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大晦日の出来事

社会人はじめての年末年始。

大晦日の前日、30日の夕方にぼくは広島へ帰省した。高校の同窓会へ出席するためだ。

ここ数年で開発が進んだ広島駅。

大阪に出てから年に1~2回しか帰省していないので、ぼくの記憶の中では、おんぼろい下水道の臭いがただよう広島駅で止まったままだ。

地元のはずなのに見知らぬ土地へ来た気分だ。


高校の同窓会は、卒業してからは最大規模で、学年の半分以上が参加した。

卒業ぶりに合う友達も多く、みんなの現状報告を聞いて「状況とかがいろいろ自分とは全然違うなぁ」と思った。

女子は、高校のときのイモさがすっかり抜けて"大人な女性"になっていた子も多かったが、「同窓会ラブ」は起こらなかった(ちょっっっとだけ、期待していた)。


翌日の大晦日、家族で父方の田舎へ帰った。毎年恒例行事だ。

1月末の日曜からぼくは休日出勤が始まるので、次の年末年始は帰省できるか分からない。

おじいちゃんとおばあちゃんへの顔見せも、しばらくできないかもしれない。

そんなことを思った。


田舎は広島の庄原市というところで、広島市内からは、車で寄り道や休憩なしでも2時間はかかる。

大晦日の17時ごろ田舎に到着。

本当に田舎という言葉がフィットしていて、周りは畑と山だ。

おじいちゃんおばあちゃんへ挨拶し、居間のこたつへもぐり込む。なつかしい。

今年のお盆は帰られなかったから、一年ぶりだ。

ぼくの実家にも一人暮らしの家にもこたつはないので、こたつへ入る機会と言えば田舎へ帰って来たときぐらいだ。


夜は、平成最後の紅白を観ながらすき焼きを食べた。

ふだんはすき焼きなんか食べないので、この機会にたらふく食べた。おなかがぱんぱんだ。


おなかが落ち着いたところで、少し早いけどお風呂に入り、出てからはガキの使いを観る。

居間の隣にも8畳ほどの部屋があり、そこにもテレビやソファ、ローテーブルが置いてある。

居間とこの部屋は引き戸で仕切られている。

居間の方では祖父母、父、母の4人が紅白を観ながら喋っている。

一人でこちらでガキ使を観て爆笑するぼくは、自分から見ても可愛いげのない孫だなと思ってしまう。

だってガキ使観たいんだもん。笑


少し落ち着いてきたころ。21時か22時ごろだったと思う。

ドタンッ

台所の方で音がした。

その音の大きさで、ただ物を落としただけではないことが分かった。

「おい!」

おじいちゃんの声。

ぼくの中で緊張感が一気に高まる。

急いで台所へ駆けつける。

「いてて…」

おばあちゃんが左足をおさえて横になっていた。

おばあちゃんはもう80歳代後半だ。

家の中で転倒し骨折

入院

ADL低下・寝たきり

という図式がすぐに頭に浮かんだ。

ぼくは今、整形外科の病棟を担当しているので、高齢患者にはこういうパターンが多いことを知っている。

今まで大きな入院をしてない高齢者でも、骨折などのイベントで一気にADLが低下する。

思い返せば、今まで大きな入院もなく元気だったのが不思議なくらいだ。

田舎暮らしで、塩分摂取量は多いかもしれないが、比較的よく食べるし、田んぼや畑仕事もよくしていた(今はあまりしていない)。

なので、今回こけたことで「ついにきたか…」と思った。


どうやら、小さい棚につまずいたらしかった。

高齢者は基本的予備能が低下し、今まではなんともなかった段差や小さい棚や角でつまずくようになり、今まではつまずいても体勢を立て直したりこけても受け身をとれていたのが、できなくなる。

こういうことを考えてしまうのは職業病かもしれない。

父は笑いながら「なにやってんだよ」などと言っているが、ぼくには笑うことなんかできなかった。

左足を押さえてはいるが、立てないことはなさそうだ。

翌日、近くの神社へのお参りに歩いて行けたから、おそらく骨折は、していない。

本当によかった。


仕事ではおばあちゃんやおじいちゃんと同じくらいの年齢の患者と接することがよくある。

カルテで入院の経緯をみても「買い物に行く途中に自転車で転倒」とか「トイレに行こうと思って立ち上がろうとしたらふらつき転倒」とか、本当に些細なことが原因で入院してしまう。

それに、特に冬は骨折が増える時期だ。

ぼくは自分の今の職場での経験や上で書いたようなことをこの機会に話した。

皆さんの周りの方にも、骨折の恐ろしさをぜひ呼び掛けてほしい。

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