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入れ子式の分銅

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入れ子構造になった分銅。おそらく銅製。4.5cmほど。

蓋を開けると中にマトリョーシカのように分銅が6個入っている。蓋はちゃんとピンで留まるようになっていて、作りが細かい。

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調べたところ、西洋で貨幣の両替に使われていたものであることが分かった。クエンティン・マサイスという画家が1514年に描いた作品「両替商とその妻」の中にも描かれている道具で、携帯性を高めるためにローマ時代に考案された形状らしい。中の分銅全部と外の入れ物の重さが同じだそうで、実際に量ってみたらほぼ同じだった。

日本でも両替には分銅が使われており、イチョウの葉を2枚合わせたような形のものが十数個セットになっている。これは骨董市でもよく見るが、セットがバラバラになってしまっていることが多く、やはり入れ子式で収納できるようにしたのは理にかなっていると言える。

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蓋には♣のマークが刻印されており、蝶番の部分も♣の形になっている。これは製造元のマークで、ギルドに所属する熟練の職人たちが作っていたものだとか。重さを調節しながらこのような意匠を凝らす職人仕事には全く敬服させられる。

英語で検索すると同じものが沢山見つかったが、日本語では僅かしかヒットしなかった。国内にはなかなか出回らないもののようだ。錘や分銅も色々集めたが、こういうギミックのあるものには初めて出くわした。珍しいものを見つけられると、骨董市に足繁く通う労力も報われるというものである。

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