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第96話 ヤバ都市伝説~アークは四国の剣山にある?四国は世界一神聖な地?~【夢夢日本二周歌ヒッチ旅 回顧小説】

昨日けっこう飲んだので、翌日は遅めの時刻に出発した。
 
谷田君は南国というとなり町まで送ってくれた。ヒッチハイク123台目である。
 
南国なんて名前の地名があるのが面白い。
 
ぼくは南国で野宿をし、その翌日徳島を目指した。
 
剣山に登るのである。
 
四国の登山なら四国最高峰の石鎚山なのでは?と思うかもしれない。
 
しかしぼくは最高峰に登りたいわけではない。
 
剣山は四国2番目の高さだが、そこには「失われたアーク」があると言われているのだ。
 
失われたアークとは、映画インディジョーンズのタイトルになっていたので知っている人もいるだろう。
 
アークとは、モーセの十戒を納めていたという聖櫃(箱)のことだ。
 
インディジョーンズではエジプトを舞台に聖櫃の争奪戦が繰り広げられたが、その聖櫃が日本の四国にあるという都市伝説が存在し、ぼくはそれを九州で聞いていた。
 
なんでも剣山にある剣神社に納められているのだという。
 
なぜ四国なのか。それは古代から日本とヘブライ人とはつながっており、交流があったからだそうだ。
 
そして日本の中でも四国は特に神聖な場所なのだという。
 
ヘブライ人とは古代イスラエル人のことであり、現在ではユダヤ人と呼ぶのが耳慣れていると思う。
 
ユダヤ人は旧約聖書を信仰する(ユダヤ教)人々のことをさし、その民族をエジプトから脱出させたモーセが神から授かった掟=「十戒」をユダヤ人は守っている。
 
十戒は石板にその掟が刻まれているとのことだが、その石板を収めているのが聖櫃だ。
 
その旧約聖書から派生していくのが、キリスト教とイスラム教だが、もちろん今でもユダヤ人は存在する。
 
ヒトラーに弾圧されたのがユダヤ人だというのは誰もが知っているところだ。
 
古代において日本と交流があったというのが本当かは知らないが、あったとすればイエスキリストが誕生する前、つまり紀元前より前とか、キリスト教が興り、ユダヤ教がまだ衰退しきっていないころのことではないかと思う。
 
また、イエス自身がアラム語を話す部族であり、そのアラム語圏は当時インドの方まで広がっていて、ヒマラヤあたりで修行していたという話もある。
 
だから、二千年も前であっても中東の人々がアジアと交流があるということは不思議ではない。
 
そもそもシルクロードだってかなりの東西の範囲の交流があったことを示している。
 
マーライオンやシーサーや狛犬は、エジプトのスフィンクスが東に伝わったという説があるくらいだ。
 
さらに、日ユ同祖論というのを聞いたことがある人もいるだろう。
 
それは古代イスラエルの十二支族(イスラエル人は12の部族に分かれていた)の末裔が日本人だというような説だ。
 
交流どころか日本人がユダヤ人(古代イスラエル人)だという説なのだが、本当だろうか。
 
しかし、末裔ではないとしても、たとえば神道がユダヤ教の習慣を色濃く反映させているという説もある。
 
・鏡餅は、ユダヤ人が出エジプトを記念して食べる種なしパン(イースト菌なしのパン)の名残だとか。
 
・大掃除はユダヤのお祭りの一つ「除酵祭」(家じゅうのイースト菌を掃除する)の名残だとか。
 
・鳥居など神社の造りはソロモンの宮殿の造りの名残だとか。
 
・要するに神道はユダヤ教を引き継いでいるのだとか。
 
・ちなみに天狗の装束はユダヤ教の装束とそっくりである。
 
・相撲は神事だが、相撲の起源はアブラハムの孫であるヤコブが天使と格闘したという旧約聖書の話から来ているとか。モンゴル相撲というものもあるが、シルクロードで伝わってきたからだという。
 
・また、十五夜の月見は、ユダヤの仮庵祭の名残だとか。これはエジプトを脱出して荒野で過ごしていたとき、移動生活の為に仮の住まいで過ごしていたことを記念していて、草木で家を建てるのだが、沖縄ではまだその名残があったり、建物を建てなくても、ススキを使ったりするのはその名残だとか。
 
