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中国語学習者にとって発音とは何か

今回は久しぶりに、中国語のすべてのレベルの人に関係のある「発音」についてお話をしたいと思います。

先日、全人代閉幕後に定例となっている李克強総理の記者会見を翻訳する機会がありました。外国の記者は英語で、大陸や香港、台湾、シンガポールの人たちは中国語で総理に質問する中、今年も日本の某通信社の記者の方が果敢に中国語で質問していましたが・・・はたから聞いててお世辞にも聞き取りやすいとは言えず、翻訳するにも一苦労な発音でした。

私はもうすでに20年余りにわたり、全人代会議期間中に行われる外交部部長や国務院総理の記者会見を見ていますが、大体イメージとしては韓国メディアの記者の中国語はかなり仕上がっている一方で、ほぼ総じて日本メディアの記者の中国語の発音は残念な印象を受けることが多く、こちらとしても耳で聞きとって翻訳するのは難しい場合が多いですね。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。

私はこれは日本語の発音の特徴によるものだと感じています。

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そもそも私は第一志望の大学の中国語学科に不合格だったこともあり、別の大学の英米学科で英語を専攻しました。そこでは当然ながらさまざまな英語理論を勉強する授業があったのですが、その中で英語の発音学の授業があり、わたしも出席していた記憶があります。

とはいっても、もう20年以上前のことなので全ての授業の細かい内容は覚えていないのですが、その中でも今でも覚えている興味深い授業がありました。

それは手鏡を個人個人で持ってきて、自分の前に置き、英語の発音をして口の形を確認するというもの。先生からは、「日本語と英語では発音の方式も使う筋肉も違う。だから自分で確認して、少々オーバー気味に発音するように」といわれました。

言われたのは英語の授業だったのですが、私はいまでも、これは中国語にも当てはまると強く感じています。そもそも日本語は中国語のような破裂音もなく、発音の際の口をあまり動かさなくても発音できてしまう言語。そこが外国の日本語学習者にとって難しい所ともいわれています。

これは裏を返せば、われわれ日本人の中国語学習者にとっては、口の開け閉めをオーバーすぎるほどやらないと、いい発音はできないとも言えます。

皆さんは、「中国人は声がでかい」と不満を感じたことはないでしょうか。これは別にすべてがすべて中国の人たちのマナーに起因しているのではなく(もちろんマナーが悪い人も一部いますが)、中国語の発音の関係上、はっきりとした口の開け閉めをして、はっきりとした発音をする必要があるから、ともいわれています。

中国語において「オーバーアクション」は発音自体はもちろんですが、四声でも同じことが言えます。一声は「上すぎるかな」と思えるぐらい上のトーンで、二声は下から上に雲まで這い上がるぐらいのトーンで、三声は地獄から這い上がるぐらい下のトーンで、四声は滑り台で上から落ちるぐらいのトーンでそれぞれ発音するよう心がければ、きっとうまくいくでしょう。

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中国語の発音も、四声も、「オーバーアクション」が必要だということはお分かりいただけたと思います。これは裏を返せばどういうことなのか。それは「中途半端な発音はだめだ」ということです。実はここが日本人にとって一番難しい。

なぜか。それはとかく日本人は発音についても、四声についても完璧を求めすぎてしまい、そのために逆に「自信がない」とか、「おそるおそる」といった感情が先走ってしまうからなのです。そうした感情から日本語のような、口をあまり動かさなかったり、トーンが平坦だったりする中国語になってしまう。そうすると聞き取りにくい中国語になってしまい、「何が言いたいかわからない」と言う感情だけが相手に伝わるという悪循環になってしまいます。先ほどの記者さんの中国語もまさにこの悪循環じゃないのかなと思ったりします。

実のところ、ほとんどの人にとって、発音がいい悪いは中国人との対人関係にとって全く影響はありません。相手に意味が伝わればいいのですから。

もっというと間違った時、心優しい中国の人ならむしろその場で教えてくれるはずです。そう考えてみると、「発音や四声が間違ってもいい。自信満々かつ果敢に話してみよう」と思えてきませんか。現に私もいまだに四声を壮大に間違えてしまい、妻に直されることが何回かあります。

大事なのは「オーバーアクション」で発音すること。それこそが中国語の発音の上達の一歩だということを肝に銘じておきましょう。


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