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翻訳の際の時間配分

皆さんは一般的に中日の翻訳をする際に、どれくらいの時間をかけていますか。

目安としてですが、わたしは1日、多いときで国内メディアからの放送翻訳、ネットメディアからの活字翻訳を含めて大体ニュース10本、日本語の文字にして合わせて8000字の翻訳を処理しています。長い記事、短い記事をこなしていくのでこれくらいの量になるのですが、やみくもに翻訳をしていては効率的な訳文処理はできません。このため、訳文1本に対する作業について、それぞれ時間配分を自分で決めて取り掛かっています。この手順については、翻訳者それぞれのやり方があるので、「こうである」というものではありませんが、わたしのケースを今日はご紹介しましょう。

翻訳文1本あたりの処理時間については、記事の難易度にもよるでしょうが、大体A4の紙に標準の字の大きさで上から下まで埋まる程度の長さで、1時間半ぐらいを目標に処理することを心がけています。ではこの長さの記事をわたしが翻訳する際の手順と、時間配分の目安、そして作業時間の短縮のための秘訣を解説していきたいと思います。

1.全体をまずよく読んで、記事の内容をよく理解する(5分)
これは、まず何はともあれ必要な作業です。一般的なニュース記事ならば、普通に読めば何の記事なのかは数分で理解できます。特に以前の記事で説明したように、中国語のニュース記事では第一段落に「5W1H」が詰まっていることが多く、この段落を読めば大体の記事の内容が分かるようになっています。ですので要領をつかめば、この部分の作業は大幅に短縮できるでしょう。

しかしこの他に環球時報の社説など、筆者のロジックをしっかり理解しなければならない難解な論評や解説記事などは、どういうことが書いてあるのかを最後までじっくり何回も読んで頭に叩き込んでおかなければなりません。この作業を効率化する上で必要なのはやはり、中国語文を効率よく読む技術のほかに、日々よく日本語の新聞を読んで、時事的なことを先回りして理解しておき、いろいろな分野の知識を取り入れておくことです。

2.分からない用語や意味、人名、地名、肩書きなどを調査する(40分)
この部分の作業も原文の難易度により変動します。①の作業をしっかり行い、キーワード、ロジック、時制の把握、そして話者が誰なのかを理解していることが重要になります。また、辞書に載っていない用語についてもしっかり訳語を導き出さなければならないので、難解な原文に直面した際にどのようにして効率よくネットを駆使し、的確な訳語を導き出せるかという「調査力」がカギとなります。つまりこの部分の手際がよければよいほど、作業の時間短縮が実現できることになります。

3.原文を翻訳する(40分)
②の調査作業で下地を作っていればあとは訳すだけです。ここで必要なのは中国語、日本語に対する確かな文法力のほかに、ブラインドタッチなどのパソコン操作力でしょうか。これら2つの要素が優れていれば、ここの部分の作業はある程度短縮できることになります。ですから、この能力をブラッシュアップすることが一段上の翻訳者になるために重要な要素になるとも言えます。

4.訳文の見直し(5分)
できた訳文に対して、誤字脱字、文法の間違い、日本語文として不適切な部分などを自己診断して訂正することになります。誤字脱字を100%排除することが絶対条件になるわけですから、この作業は非常に重要です。しかし、この作業の時間を取りすぎることは、翻訳の効率化の面から言えば余り好ましくありません。ここで必要になるのは訳出言語である日本語の文章に対する理解能力、つまりある程度の高い「日本語力」、そして文章に対して「おかしい」と気づくことができる察知力でしょうか。日本語力向上のために必要な本として前回の記事で紹介した「記者ハンドブック」が生きてくることになります。日々緊張感を持って作業をしたいところです。これは。。わたし自身の自戒もこめてです。

これらの時間配分はあくまで目安です。難易度によって変動もあるでしょう。ただある程度こなれてくれば、標準的な長さであれば1時間半から2時間ぐらいの作業時間で収まってくるはずです。ですのでまずはこの作業時間を目標にするといいのではないでしょうか。

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