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THE KILLERSを観にフジロックへ 20240726

表題が全てというか。
事実として大雑把にまとめるとそれだけなんだけれども。
東京から苗場、苗場から東京への道程はそう短くないので文章を書いてみる。

因みに券種は金曜ナイト券(今年から始まった試みらしい)。
簡単にいうと入場開始が18時になる代わりに一万円ほど安くなるというもの。
キラーズが観られればなんでも良かったのでこれを出演決定が発表された10分後に購入した。
SZAの突然のキャンセルから代打ヘッドライナー決定までのドタバタは各々調べてみて下さい。
まあまあドラマチックです。

まずは前日からの過ごし方。
意外と重要なのがここ。
晩飯はなるべく消化の良い食べ物。
早寝をするより当日寝溜めできるくらいの浅めの睡眠で。
と、書いたが楽しみすぎてよく寝られなかった。
こんなに楽しみになれるもんかねと我ながら思う。

当日の朝。
前述の通り眠りが浅いので結構に早起きする。
計画通りである。
寝ぼけ眼と呼べるほど眠たい感じではない。
ただひたすらに薄ら疲れている。
そして暑い。
そんな中、普段は殆ど食べない朝食を摂る。
これまたなかなか食べないパンを食べる。
するとどうだろう。
冴えない血液、その血糖値がグンと上がって異様な眠気に襲われる。
サウナで整うという表現をよく聞くようになって久しいが感覚的にはそれに近いのだと思う。
外的な刺激で鈍った身体を無理矢理チューニングする様な。
キマった脳みそでフジロッカー達が会場に赴く様を呟くのを眺めながら寝落ちする。
気づくと昼過ぎまで寝てしまっていた。
しまっていたと書いたものの狙い通りなのでそれで良い。
丁度シャワーを浴びて身支度をして一服すれば出発といった具合に上手いこと二度寝ができた。

午後に出発をしてライブを観た後は深夜バスで帰ってくる。
新宿に着くのは大体朝の6時とのこと。
フジロックというと何日も前から当日をどう快適に過ごすかグッズを買い揃えるのが普通というイメージだったが、この強行日程なら身軽で良いのではと考えた。
今回フジロックに行くにあたって新調したのはモバイルバッテリーと靴くらいであった。
後は枕元に転がっているUSBケーブルと最低限の着替えだけ持って家を出た。

ネットで予約した新幹線に乗り込む。
初めて新幹線をネットで予約したのだが(そもそも新幹線に乗る機会がそう無いのもあって)驚くほどスムーズであった。
当日現地での発券の必要がなくスマホをかざせばそのままホームへ入場ができる。
あらゆるチケットがスマホに集約されているというリスクはあるのだがそれを差し引いても便利な世の中になったものだ。
慣れないことをすると新たな発見が多い。

新幹線に乗っている間はひたすら外の景色を眺めていた。
移動時間がこんなにワクワクするのはいつぶりだろう。
会場に近づく事にワクワクしているのか。
生活圏から離れていく事にハラハラしているのか。
どちらでも良いのだがとにかく心がウキウキしていた。
数年前に単身韓国へ向かったあの飛行機以来の感覚だ。
フジロックはもしかしたら海外なのかも知れない。
これは共感を得る事があるのか分からないが高速で動く乗り物に乗ると少し興奮する。
子供が乗り物に憧れるあれとはまた違った類いの興奮。
一方向に移動させられてそれに抗えないという状況。
日の目を見ない小さなマゾヒストが自分の中にいるのを確かに感じる。

越後湯沢駅へ着くとまずタバコを一本吸う。
遠出して吸うタバコは美味いとかじゃない。
生理的欲求の下、火をつけるのだ。
そこに一興は無い。
改札を出て新潟土産を物色する。
というのも帰りのバスは会場発なので、新潟らしい物を見てまわれる機会は今回の旅でこれきりなのだ。
サラダホープという塩味の柿の種の様な物を買う。
日持ちして、軽い。
これだけで理由になる。
一通りの用事を済ませてシャトルバスの列に並ぶ。
往復で2000円、この会計さえスマホで済ませる。
そもそもシャトルバスに乗らなければ会場に辿り着けないのだが、払わなければならない金であれど、キャッシュレス決済だと金を払うという行為にあまりにも摩擦が無くて後々恐ろしくなる。
宵越しの銭を持ち越せない程金欠なのに自分は何をしているんだろうと虚無が顔を覗かせる。
それでも、これから伝説の生き証人になるのだと弱い心を奮い立たせる。
シャトルバスには待ち時間5〜10分程で乗る事ができた。
車内では忌野清志郎の田舎へ行こうが流れている。
これだよ、これ、と心がまた昂る。
あれよあれよという間に会場が視界に入ってくる。
この頃には楽しみという気持ちしか無くなっていた。

