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「关心、关切、关怀、关注」に見る類義語の違い

私は中国語の翻訳で難しい点とは何かと聞かれたとき、「類義語の多さ」と答えています。これまでも私は自分のnoteの記事で、「中国語の意味は表意文字である漢字と漢字の組み合わせの最小公倍数でできている」と何回か説明してきました。

しかしこの「最大公倍数的意味」を日本語の訳語の違いに落とし込んでいくことこそが、中国語を翻訳する上でとても難しい点だと私は感じています。なあなあの訳であれば、「全部同じ訳にしちゃえ」ということにもなりますし、実際にはそれで日本語文を構築しても違和感ない場面というのは多々あるでしょう。

しかしそれなりに的確な訳を追求していくならばやはり、細かい違いに対する理解が必要になってくるでしょう。特にニュース記事では論評や声明、報道官談話など、前後のロジックをしっかり把握したり、筆者の微妙なニュアンスをしっかりと伝えなければ齟齬が生じる場面が多々あり、だからこそ翻訳者はニュアンスを十分理解した上で、しっかりと「訳し分け」をして読者に示していく必要があるのです。

では実際にニュース翻訳で、一番最初に知っておくべき類義語はどのようなものがあるのでしょうか。私ならばまず最初に知っておくべき類義語として、「关心、关切、关怀、关注の違い」と答えます。

なぜなら、これら4つの語句は中国語のニュース記事の中で登場する確率がとても高いからです。にもかかわらず、的確な日本語訳を当てはめられる人は限られていると感じています。そのような語句ではありますが、ここでは例として、これら4つの語句を見ていきましょう。

关心

「关」自体は「関わる/気に掛ける」という意味の文字です。これに「心」が加わり、日本語では「心をかける」、さらには「関心を寄せる」という意味が当てられています。しかし「关」にも「心」にも、込められている感情は中性的で客観的なものであり、「心をかける」以上の意味も、以下の意味もありません。このあたりをニュアンスを間違えないようにしなければなりません。

关切

前の「关」の文字は同じですが、今度は「切」という文字が当てられています。この「切」には「差し迫った」「緊急的な」という意味が込められています。つまり「とても重大なことがあったので心をかけている」というニュアンスがあるということをしっかり覚えておかなければなりません。日本語では「関心を寄せる」という意味の他に、「懸念」「懸念を感じる」という訳語が当てられることもあります。

外交部報道官の問答や声明では、「严重关切(重大な懸念)」という表現が使われることもあり、明らかに上記の「关心」よりも重大性(マイナスな面の)が増しているのでその意味を加味した訳文を構築する工夫が必要です。

关怀

この語句も前の「关」の文字は同じですが、後ろには「怀」の文字になっています。この「怀」の文字の意味は辞書を引くと、「(自分の)思い(を抱く)」であることが分かるでしょう。「自分の思いを持って相手を気に掛ける」となり、ここから「思いやりを寄せる」という言葉を導き出せます。この言葉はいわゆる「褒义词」と呼ばれるもので、対象を褒めたり、称賛したり、敬意を表したりする時など、ポジティブなニュアンスを伝える時に限って使われるものとなっています。

关注

この語句の後ろの文字は「注」となっています。「注」の文字は「一点に集中する」という意味があります。「关」の文字と組み合わせれば、「一点に集中して心を寄せる」という意味になります。中日辞典ではしばしば、「注目する」という語句が当てられています。

外交部報道官の問答や声明では、「密切关注」(注視する)という組み合わせで出てくることが多いですね。

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ここまで「关心、关切、关怀、关注」の違いを見てきましたが、お気づきの通り、中国語の類義語には「最初の文字が同じ」パターンというのはかなり存在します。例えば「往 往来」「进」「愿」などがあります。ですから頭文字が共通の類義語が出てきたときは、「二番目の文字のニュアンスの違いに注目して意味を考える」習慣をつけてみるといいと思います。

また、同義語類義語辞典というものも存在します。これらを最低でも一冊は手に入れて自分の机に置いておき、引く習慣をつけるのもいいでしょう。

ここまで中国語の類義語を見てきましたが、中国語の類義語には「これはこう」といった明確な法則が存在しないのが現状です。これからも自分が気が付いたときには当noteやtwitterで発信していきたいと思います。

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