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略語や造語の処理方法
中国メディアや台湾メディアのニュース記事を見ていてつくづく実感すること。それは他言語のニュース記事に比べて、「略語」「造語」が異常に多いことです。これはやはり限られた文字数の中で、できるだけ多くの情報を詰め込みたいという執筆記者、発言者の思いからなのだと私は解釈しています。今回はそのような「略語」「造語」の対処方法について考察してみたいと思います。
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一般的には組織名や団体名、肩書、何らかの名称など、記事中に瀕出する語句や「略しても読者が理解できるという暗黙の了解が既にある語句」に略語が使用されるものなのですが、中国語圏のニュースにはそれが特に顕著に現れます。
ちなみに私がいまパッと思いつく例としては
中共→中国共产党
全国人大→全国人民代表大会
常委会→常务委员会
全国政协→中国人民政治协商会议全国委员会
国台办→国务院台湾事务办公室
海协会→海峡两岸交流协会
民盟→中国民主同盟
などなどでしょうか。この他にも、台湾のニュースにも頻繁に出てきます。
しかし一方でこれらはあくまでも中国語ネイティブにとって、「略しても読者が理解してくれる」語句なのであって、早い話が「内輪受けの言葉」だということをわれわれは頭に入れておくべきでしょう。ですからこれをそのまま日本語の記事に当てはめても、日本語ネイティブの読者にも理解してもらえるとは限りません。
ではこれらの略語を日本語文に反映させる際に、どう処理したらいいのでしょうか。略語をそのまま表記するのも、展開して全表記するのも一長一短と言えますが、基本は記事中で初登場の時は「全表記(略語)」の順に表記し、2回目以降は略語を採用する方法を使えば間違いないと私は考えています。
しかしここでも翻訳の前に、「記事の読者は誰か」ということ、そして「ローカルルールがあるかどうか」ということをしっかり確認する必要があります。
私の場合は、「中国事情をある程度理解している人」が主なターゲットであるため、「中国事情にある程度詳しい人」にとっては基本的な組織名、肩書は最初から略語の形を採用しています(これはいわゆる私のチーム内でのローカルルールだともいえます)。例えば上の略語リストで行くと、
中国共产党→中共
全国人大→全人代
あたりは最初から略語で済ませています。あとやっかいなのは「常委会」でしょうか。「常委会委员长」のように「常委会」の後に肩書が来るパターンは「常務委委員長」のように略語にし、「常委会」のように単独で来る場合は「常務委員会」といったように全称を採用しています。これは「記者ハンドブック」にも記載されている、「なるべく略語単独で表記しない」との報道記事のルールに準拠したものです。
あとは
中国人民政治协商会议全国委员会→中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)
国务院台湾事务办公室→国務院台湾事務弁公室(国台弁)
海峡两岸交流协会→海峡両岸交流協会(海協会)
中国民主同盟→中国民主同盟(民盟)
のように、全称にすると非常に冗長になってしまう組織名、肩書などは初出の時に併記し、2回目以降は略語を採用するやり方を採用しています。
「中共」に関しては、日中国交正常化以前は蔑称として使用されていたようですが、いまは蔑称の流れとして使うことはなくなってきています。私のように「中国共産党」のニュースを多く取り扱う翻訳者は「中共」という言葉を使用することは差し支えないと考えますが、これはローカルルールとして個々の皆さんがクライアントに確認すべきことでしょう。
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あと、略語と言えるものではないのですが、「数字+文字(語句)」といったパターンの「造語」の処理も結構やっかいです。
実は中国政府(中国共産党)の指導者は、自分の話の中に数字を織り交ぜるのが大好きです。その証拠に彼らの演説、文書の中には頻繁に「数字+文字(語句)」パターンの「造語」が出てきており、全人代の活動報告や重要講話が出るたびにこのパターンの新しい「造語」が作られています。そのたびにわれわれ翻訳者は翻弄されるわけです。
例えば最近よく目に付く「造語」としては次の通りでしょうか。
四个意识
四个自信
两个维护
中国政治に詳しい中国の人ならば理解できるかもしれませんが、このような造語は日本人にとっては(中国語をある程度知っている日本人でさえ)なじみの薄いものであり、初出の場合は、やはり単純にそのまま字面通り訳すのではなく、ネットで調べて、次のように訳文に解説をつけなければなりません。
「4つの意識」(政治意識、大局意識、核心意識、倣う意識)
「4つの自信」(中国の特色のある社会主義の道への自信、理論への自信、制度への自信、文化への自信)
「2つの擁護」(習近平総書記の党中央の核心、全党の核心の地位を擁護し、党中央の権威と集中・統一的指導を擁護すること)
ただこれらの「造語」は、初出が中国共産党指導者の発言であることがほとんどで、ある程度使われるパターンや場面が決まっています。
例えば上記の3つの造語は、使われる時は大体3つセットの場合が多く、しかも「增强“四个意识”、坚定“四个自信”、做到“两个维护”」といったように、ペアとなる動詞もほぼ同じパターンとなっています(もちろん単独で使われる場合もある可能性はあるので過信は禁物)。
このため初見の造語を調べて処理した後に、自分で解説や使われる場面などをデータベース化してストックし、「自分の辞書」を作っておけば、次回遭遇した時に迅速に対応することができ、翻訳の時間を大幅に節約できるでしょう。翻訳者にとってはこのような工夫はとても大事であるともいえます。
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以上中国語のニュースに欠かせない略語、造語を見てきましたが、これらの語句を躊躇なく処理できれば、自分のニュース翻訳のレベルも一段上がったということができるのではないでしょうか。
サポートしていただければ、よりやる気が出ます。よろしくお願いします。