中国語の記事を翻訳してみよう①
当noteは一本目の記事からここまで、翻訳論や中国語の学習方法などいろいろな記事を皆さんに提供してきました。
じゃあどう具体的にどこに気を付けたらいいの?という疑問がわいた人もいると思います。
そこで今回からはスタイルを変え、一本の記事を通して翻訳するという実践形式にして、皆さんの翻訳のトレーニングのお手伝いをしていきたいと考えております。
私が皆さんに記事を提供しますので、まずは答えを見ないで別紙、または別ウィンドウでワードなどを立ち上げて翻訳をしてみてください。
1回目の今日は以下の記事となります。
楊潔チの「チ」の部分は難しい字なので、カタカナで書いてもかまわないです。
そして重要なのは翻訳にかかった時間を計測することです。
ぜひ時計やストップウォッチを横において計ってみてください。原文の原稿はパソコンの別ウィンドウで開いて見ながら翻訳するのもいいのですが、紙にプリントアウトして横に置きながら翻訳するのをお勧めします。このほうが視認性が高まり、字の取り間違えなどミスを減らすことができるからです。ではどうぞ。
どうでしたか?では私が翻訳した文章を先に公開します。これが「絶対正解だ」というものではありませんが、参考までに。
今回のテーマは「メリハリ」です。
より日本語らしい文章を訳出するためには、「どこからどこまでが動詞の範囲なのか」を文章中で示してあげることがとても重要です。なぜなら、中国語文は句点をたくさん並べて、ずらずら続くパターンが多いからです。
例えば次のような原文があります。
私の訳文も併記しておきます。
この文中の「支持」が、文の最後まで続くと理解する人は少ないでしょう。なぜなら途中、最初の句点の後ろに「愿」(~したい)という副詞がある関係上、そのまま訳せば「中国側はウガンダ側が~したいことを支持する」という文末になり、日本語としては「変な文章」になるからです。ここまでは皆さん理解できると思います。
しかし一方でそのまま何も考えないで訳すと、「中国側がウガンダ側が~することを支持し、ウガンダ側と~したいと考えている」といった文章になってしまいます。
実のところこれは、日本語としては一読しても「変な文章」にはなっていません。
しかし「支持し」「~したいと考えている」とすることで、「支持したいと考えている」と読者から理解される可能性があります。一方で原文において「愿」が修飾するのは「道路」以降の文節です。このためこのように読者が理解してしまうと、原文には即していない訳文となってしまいます。
だからこそ私は、自分の訳文で「~支持しており」、「~したいと考えている」と処理しました。これなら100%「愿」が「道路」以降の文節を修飾しているということが読者に理解してもらえます。
あとは(增进)「优势互补」でしょうか。これは「定型文」として覚えるといいかなと思います。
この言葉は「強み」の「相互補完」という修飾・被修飾の関係になります。もっというと「強み」で「相互補完」するという意味で私なら「強みによる相互補完」とするでしょうか。
ちなみに(增进)「互补优势」という語句もあります。この場合は「強み」を「相互補完する」とはなりません。逆に「互补(相互補完)」が「优势(強み)」を修飾する関係となり、「相互補完の強み」となります。
◇◇
この処理を頭に入れておいて、4段落目のこの文も見てみましょう。
これも訳文を併記しておきます。
先ほどの処理を元にすれば、3番目の句点の後ろにある「愿」の前後で文が一旦切れることが理解できると思います。私なら。「期待している。」といったように読点でいったん文をぶった切ります。その前には2つも文節があり、つなげてしまうと読者にとっては読みづらいからです。
問題は「乌方高度重视~进入中国市场」までの文をどう処理するか。
このまま「ウガンダ側は~重視し、~歓迎し、~期待している」としてもいいのですが、最初の文節と2番目、3番目の文節では少々意味合いが異なることに私は気づきました。
つまり「『ウガンダ側は~大いに重視している』ので、『投資を歓迎し』、『中国市場に入ることを期待している』のだ」という因果関係になっていると私は読み、最初の文節と2番目、3番目の文節を「~しており」で分ける処理を施しました。
◇◇
どうでしたでしょうか。この程度の長さの文だと、目標としては翻訳にとりかかり、見直しして、成果物として出すまで1時間ぐらいが目安になるでしょうか。会見記事だと定型文になることが多いので、慣れてくれば見直しを含めて1時間を切ることも可能です。ぜひ挑戦してみてください。
今回の課題文で他にどこか不明な点や質問したい点がありましたら、noteのコメント、またはツイッターで質問していただければと思います。
サポートしていただければ、よりやる気が出ます。よろしくお願いします。