バスが到着した頃にはリストバンドの引き換えが始まっていたので入場はとてもスムーズだった。
直ぐにでも音の鳴る方へとも思ったが、無駄な行程を省くためまずはグッズを物色する。
キラーズのなんとも言えない気の抜けたTシャツとパーカーを購入した。
合計16,000円。
高えよ。
チケット代と買わんねえよ。
でも、買っちゃう。
これがファン心理というやつですね。

自分の中ではタイスケが決まっていてグリーンステージ一本勝負。
AwichからのTHE KILLERS、後は流れでという感じだった。
Awichの時間まで余裕があったので腹ごしらえをする。
Twitterで見て美味しそうだった、もち豚丼なる物を食べる。
そしてビール。
人生で初めてビールがあんなに美味いと感じた。
喉がカラッカラだったのもあったけど、あの開放感の中で飲むビールはなんて美味いんだろう。
正直普段からビールはあまり好んで飲まない。
苦いしお腹いっぱいになるし。
でも自分の中のビールの概念が変わった。
ビールはシチュエーションで味わう酒なのだ。
ビールを心から楽しめる閾値が自分は高めの人間なのだと気づく。
相応しい場所、時間に飲めばこんなに美味い酒はない。
ビール党の皆さんごめんなさい。

頃合いも良くなってきたのでグリーンステージへ移動する。
タイムテーブルを勘違いしていた事もあって到着してものの数分でAwichのアクトが始まった。
この数年で物凄い勢いでスターダムを駆け上がっている印象のあるアーティストだが、その印象のままのステージであった。
まず、地の声がデカい。
これは強い。
初見のヒップホップアクトって大概はリリックを細かく認識する事は難しいんだけど、とにかく迫力がそのまま説得力に結びついてとても素晴らしいアクトであった。
レペゼン沖縄をこれでもかと振り回す所もカッコいい。
本当にキラーズだけを目当てに来ているので、言葉を選ばずに言えばついでに観ていた状況だったのだが、さすがこの時間帯のグリーンに抜擢されるだけのアーティストだなと感心した。

Awichのアクトが終わるとステージ前方、モッシュピットエリアが客の入れ替えのタイミングになった。
雪崩れ込む様に客席前方に詰め寄り、さしづめ最前から3列目くらいの位置を確保する事ができた。
これであれば本人の体躯はおろか表情も恐らく見てとれるぞとウキウキする。
転換は1時間。
これがなかなか辛い。
幸いな事に天気は少し涼しいくらいで、人が詰めかけるエリアであっても汗が止まらないなどという事はなかった。
しかしながら、いいポジションをキープする為には屈伸もろくにできない狭いスペースでただただ立ちっぱなしの状態を1時間耐えなければならない。
昔はそんな事大した事なかったのだが、もう足の裏から腰、肩までまあしんどかった。
年齢も当然あるのだろうけど日頃の運動不足のツケがこれでもかと降りかかってきた。
早くステージを始めてくれという気持ちに先行して、早く俺をこの場所から連れ出してくれという不遜な飛躍が芽生え出す。
こんな気迷いもステージが始まれば吹き飛ぶのだろうという確信だけが身体を支えた。

そして迎えた21:30。
気づいてみたら周りはぎゅうぎゅうでファンが言うのもなんだが、キラーズってここまで入るの?という熱気と人混みになっていた。
今更ながら私のキラーズライブ遍歴を書くと、
・2013年 ディファ有明
・2018年 日本武道館(すかすかで切なかった。。)
・2024年 フジロック
こんな感じである。
キラーズが"無事に"来日してライブをしたのはデビューから数えて4度程なので、我ながら熱心に追っている方だと思う。
そんな経緯もあり、いちオーディエンスとして楽しむぞという気持ちの裏側に、本当にキラーズ盛り上がるんだろうかと謎の保護者目線が内心あった。
でも、この熱気ならそんな心配要らないのかも知れないと熱い気持ちが芽生える。
客電が落ち、いよいよ登場するキラーズ。
割れんばかりの歓声がこれほど似合う大人はそういないぞ、ブランドン・フラワーズ。
セットリストやライブの映像がネットに転がっているのでこの文章を読むよりもそちらを見ていただいた方が早いだろう。
キラーズは本当に現れた。
そして伝説のアクトとなった。
代表曲のオンパレード。
全曲がアンセム、巻き起こるシンガロング。
あまりにもいなたいブランドンの立ち居振る舞いは頭のてっぺんから爪の先までショーマンシップでいっぱいであった。
クールとは違うのだけれどもあんなにフォトジェニックなフロントマン世界中見渡してもそうはいないだろう。
途中客席からファンをステージに上げてドラムを叩かせるというサプライズも。
ワタル君、君も伝説だよ。
とにかく観ていて清々しい気持ち、そして何より楽しい!
音楽ライターでも何でもないので技巧的などうのこうのはそちらの方々に任せるとして。
キラーズすごいぞ!
めちゃくちゃ最高のライブだったぞ!
もう日本で人気がないだなんて言わせない!
あんた方歴史を作ったよ!
そんな感じである。

