にやってきたときには、「あれま……(やっぱり、そうなった?)」と思った。

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とにかく大きいので場所を取るのだ。

結婚して忙しく働いて、子どもができて生まれて、とあれこれしているうちに、見事なまでに「若気の至りカヌー」は白く埃を被っていった。

私は図太くなり、お付き合いを始めた頃のような遠慮などは微塵もない妻に仕立てあがっていたので、このカヌーを邪険に扱っていた。夫にも何度か「このカヌー場所取るよね。なんとかならない?」とか、責めてしまったと思う。そのたびに、「そうかな??」なんてはぐらかされたけど。

たまに、このカヌーは、なんと船の中に水を溜める形で子どもたちのプールとして活躍した。私は、このまま、このカヌーは水に浮かぶことなくプールとして運命を終えるのでは?と徐々に信じるようになっていた。


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しかし……!!うちにカヌーがやってきて約10年以上の時を経て、ついに日の目を浴びる時がやってきた。

昨年の夏、コロナ禍になって週末の予定が軒並みなくなって、家族でゆっくり時間を過ごせるようになった頃のことだ。

夏なのにプールにも海水浴にもいけないし、湖にでもいく?ということになり、ようやくこの「若気の至りカヌー」が本来の役割を果たすことになったのだ。

そのおかげで色んな湖にこのカヌーを浮かべた。湖の縁を漕いでいくと、ちょっとした探検気分になれる。

先日は、西湖の根場浜から出港!

その日は息子の秋休みの平日であまり人気もなく、富士山も綺麗に見えて最高な1日を過ごした。風がない湖面に何千個ものダイヤモンドが瞬いているように見えた。


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私達は、すっかり湖が好きになり遊ぶのにはまっている。新たにサップまで買ってしまった。

湖には、いつも私達と同じく湖を愛する人達が集まっている。

サップを楽しむご夫婦や、気ままに1人でカヌーを楽しむ男性や、ペットのワンちゃんと湖で遊ぶのを楽しむ家族や、みんな湖の時間を心から楽しんでいるように見える。

サップもカヌーも子ども達だけで漕ぐことが出来るので、今の子ども達にはちょうどよい遊び道具でもある。

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ふと隣にいる夫を見ると、始終嬉しそうだった。普段からわりとニコニコ顔だけど、それがさらにニッコニッコになってる!

4人で、浜から少し湖がくびれているところまで休憩しながら漕いだ。西湖の岸辺はほとんどがゴツゴツとした濃い灰色の溶岩だ。溶岩でできた岩場に、家族四人で腰掛けて空を見ながら、お茶を飲んだり軽食を食べたりしてのんびり過ごした。湖面の下にハゼや巻き貝を見つけた。

西湖には、何10年もの間、絶滅したと信じられてきた幻の魚、クニマスが生息していると前日に立ち寄った蝙蝠洞窟で知った。もしかしたらこの湖の奥底にクニマスがいるのかなと想像しながらカヌーを進める。

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湖面が穏やかに波打つ様子を只々眺める。


家族全員がご機嫌だった。

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私は、長らくこのカヌーを邪険に扱ったことを反省した。

そして、ふと10年以上も前のアウトドアショップでカヌーに出会った時、夫はもしかしたらこんな時間を夢見ていたのかも知れないなと思った。いや、彼はリアリストなので、なぜあの時、いきなりこのカヌーを買ったのかほんとうの動機はよくわからない。

でも、もしかしたら無意識に抱いたかもしれない夫の小さな夢のようなものに触れた気がした。

これから、そのカヌーを買った理由について聞くことはないと思う。きっと、そうかもしれない……と思っていた方が、カヌーと過ごす時間の度に、私は嬉しくなれるから。

夫が今度、このカヌーで挑戦したいと思っているのは、どうやら川下りのようだ。

これからは「若気の至りカヌー」ではなく、何かもっと別の名前をつけてあげようかな、、と考え中だ。

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【おまけ】

西湖の近くでキャンプした前日。MTBのショートコースにも挑戦しました。

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※ちなみに、湖は、モーターボートがいると危ないので、できればモーターボートがいない湖を選んで遊んだ方が良いです!あと、ライフジャケットも忘れずに^^


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