見出し画像

【考察】猫の歯肉口内炎と栄養アプローチ

割引あり

noteに記事を書き始めてまだ2ヶ月目、記事を読んでくださった方より病院に診療希望の電話を頂きました。

投稿も読者もまだまだ少ないにも関わらず、私の記事を熱心に読んでくれている方がいると分かってとても励みになります。ありがとうございます。


望まれていた診療内容は、
『歯肉口内炎の猫に糞便微生物移植(FMT)を受けさせたい』とのことで、FMTによる症状緩和を期待しての相談でした。

FMTについての過去記事
FMTについての過去記事はコチラ⇧
[当院のFMT ,season2022-23]

生憎その方は遠方のため、通院治療は現実的でなく叶わなかったのですが、他に何か力になれる方法がないかを考えるきっかけを頂きました。

同じように治療に悩まれている方は多いかもしれない。
そこで今回は、標準治療以外に、
『症状の緩和になるかもしれない栄養アプローチ』
について考察してみたいと思います。

【※本記事は未承認の治療について記述するため、不特定多数への閲覧を回避したく、一部を有料記事とさせていただきます。】


猫の歯肉口内炎とは

猫の歯肉口内炎は、強い痛みによって食欲が低下したり、粘膜が弱るため血混じりの涎を流すなど、猫自身のQOL[生活の質]が著しく落ちてしまう非常に厄介な口腔疾患です。
猫自身だけでなく、痛みに悶える姿は飼主への心理的負担も大きく、また難治性(治療に反応しにくい)のため私たち獣医師もとても悩まされています。

単純な歯周病とは別物で、炎症の範囲が口腔内全体に広がって進行すること、歯石除去や抗生剤だけでは改善せず、ステロイドや免疫抑制剤を使わざるを得ないことや、全抜歯のような口腔外科処置が必要になることも少なくありません。(抜歯してなお免疫抑制治療が継続されることもしばしばです。)

どうしてそんなに治療に難儀するのでしょうか?

それは、『原因が未解明だから』です。

痛そうです😿

標準的な治療法

免疫の異常ということはほぼ確定的なのですが、その異常の原因が未だ不明で、
ウイルス、細菌、アレルギー、歯に対する自己免疫疾患など諸説ありますが長らく議論の域を抜け出せていません。(私は複合的なものだろうと考えています。)

治療法も、疑われる原因に応じて、
インターフェロン、抗生剤、鎮痛剤、ステロイド・免疫抑制剤、レーザー療法、間葉系細胞療法、全抜歯などが報告されています。
今ところ全抜歯が最有力ですが、絶対的な地位には至っていないのが実情です。

歯を全部抜く…。痛々しくてできれば避けたいですね。
治療効果が高くても第1選択にならないのは、飼主さんだけでなく獣医にも心理的抵抗があるのかもしれません。

西洋医学と免疫力

歯肉口内炎に限った話ではなく、西洋医学では、病気の原因を《外部因子》に求める傾向があります。
ウイルス、細菌、アレルゲン物質、これらは外からやってくるものですね。
自己免疫疾患は体の内側かもしれませんが、“自分の細胞を《異物》とみなして攻撃している”病気ですね。
なので治療の考え方も、外部因子を排除することがベースになります。

でもここで重要なのは、病気の発症には《内部因子》も関わっているということ。

インフルエンザが流行っていても発症しない人もいますね。
外部因子に暴露されても、内部因子が強ければ病気にならないということです。

この内部因子は【免疫力】とも呼ばれます。

ではなぜ西洋医学では免疫力にアプローチしないのか。
それは免疫があまりに複雑で因果関係の単純化ができないから。科学は事象の原因を求めるので、複雑系の取り扱いは苦手なのかもしれません。

免疫ムズカシイ。。

見落とされがちな栄養補給

同じく複雑系で、西洋医学に敬遠されがちな分野が【栄養】です。
もちろん栄養摂取基準などの分析は科学的ですが、それはあくまで健康な人の生活習慣病予防に推奨される栄養量という位置づけです。

病態栄養学という分野はありますが、まだ臨床に浸透しているとは言えず、獣医療ではなおさら未知の領域です。

病気を治すために必要な栄養はまだまだ手探りで経験則によるものです。
それでも、栄養がなければ治るものも治らない。
私は難治性疾患の根底には栄養不良があると考えています。

前置きが長すぎました。
ではここから、猫の歯肉口内炎の病態をもとに、私が考える『症状の緩和になるかもしれない栄養アプローチ』を紹介いたします。

【※本記事は未承認の治療について記述するため、不特定多数への閲覧を回避したく、以下は有料記事とさせていただきます。】《購読者特典あり》

ここから先は

2,357字 / 3画像

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?