・除酵祭も仮庵祭も旧暦にすると日本の時期とちょうど合わさる。
 
日本の文化は中国を由来とされているが、そもそもその中国が西からの文化をシルクロードで取り入れていたので、さらに起源を西にたどることができるのだ。
 
こういったことを挙げればきりがないのだが、九州では、
「四国は古代から神聖な場所であり、それゆえに人が入り込まないようにあえて交通の便を悪くしている」
「古代ヘブライの王がかつて四国に来ている」
「現在でも四国は最後の楽園である」
「ロスチャイルド家が移住してきている」
などと聞いていた。
 
ちなみにロスチャイルド家はユダヤ人だそうだ。
 
こういったことはいたずらにロマンをかきたてるが、もちろん本当かどうかは歴史に葬られているので分からない。
 
こんな都市伝説を真に受けて山を登るなんてアホなのかもしれないが、ぼくも真に受けているのではない。
 
単純に、「おもろそうやな。アホやな。ネタになるな。」というノリなのだ。
 
そういう遊び心がないとつまらない旅になる。
 
しかしうっすらと、「何か起きてほしいな」という期待もあったのも本当だ。
 
とは言っても、お金も少なく、この野宿ヒッチハイクの旅でギターを持ちながら一人で山に登るというのは危険きわまりない。
 
そう考えるとやはり神頼みのチャレンジであることに変わりはなかった。
 
(これがやるべきことなら、きっとこのチャレンジもうまくいくはず。)
 
ぼくは南国を早朝に出発した。
 
ヒッチハイク124台目。南国から大豊。
 
朝、出勤中の40代の男性。
 
「大豊には大杉があるんですよ。樹齢3080年。」
 
日本一の大杉らしく、神話の時代にスサノオノミコトが植えたと伝えられているという。
 
朝からいきなり神話関係とは、剣神社を目指すテンションが上がる。
 
日本の神話の舞台はやはり九州だけではないのだ。
 
125台目。大豊から脇町インターチェンジまで。
 
古米を運んでいるという大阪のトラックだった。
 
和歌山は那智の滝、串本、勝浦、大台ケ原の原生林がいいよと勧められた。
 
126台目。脇町から貞光。
 
沖縄出身のおばさんだった。なんと今帰仁の近くの古宇利島生まれだという。
 
「時間があったから。ちょっとだけね。」
 
という理由で乗せてくれたのだが、それなのに5000円をくださった。
 
沖縄の方でヒッチハイク中にお金をくださったのは2人目だ。
 
やはり生まれと人柄とはつながるところがあるんじゃないかと思う。
 
ありがたい。
 
127台目。貞光から剣山登山口。
 
松山のアウトドアショップで働く男性だった。
 
「登山クラブに入っていて、今日は下見なんだよ。」
 
登山クラブに入る人が登るくらい登りがいがある山なのだろう。
 
剣山の標高は1955mで、四国で2番目というだけでなく、西日本で2番目に高い山になるそうだ。
 
「つるぎさん」とも「けんざん」とも呼ぶことがあるらしい。
 
登山口に立ってぼくは安心した。
 
(登山リフトがある!!)
 
しかし出費は大きい。 

剣(劒)神社は登山口にあった。
 
少し覗いてお参りしてみたが、まずは山頂に登ることを優先したい。
 
売り物の中に都市伝説系のあやしい本があったのが気になる。でも、下山してからじっくり見ることにする。
 
リフトで山頂付近まで登った。
 
そこからは山頂に近づいていくと、低木というか草原というか、とても視界の開けたなだらかな緑の丘が続く感じになっている。

登山道から来る人は、この次郎笈(じろうぎゅう)を登ってくるのだろう。

縦走が気持ち良さそうな次郎笈(じろうぎゅう)
かっこいい

歩道は板がしいてあって遊歩道のようになっている。少しはや歩きでも行けるくらいだ。
 
剣神社では年に一回、お神輿を山頂に運ぶお祭りをしているらしいから、この辺りも神輿を担いでかけぬけているに違いない。

山頂付近は巨石が多く突き出ていて、それが信仰の対象になっているようでもある。

剣山山頂
劒山本宮宝蔵石神社の脇を登ったところ
巨石の下の大剣神社

山頂付近には、劒山本宮宝蔵石神社ともう一つ、大剣神社もある。背後の巨石がまさに大剣のようだからか。

大剣神社には「天地一切の悪縁を絶ち、現生最高の良縁を結ぶ」と書いてあった。作りがプレハブというか、倉庫っぽいので、一体何がしまってあるのか、何か怪しいものを感じた。
 
