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生徒会に人を巻き込む広報。そのやり方とは?(生徒会大賞受賞!広報の鬼が降臨!?講演録)



【1】なぜ広報は重要か

自分が生徒会に入る前、うちの生徒会っていうのは、生徒と距離感があった。それでもっと身近にしたいなということで生徒会長になったんです。そこで役員以外の生徒も生徒会に参加できるっていう制度をやりました。(前編参照)

生徒会を4つのチームに区切って、それぞれ役員がコアメンバーって形で振り分けました。そこに対して役員が掛け持ちしたりとかあるいは役員以外の生徒が入るっていうのもOKにして、結局役員11人、役員以外の生徒6人で17人体制でやっていました。
役員以外のみんなも生徒会に参加できるという仕組みをつくったのですが、しかしそうするとやっぱり、どうにかしてみんなに生徒会に興味を持ってもらわなきゃいけないと。
生徒会に興味がないからブラックボックスになる。ブラックボックスになるから、興味が湧かない。卵が先か鶏が先かみたいな話だけど、そういう問題があるならどっちかが無理やり作ってしまえばいいってことで。あと最近(注・2022年9月)よくブラック校則の話を聞くじゃないですか。ブラック校則も生徒がよくないよくないっていうだけだと、役員の内側だけの問題になってしまう。

生徒会は全校生徒のものだという考え

なんだけども生徒会って、生徒の会って言う通り生徒全員の会なわけで。うちの学校で言ったら、中学高校合わせて1200人全体の会で。

役員からこれはおかしいと声を上げるだけだと、生徒会役員と学校の問題になる。けれども・・・例えば生徒会全体でアンケートをとるなり、生徒会の広報でで発信できたら、学校全体の問題にできる。そしていろんな生徒が「自分ごと」として問題を捉えてくれるようになると。だから広報は大事なんです。
いろいろ起源とか調べている方もいらっしゃると思うんですけれども、生徒会の目的は生徒の自治なんです。ほかの委員会とはわけが違う。
なので、意見の集約力・発信力というの改革力に直結するんですね。


「やるのと同じぐらいやってる感を出すのが大事」ってちょっとかっこつけて書いたんですけども、本当にそういうことです。

私が生徒会長時代にやった広報

最初お堅い生徒会通信を作っていたのですが、まあみんな興味を持ってくれませんでした。それで新たに作ったのが学内新聞・渋渋TODAYです。


左(before)は一番最初に会長挨拶があって、(これを自分が副会長のとき作ったやつなので、この会長というのは一代前のこと、私ではないんですけども)各チームの活動報告があってと。まあ当たり障りのないやつですね。
生徒会長になって、学内新聞渋渋TODAYというのを作りました(右・after)。全校生徒が誰でも記事を載せられるようにし、生徒会に多くの人が興味をもってもらえるようにしました。

良い広報とは

自分が気をつけていたことについて話そうと思います。①見る人の立場に立った広報かというのと、②頭に流れ込んでくる広報か、という2点ですね。

見る人の立場に立った広報か

広報担当を長いことしていると、だんだん見る人の視点から離れて行ってしまうんです。例えば生徒会新聞とかを、純粋に読むだけの視点からどんどん離れていくんですね。いつの間にか、作り手の自己満足に変わってしまうのです。
例えば副会長時代に作った生徒会通信には、まず会長挨拶があって、そして所信表明が~~と続くわけですね。でもね会長はどう思ってるかなんてね、発信する側からしたら興味あっても、ぶっちゃけ見る側からしたら興味あるかって話です。校長先生の話を誰が聞いてるかって話と一緒で。
あるいは箇条書きで羅列しようとしても、どこに大事な話があるのかわからないと。
学内新聞では、黒タイツ着用賛成70.8%っていう、見る人にとって一番知りたい、あるいはインパクトのあるのを一番大事な見出しに載せました。見る人の視点。例えば、「聖春祭が開催されました」という文。昔のだったら生徒会が、聖春祭を開催しました、となるわけじゃないですか。ですが、(生徒会目線でそうでないとしても)読者目線にしたら誰が開催したかって、あまり重要な情報ではありませんね。細かいですが、聖春祭が開催されました、とすると、表現に客観性が生まれますし、読者目線主語がそろっているからすんなり受け入れられますね。強固な民意ついに届く、も同様です。生徒会が届けました、と書くと、どうにも出しゃばっているようで、見る人の立場からどんどん離れていきます。広報全体として、あくまで読んでる人がどうすればわかりやすいかを考えることが重要かと思います。

