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「鬼が入ってくるから窓はすぐに閉めなさい」我が家に伝わる早口豆まき

実家を出て、もう10年近くになる。家での習慣や過ごし方は、実家にいたころのままのこともあれば、やらなくなってしまったこと、変わったこともある。結婚をしてパートナーと一緒に住むようになってからは、それぞれの習慣をお互いに妥協したり、譲れない部分を主張して、たまには喧嘩になったりしながら過ごしている。こういった習慣や家庭でのルールみたいなものは、地域差や親の家庭環境や教育方針にもかなり影響していると思うが、大学で東京から地方に移り住んだと時は、それぞれの家庭の話をしているだけで結構勉強になったりしたものだ。

妹ともよく話すのだが、我が家の習慣は友人と比べると少し特殊なものも多かった。武道に精通した父の影響が大きいのだが、例えば普通の家庭であれば湯舟に使って「100まで数えなさい」というところを我が家では「風林火山を暗唱しなさい」「白虎隊の什の掟を暗唱しなさい」など平成の世とは思えぬようなお風呂での時間が流れていた。

そんな父から教わった節分の豆のまき方も変わっている。おそらく通常は「おにはぁぁぁぁーそとぉぉぉー」「ふくはぁぁぁぁーうちぃぃぃー」とゆっくり唱えながら、開け放った窓から豆を投げると思うのだが、我が家では窓を開ける前に「ちゃんと豆は持ったか!?投げる準備はしたか?」という父の確認が入り、窓を少しだけ開ける。開けた瞬間に早口言葉のように「おにはそとふくはうち!」と叫び豆を投げ、ぴしゃっと窓を閉める。父曰く「鬼が入ってくるから」ということだが、これでは福が入る暇もないようにも思える。

幼いころは豆まきが楽しみで、仕事から父が帰ってくるのを今か今かと待っていた。豆まきは母ではなく、父と行うのがうちのルールだった。もしかしたら、疲れた父が「早く終わらせたい」という想いから考案した「早口豆まき」かも知れないが、自分の中ではこれがスタンダードになっている。

続けてきた習慣は、やらなければ気持ち悪くなるもので、一人暮らしをしている時も節分の日には、一人でこの「早口豆まき」をやっていた。やらないと鬼が入ってしまう気がして。(もちろん、豆をまいた瞬間窓をぴしゃっと閉める。)

当時の彼女(現妻)とたまたま節分を一緒に過ごす年があり、この話をしたところ、最初は爆笑されたが今では妻もこのやり方に付き合ってくれている。我が家の伝統としてしっかりと守っていきたい。そして、もし子供ができるような事があったら次の代にもしっかりと引き継いでいきたい。

「おにはそとふくはうち!」

#我が家の節分

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