戯曲『グラデン』

言葉は特殊なものなんだよ
なにが特殊なんですか
言葉はね、自分自身でしかそれをあらわせないという特徴をもっているのだよ、言葉とはね。do you understand ?
何を言っているんですか。それじゃあリンゴはリンゴ以外のもので説明できるというのかい
リンゴは赤いだろうが
赤くないリンゴはりんごじゃないとでも?りんごジャムはリンゴじゃないとでも?
りんごジャムはリンゴじゃないんじゃないか
じゃないじゃないうるさいですよ。近所迷惑ですって
あんたのタイピングの音のほうがうるさいから安心しんさい
言葉ねぇ。ことばを読むのは苦手ですわ
なぜだい
言葉にはなにかがやどっているきがするのだが、それが何なのかを探ろうとすれば、数年なんてあっという間に過ぎてしまうきがするのですよ。do you understand ?
それは要するに、相対性理論のことかい?
きみはばかですね
きみには負けるさ
僕はばかですよ。でもあなたほどではないはずだ。
こうして話をしている時間は、せいぜい3分といったところだろう?僕には27分に感じるさ。
それはよかったじゃないですか
そろそろ僕はおねむの時間だ。バッハを聞かせてくれ
勝手にきけばいい
そういう言い方はよくないなあ
勝手にしやがれ
ふ、わかったさ。きみは眠らないようだね
僕は起きていますよ。グラデンが来るまではね。
グラデンを待っているならば、相対性理論について考えるのがちょうどいい
でしょうね
まあせいぜい頑張りたまえよ
あたぼうよ

グラデンの影が見える

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