![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46602675/rectangle_large_type_2_70c273fa17ced80ee5d72c7775020923.jpg?width=800)
モスクワの灯り博物館
街灯が、我々にとってすっかり当たり前の存在となって久しい。しかし当然ながら、それが当たり前ではなかった時代もあった。星と月明かりのみの夜の街は真っ暗。不便だし、なにより治安がよろしくない。街灯は、技術の進歩がもたらした、ありがたーいものなのである。
モスクワに初めて街灯が出現したのは、1730年12月。木製の柱にブリキのランプ。大麻油を使った弱々しい灯りでも、当時は画期的。もっとも、点灯は手作業なので手間がかかるし、上質な大麻油はよく盗まれるし、苦労は絶えなかった模様。
それから130年以上を経て、より明るいケロシンランプやガス灯が登場。夜の風景が一変し、街が華やいだと伝えられる。そして1880年、モスクワで最初の電気灯がエルミタージュ公園で点灯された。この電気灯は市民の評判を呼び、点灯されるたびに集まった人々は拍手を送ったという。
街灯は、文字通り、都市の生活を変えていったのである。
「モスクワの灯り博物館」は、モスクワの照明にまつわる歴史を展示する。建物は17世紀末の石造りの邸宅で、白亜の壁は往時のモスクワ建築の様相をよく現している。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46581939/picture_pc_fe68fdfe9cfc67ab412bf7f030d489c3.jpg?width=800)
博物館の入口前は小さな広場になっており、古い街灯(復元品含む)が並ぶ、閑静な佇まい。街灯とベンチは相性が良い。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46591891/picture_pc_d9c5225080ddc0445662433c9ec04485.jpg?width=800)
半地下になっている第1・第2展示室は古い建築のレトロ感を存分に活かしており、ひんやりした空気と仄暗い照明とあいまって雰囲気抜群。
![画像18](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46664516/picture_pc_567beef226222f31189dd363e81c6d54.jpg?width=800)
館内を歩くだけで静かにテンションが上がっていく。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46663534/picture_pc_98c733bafc4255907b9ec3405d76090f.jpg?width=800)
18~19世紀頃、農家などで使われていた照明具。木切れを燃やして灯りをともす。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46597071/picture_pc_d5da5c64c83c62a9cf9f68696d4a51f5.jpg?width=800)
19世紀の燭台いろいろ。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46597111/picture_pc_43cc74515190b7dea9291bad86c25f0c.jpg?width=800)
街灯と点灯夫を模した燭台。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46592302/picture_pc_db94495bf2e4ee5af4109df31658e32a.jpg?width=800)
卓上ランプもいろいろ。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46592565/picture_pc_fc7e96a84a28ca318e3e7f6c5bedb716.jpg?width=800)
馬車用のランプは地味だが、色といい形といい、実用重視の製品ならではの味わい。吊り下げられているのは、ケロシン用の柄杓と、ランプの掃除に用いるブラシ。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46599070/picture_pc_cee4ccb580af8dacbd86e78488a40666.jpg?width=800)
自転車用のアセチレンランプ。
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46661691/picture_pc_913d1f10c6448d0740c65c120c6f9424.jpg)
19世紀末~20世紀初め頃の、自転車用アセチレンランプ。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46597929/picture_pc_08a6812a266b5d8b48c2a1e6cf0ba47b.jpg?width=800)
画像間違えた、こっち。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46600061/picture_pc_069fe256834e1afd7b05977e9e7007b1.jpg?width=800)
手前の街灯は、実際に灯してもらえる。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46602204/picture_pc_7480cf36ed88eb193fc803f91e030c56.jpg?width=800)
「わぁい灯り あかり灯りだいすき」
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46599419/picture_pc_8e0d02ab6f35d819dfd95b249d362302.jpg?width=800)
より後の時代を扱うフロアでまず目につくのは、街灯の灯具。普段ははるか高く頭上にあるそれを間近で見ると、こんなにデカかったのかと、新鮮な驚き。結構な迫力である。展示スペースが足りなくて、幾つか床にゴロリと転がっているのはご愛嬌。
![画像19](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46664815/picture_pc_f7116627a0108809b4d0bfcce5f65d78.jpg?width=800)
一言に街灯と言っても、道路灯や歩道灯など、種類は様々だ。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46599614/picture_pc_1a42e9a88801d3a530c63e706dff96bc.jpg?width=800)
写真パネルには年代毎に特徴のある街灯の写真がまとめられ、デザインの変遷が分かる。時代考証に使えそうな資料だ。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46599645/picture_pc_4d14e00e44a47c69482dd9c36168ad2b.jpg?width=800)
珍しいものでは、クレムリンの塔の赤い星の中の電球。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46599778/picture_pc_55832bb3bfa9bfe94738b34a9e664bd8.jpg?width=800)
この制御台は戦時中の1941~45年まで、モスクワの灯火管制を行った実物。
![画像17](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46663981/picture_pc_7e9d63520bd568cc10c9621cc1edfd45.jpg?width=800)
モスクワの北東地区の一画で、1941~1984年まで使用されていた制御台。仕事机にしたい。
都市の照明というマニアックなテーマだけで、ノスタルジーと好奇心を刺激する魅力たっぷりの展示を実現しているのは、「灯り」への深い造詣と愛の成せる業だろう。筆者がモスクワでもっとも好きな博物館の1つだ。
博物館HP:http://ognimos.ru/
場所:Armyansky pereulok 3-5, str.1
様々な照明器具を、デザインという観点から眺めるだけでも楽しい。レトロなランプやカンテラなどは、インテリアとしてもエクステリアとしても魅力たっぷり。筆者としては、自転車用のアセチレンランプはぜひとも1個欲しい。
![画像20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46665465/picture_pc_936a94ce8c7c544f8000c407c4677f84.jpg)
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