お参りをしてぼくは下山にかかった。
 
行きは気づかなかったのだが、登山口のリフトの駅の名前は「見ノ越駅」という。
 
この辺りの地名のようだが、見ノ越とは読み方として「神輿(みこし)」を連想させる。
 
つまり登山口の神社に神輿があり、それを山頂まで運ぶということだから筋が通っている。
 
そしてぼくが気になっていたのは登山口の劒神社にあった本だ。
 
怪しい本があったのが気になっていたからそれを手に取ってパラパラとめくってみた。
 
そうするとそこには、「日本語はヘブライ語がもとになっているところがある」、「アレキサンダー大王がかつて四国に来ていた」、「日本の形は世界の形の縮図になっている(四国はオーストラリア、本州はユーラシア、九州はアフリカ、北海道はアメリカ大陸)」、「四国はヘブライ人の王様の顔が2つ並んだ顔になっている」などなど、都市伝説のオンパレードだ。
 
そういえば、この剣山にアークがあると言っていたのは太宰府で佐藤さんだ。

確か「わっしょい」がヘブライ語の「神が来る」という意味なのだと言っていた。
 
そういえばぼくらは「わっしょい」の意味は知らない。でもお神輿の時にみんなで言っている。
 
そしてそれが神が来るというヘブライ語なら、とても筋が通る・・・。
 
ちなみに神輿のてっぺんには鳳凰がいるのを知っているだろうか。聖櫃にもケルビムという神獣のような鳥がいて、そっくりなのだ。
 
(「わっしょい」と神輿をかつぐのは、実は「神が通るぞ」と言って聖櫃を運んでいるのではないだろうか。)
 
古代へのロマンと、世界史や宗教の謎に胸が高鳴る。
 
ぼくは黄色い表紙のその本を買いたくてしかたなかったが、そこに手を出してしまってはここ数日でお金が尽きてしまいそう。
 
しかたなくぼくは「劒神社」と書いてあるお守りだけを買うことにした。
 
また、天狗のお面が2つあったのも気になった。天狗はユダヤ人という説が頭にちらつく。
 
もっとここにいたかったし、もっと大きな何かが起きてほしかったなという思いで名残惜しかったのだが、ここをもう進むしかない。
 
(さて、今日中に徳島入りしないとな。こんな標高高いところだったら野宿寒いべ。)
 
さっそくぼくはヒッチハイクを開始した。
 
ここでぼくは初めての試みに出た。それはスケッチブックを出さず、つまり行き先を掲げずにヒッチハイクをする。
 
(こんな山の中の、下山する人しか通らない一本道。行き先書くまでもないし、まさか歩いてここを下っていくなんて人はあまりいないだろうから、ここでヒッチハイクしたらすぐに車停まってくれそうだな。)
 
要するに情を誘う作戦だ。
 
ヒッチハイク128台目。
 
案の定すぐに車は停まってくれた。作戦成功。
 
さみしい道は逆にヒッチハイクが成功しやすい説がある。
 
「行きにも見かけたんですよ。」
 
と運転手さんは言う。なんという奇跡だ。
 
だって同じ時間に下山することになったということなのだから。
 
乗せてくれたのは徳島出身のひろかずさんとゆみこさん。
 
なんと徳島駅前まで一気に送ってくれるという。
 
お二人はぼくの8つ上で、とても話しやすかった。
 
「ポカリスエットに使われている水って何を使っているか知っていますか?」
 
「いや。天然の水なんですか?」
 
「はい。吉野川の水を使っているんですよ。徳島の大塚さんという方が作ったんです。」
 
全国区のポカリが四国から出ていたとは知らなかった。
 
「うどん食べました?一緒にどうですか?」
 
(え~~!!それはありがたい!)
 
そしてひろかずさんたちは「福助」といううどんやに連れて行ってくれた。
 
そこは二人がよく行くお店らしく、店員さんにぼくのことを紹介してくれたし、店員さんも交えて話が盛り上がった。
 
最後にはサインまでほしいと言われ、とても恵まれた時間だった。
 
剣山に挑戦したことは、やはり間違いではなかったのだと思う。

つづきはまた来週

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