頭に流れ込んでくる広報を

今回一番言いたいことです。生徒会広報で相手に伝えたいっていう、その相手・対象は、自分たちの活動に何の興味もない人たち、あるいはちょっとしか興味がない人たちです。当たり前ですよね、生徒会活動に興味があったら、役員になっているわけですから。そういう人たちに対して、自分たちの活動について興味を持ってもらわなきゃいけない。自分が中高生協議会で広報部長をしてたときも、中高生協議会に対してあまり興味を持ってない人たちがインスタでちらっと見かけて、そして目線を次に移すまでのそのちょっとの間で興味を持ってもらわなきゃいけないと。
生徒会通信とかでも、ワードでつくった打ちっぱなしの文章を使って広報してますよっていう人が、多い。自分が見かける範囲でもそういうのがほとんどで、それは何か勿体ないなとすごく思って。

実際世の中には二通りの発信があるんです。「絶対に読んでもらえるもの」「読んでもらうもの」です。「絶対に読んでもらえるもの」というのは例えば裁判所の判決文とかですね。裁判所の判決文とか、絶対読みたいという意思がある人が読んでますから、興味を引くものであるかはどうでもよく、あくまで厳密性が最重要なわけです。あと、生徒会で言えば予算申請書とか。相手は絶対にその予算申請書に対して興味というか、読む必要性を持ってますよね。
それに対して「読んでもらうもの」というのは、・・・たとえば生徒会通信なんて興味がなければ、丸めて捨てられるわけじゃないですか。
すなわちこの生徒会での広報というものは、企業のプレスリリースのように活動に興味ある人が最初から最後まで熱意をもって読んでくれる、という性格のものではないということを、まず念頭に置かなくてはいけません。最初に巻頭言があって、代表挨拶があって、活動報告を箇条書きで~みたいな広報とは目的が違うんです。

(名前と顔が入っているところはぼかしを入れてあります)

重要な情報から入ってくる

たとえばさっきのこれでは、まず『黒タイツ着用「賛成」70.8%』で興味を引く。これで興味を持ってくれた人が、「黒タイツ着用「防寒・防犯に有効の声」」や、「強固な民意ついに届く」で全容をいったん把握し、それで本文を読む、というわけです。何より百聞は一見にしかず、図や写真は、「情報がすんなり入ってくる」という点で馬鹿になりませんから、豊富に使うとよい、というのはよく知られているとおりです。

「頭に流れ込んでくる」ための工夫

頭に流れ込んでくる広報を、という点で私が気を付けていたことをずらずら並べました。

必要な情報が適切にわかるか

どこでやるのかどんなイベントなのかどういうことをやったのかっていう5W1Hをより詳細に書く。また見出しを見てから本文を読むわけですから、見出しの時点で興味を持ってもらえなかったら、みんな本文までたどり着かないわけなんですね。ですから見出しに対してものすごく注力しなきゃいけない。
また皆さんカタカナ語や、あるいは漢字が延々並ぶようなの好きですけど、はっきり言って分かりにくい。ちょっとかっこよく見えるけれども、一瞬読んでて、ん?となるのが挟まるじゃないですか。
「イシューを明確化」と、「何がダメかわかりやすくする」では、言っていることは一緒ですが、わかりやすさに大きな差があります。後者はすんなりとはいってきますが、前者では理解するまでに一瞬ん?と考え、噛み砕く作業が入ります。特に意識高い系特有のとっつきにくさが生まれますから、避けたほうが無難です。よくファクトに基づいたエビデンスが、とか言ってる人はいますけれども、単純にわかりにくいじゃないですか。そこら辺は何というか、見る人の立場に立ったっていう話でもそうですけど、和語の方を選んだ方がいいのかなと思います。
(編集注:これはあくまで「読んでもらう」ものの話で、「絶対に読んでもらえる」ものであれば多少熟語が多いほうがむしろ簡潔になる場合もあります。(和語を選ぶ書き方は、冗長になるのが難点です。)

「なんのためか」

「どういうイベントをやるのか」よりも「それに参加したらどうなるか」「何を目的のイベントか」とかを優先して書きましょう。情報というのは単なる事実の羅列ではいけません。いつどこで、というものよりも、読み手がそれにより何を得られるか、のほうが、人間の興味としてより上位にあるわけです。
また同時に人間は自分に都合のいい情報を信じたい側面があります。ポスターに、「このイベントに参加すれば、みんな広報についてマスターになれるかも」とか書いてあったら、ひとつ興味のもとになりますよね。参加したらこういうことがありますよっていうのを提示する文を入れることで、良い印象を持ってもらえたりとか。興味を持ってもらえたりとかするということがあるということは、ぜひ頭に入れておいてほしいと思います。

