信州の酒粕文化を堪能した「日がさ雨がさ」の夜

先日3/12(木)のこと、信州の銘酒にこだわる四谷三丁目の居酒屋「日がさ雨がさ」に伺い、酒粕を使った焼酎、日本酒を楽しんできました。

事のきっかけは、得意芸になりつつある「Twitter酒粕絡み」。
(注)以下の投稿中に誤りがありますがお気になさらず。後ろでは訂正されていますので。

これをきっかけに「日がさ雨がさ」の店主の宮澤さんと相互フォローとなり、近々お店にお邪魔しようかと考えていたある日のこと、一通のDMが届きました。

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なんですか、この魅惑のラインナップは。。。
という訳で、一も二も無く伺ってきた次第でございます。

■入店&一杯目

お店は東京メトロ四谷三丁目の駅からすぐ、雑居ビルの7階にあります。

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エレベーターから降りて入店し、カウンター席に端っこに案内されて目の前を見ると。。。目の前に正調粕取焼酎のマスターピースであらせられる「ヤマフル」と「辰泉」のお姿が!!!

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事前の案内では「正調」の「せ」の字も無かったのですが、初っ端からこれ以上無いホスピタリティを見せつけらました。

ここで宮澤さんと初対面のご挨拶。
早速、なぜ「正調粕取.net」に興味を持ったのかと尋ねてみると、数年前に「ヤマフル」を飲んで衝撃を受けて以来、ずっと正調粕取焼酎に興味を持っていたとのこと。何と、正調粕取界の先輩だったのです。
(他にも色々と伺ったのですが、それを書くと冗長になるので、酒粕関係の話題に絞ります。)

さて、一杯目です。
宮澤さんは癖の強い正調粕取焼酎の飲み方を研究されていて、その一つとして「ビール割り」が意外にイケるとのこと。
これは試してみるしかない!!!

という訳で、スタートは「正調粕取焼酎ヤマフルのエーデルピルス割り」から。比率は「ビール9:正調粕取1」だそうです。

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これは「大いにアリ」ですね。「ビールの穀物感、ビターな風味」と「正調粕取の籾殻風味、ロースト感」が共通項となり、すんなり同居しています。味の基調はビールですが、香りの中に正調粕取が確かに存在します。

■宮坂醸造シリーズ

それでは、いよいよ長野県の酒粕を使った焼酎、日本酒を飲んでみましょう。

最初は、長野県きっての銘酒蔵であり、日本酒好きの間では「7号酵母の藏」として知られる宮坂醸造シリーズから。
自分もその透明感&落ち着きを兼ね備えた味わいが大好きで、折に触れて飲んでいます。

ラインナップはこの2本。
①「真澄 辛口ゴールド」(普通酒)
②「真澄 吟醸粕取り焼酎SUMI」(上記に添加されている焼酎)

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「真澄 辛口ゴールド」は、穏やかな風味、控えめな旨味があり、最後にシャープにキレる感じ。これ、むちゃくちゃ好きです。家に常備しておきたい味わい。
「真澄 SUMI」は、吟醸粕取焼酎にしてはフルーティーさ控えめで、酒粕の芳醇な風味だけを抽出した感じ。久しぶりに飲んで、やっぱり美味いなーと感嘆しました。

最初に「辛口ゴールド」を飲んだ時は「粕取焼酎の味があると言われればあるような…」くらいの感じだったのですが、次に「SUMI」を飲んでから帰ってくると、「おお!いるいる!!」となりました。どこにいるかと言うと、「最後のキレ」だと思います

その後、「辛口ゴールド」をお燗にしてもらったのですが、これがまた良いこと。
甘みと柔らかさが引き出される一方で、焼酎のお蔭かどことなく芯が残っていて味が崩れていません。いやー、しみじみ旨いなこれは。。。

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■黒澤酒造シリーズ

続いて、長野県佐久地方の雄、黒澤酒造シリーズ
黒澤酒造は、現在のブームよりも早くから生酛づくりに取り組んだり、江戸時代の伝統技術である「柱焼酎」(日本酒もろみへの焼酎添加)を復活させるなど、伝統的なアプローチを得意としています。

ラインナップはこの2本。
①「黒澤 生酛 美酒旨辛」(柱焼酎仕込み)
②「井筒盛 2006甕貯蔵35度」(米焼酎)
※②の長期熟成ではないものが、柱焼酎として①に添加されているとのこと。