およそ100分のステージングが終わりグリーンステージ初日はクローズとなった。
脳みその95%くらいがキラーズによるドーパミンで溢れているのだが、5%だけ、ビール飲みたい、これが頭の中をぐるぐる回っていた。
流石にヘッドライナーという事もあり人も相当だったのでグリーンステージからの帰り道は牛歩状態であった。
一歩一歩進むごとにビール飲みたいが頭の中の占有率を上げていく。
ああ、ビール。
ビール飲みてえ。
とりあえず生って本気で、心の底から今なら言える。
その一心で飲食ブースへと向かった。
苗場ビール?みたいなお店を見つけた瞬間何も考えずに「生一つ」と注文する。
1日会計という業務に終始した事だろうお兄さんはこの時間になっても元気よく私の渇望する一滴を差配してくれた。
ブースの向こうから金色の一杯が手渡される。
それを黙って受け取り列を外れたその勢いのままにゴクリと飲み干す。
一気飲みは良くないと聞くな。
いやでもこれは麦味のポカリだ。
泡が張っているけどポカリなのだ。
イオンサプライ。
クゥーッ!!
心にも体にも効く。
ああ、美味い。
参りました。
今日をもって私はビール党にくだります。
最高の一杯でごんす。

一心不乱にビールを飲み干すともう帰りの事を考えなくてはならなかった。
フジロックに行く事を決めてからというものの夜をどう過ごすか決めあぐねていた。
レッドマーキーにこもって朝まで過ごすというのも一つの手であった。
電気グルーヴちょっと観たかったし。
ただ今回は理性が勝った。
恐らく夜通しは無理だ。
仮に強行をしてみても恐らく体調を崩すだろう。
どの様にして夜を乗り切るか調べながら検討した結果、25時発新宿行きの夜行バスが出ている事を知りチケットを買った。
正直コスパは良くない。
朝まで過ごして新幹線に乗る方が半額くらいまで安くなる。
しかし、そんなプランはこのなまくら体にはハナから破綻しているのだ。
夜行バスとは言え疲労困憊の体で乗ればいくらか寝られるだろうし、何より翌朝には帰宅できているという安心感に金を払った。
金を払ってしまった。
無理をしないって大人ですね。

そんなこんなでバスの発着場まで出来る限りの水分補給をしながら歩いた。
ステージから数えると3〜40分は歩いただろうか。
もう流石にへろへろのへろである。
最後の気力を振り絞ってバスに乗り込む。
発車のアナウンスから10分後車内は消灯した。
何も考えずとも寝落ちするだろうと高をくくっていた。
するとどうだろう。
身体はへろへろなのだが目蓋の閉じる気配がない。
無理もない。
あれだけの楽しい時間を過ごしたのだ。
精神的にはまだまだハイである。
寝溜めもした。
極め付けに普段飲む薬も飲んでいない。
眠ろうとする身体を邪魔する要素が幾つも立ちはだかる。
午前2時を過ぎた辺りで悟った。
これは眠れないやつだ、と。
ここまで来たら家に着くまで一睡もせずに、帰宅直で布団に飛び込む事にしよう。
そうだ、それがいい。
道中2回サービスエリアに停車した。
合計で4本ほどのペットボトルを空にした。
息継ぎをする様にタバコを吸う。
4時半くらいだろうか。
空が白むのをカーテン越しに感じていた。
そして5時には新宿へ着いた。
行きの道はあれだけ心ウキウキの道中だったが、帰りの道は勝算のない消耗戦の様だった。
あれだけキラキラした空間にいたのが嘘の様に新宿は通常進行である。
昨日のあれやこれやは夢だったんじゃないかと京王線に揺られる。
ようやく帰宅したのが5時半過ぎ。
家に帰るまでが遠足。
遠足って楽しかった思い出ないなとふと思った。
ああ、でも遠足の仕方を教わってよかった。
今、楽しいから。

今日はここまで。

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