「一息で読める」

新聞形式にしろ、ポスター形式にしろ、文字での広報でもう一つ重要なことがあります。それは一息で読めるということです。Twitterって限度140字(注:講演当時)ですけど読んでて、途中で集中力切れることってまあないじゃないですか。でも例えば国語の文章を読んでいてやれ一番最初のころ何言ってたっけみたいなのは結構あるじゃないですか。読んでいて集中力が切れないギリギリって140字くらいかなと思ったんです。これ以上長くはしないほうがいい、というのが持論ですね。

上に桃太郎の冒頭部分を載せました。皆さんスラスラと暗唱できるのは多分、どんぶらこどんぶらこまでなんじゃないかなと思います。140字以内だったら、人はスラスラ読んでくれるというわけです。


【2】実際に見てみよう

これは過去に自分が、所属していた日本中高生協議会で作ったやつなんですけども、まず題名が真ん中にドーンとあって、どういうイベントなのかなって興味を持ってもらう。そして興味を持ってくれた人向けに、イベントの具体的な内容が書いてあると。入ってくる順番として、題名⇒内容⇒日時という感じですね。そして例えば右のだと、そのイベントに参加したらどういうふうなメリットがあるのっていうのを書くと。主催中高生協議会とかは主張するところではないので、そこは、小さめで良いです。題名、その次にどういうイベント。ていう感じで必要な情報が順番に入ってくるようにすると、一目見て頭に入ってくる広報ができるんじゃないでしょうか。もう1個大事なことが情報を減らす勇気っていうのもすごく大事で、これもなんかね、字数でいったらものすごく情報としてスカスカなわけじゃないですか。でもちらっと見て把握できるくらいが限度で、実際に興味を持ってもらった人には詳細な説明を見に来てくださいね、みたいな形にするほうが、より多くの人に興味を持ってもらえることが多いです。

読んでもらう⇔絶対に読んでもらえるの例

右みたいないわゆるポスター的なのと別に、プレスリリース的なのも作りました。最初っから中高協に興味を持った人が、中高協ってどんなことをやってるんだろうと思って読む、「絶対に読んでもらえる」タイプの広報資料ですね。これは重要性順に入ってくるようにする必要はありませんから、たとえば時系列順とか。これの場合は単純に箇条書き的にしていますね。


これを作ってた時の話じゃないんですが、昔wordで他の人から記事もらってきて、それをこうやって私が見出しつけて、出したら、「書いた人からwordでもらったのに編集するとはけしからん。wordでもらったんだからwordでそのまま貼らなきゃ、文を書いた人に失礼だ」って言ってきたとんでもない人がいて、すごい面食らった覚えがあるんですけども。そういう人がどこを履き違えてるかっていうのは、プレスリリースみたいな厳密性や網羅性が要求されるのと、丸めて捨てられる紙とでは、目標がそもそも違うと。例えばさっき言った裁判所の判決文とか、あるいは生徒総会の公示とかあるじゃないですか。それを「読んでもらう」紙だと思って作ったら結局何が言いたいのかわからない掲示が出来上がるんですよ。考えてみれば、私にそれを言ってきた人っていうのは、学校でどちらかというと公式の文書を作る立場の先生でしたから、そういう風な考えになってしまうのも無理はない。でも、端的にいえばそれは視野が狭いということなんです。繰り返しになりますが、作るべきものが「絶対に読んでもらえるもの」と「読んでもらうもの」のどちらなのかで、目指すものは変わってくるのです。


やってみよう

ここまで聞いて、実際にこういうのを作ってみたいなとか、そういうイメージが湧いてきたと思うんです。ぜひ街に出て、いろいろ広告物と照らし合わせたりしながら、自分の理想の広報について考えてみましょう。あともう1個大事なことがあって、それは楽しみながら作るということですね。これを作るのって、相当な時間がかかるわけじゃないですか。何で楽しまないとやってられない部分はあります。で、楽しみながら作れるようになれば、図画工作に似たような喜びがありますし、何より自分で作った新聞とか自分で作ったポスターとかいろんな人に見てもらえるっていうのは、やっぱりなにものにも替え難いような、面白みっていうのがあるので、ぜひそこら辺楽しんでいただけたらと思います。では、頑張ってね。

↑目次

追記:役に立つサイトとしてCanvaがあります。一から作ると大変ですし、ごちゃっとしたよくわからないものができがちですが、既存のフォーマットを活用すれば比較的苦労少なく、わかりやすい広報資料を作ることができます。Canvaが難しく感じる人やオフライン環境での編集が多い人は、WordではなくPowerPointをつかうとやりやすいかもしれません。

(この文章は2022年9月に実施されたイベント「生徒会大賞受賞!広報の鬼が降臨!?」で私がした講演を文字起こししたものです。)

桃井晴崇 
Twitter:@seibu_user
momoi.school@gmail.com

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