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「黒澤 生酛 美酒旨辛」(柱焼酎仕込み)は、シャープな辛口で最近好みの味わいです。絶対に燗上がりするだろうと思っていたのですが、お燗を注文し忘れるというボーンヘッド。。。
「井筒盛 2006甕貯蔵35度」(米焼酎)は、米の風味がとても濃厚で、そこに溶け込んでいる甕のアーシーな風味も最高です。蒸留方法の記載は無いですが、もしかすると常圧蒸留かもしれませんね。あまり売れないとのことですが、泡盛好きや球磨焼酎好きに飲ませたら高く評価されるのでは。。。勿体無い。。。

宮澤さん曰く、黒澤酒造がある佐久地方は焼酎の製造が盛んであり、他の藏も米焼酎、そば焼酎などを造っているそうですが、その背景や理由は不明とのことです。
佐久は米どころなので、昔は粕取焼酎の製造(&焼酎粕の肥料利用)が盛んだったのかもしれません。

■「尾張みりん」&「保命酒」

続いて、「こういうのはご興味ありますか?」と出して頂いたものが、この3本。
①糀富「尾張みりん 5年熟成」
②糀富「尾張みりん 3年熟成」
③入江豊三郎本店「十六味保命酒」

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興味ありますとも!
大いにありますとも!!

味醂の原料は「もち米、米麹、焼酎」であり、かつては粕取焼酎が使われていましたが、徐々に米焼酎や醸造アルコールに取って代わられていきました。
糀富の「尾張みりん」と「戸田本みりん」は、今となっては希少な「粕取焼酎仕込み」の味醂であり、是非飲んでみたいと思っていたのです。

その味わいは、宮澤さんによる自家熟成の効果もあり、濃厚な甘みに深い酸味が加わり、味醂の世界から「バルサミコ酢」に片足を突っ込んだかのような世界観
特に5年熟成の方はもう本当に最高で、「今日の優勝は君だ!」という感じでした。やっぱり酒の熟成は素晴らしい!!!

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そして、もう一本の「十六味保命酒」は、味醂と同様の製法で作ったお酒に16種類の薬草を漬け込んだリキュールで、江戸時代初期にルーツを持つ歴史ある製品だそうです。
原料には焼酎が含まれており、昔はおそらく粕取焼酎であった思われます。
その味わいは、甘さの中に朝鮮人参の土っぽさ、丁子の収斂味、クミンのようなスパイシーな風味などが絡み合い、いかにも「体にキク~!!!」という感じでした。

■「中仙道」&「舞美人」

さて、そろそろ締めに入りましょう。

最後はこの2本。
①武重本家酒造「中仙道25度」(米焼酎と酒粕のハイブリッド、5年超熟)
②美川酒造場「舞美人 山廃純米 酒粕再発酵酒」

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武重本家酒造「中仙道25度」は、米の醪を蒸留し、その蒸気を酒粕に当てて風味を抽出したというユニークな製法の焼酎です。
自分は元々武重本家酒造の個性的な味わいの日本酒が大好きで、この焼酎の変態的な製法を聞いた時も「武重らしいなー」と嬉しくなりました。
味わいは意外にも落ち着いていましたが、膨らみがあるところは武重らしくて非常に好みでした。

「舞美人 山廃純米 酒粕再発酵酒」は、長野県ではなく福井県の日本酒ですが、酒粕つながりということで参考に出して頂きました。
以前初めて飲んだ時は「これは変態的な酸味&雑味!」と驚いたのですが、今日は前の「尾張みりん」&「保命酒」が強烈だったこともあって、意外と普通に飲めてしまいました。とは言え、ここの藏の酒は個性的で楽しいですね。

■終わりに

いやぁ、良く飲みました。そして、信州の酒粕文化を堪能しました。
有難うございました&御馳走様でした。

この日はイレギュラーな日本酒・焼酎ばかり飲みましたが、実は「日がさ雨がさ」の酒メニューはとても豊富で、あらゆる酒の好みに対応できると言っても過言ではありません。
そうした中に、信州の酒へのこだわりがあったり、既成概念にとらわれない提案があるところが、この店ならではの懐の深さだと思います。

そして、話の腰を折らないように敢えて書かなかったのですが、長野県産の山の幸を中心とする料理も素晴らしかったです。

また伺います&皆様にもお奨めします。

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この後、新橋の「聖地」こと、バー「玉箒」に移動してさらに酒を楽しみ、大変気分よく帰宅しましたとさ。

<了>

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