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[店長日記]7/11| アイスとせんべい。

毎朝、店の扉を開けるたびに、ささやかな一日のはじまりに少しだけ心がおどる。格子窓しかない暗い土蔵に差し込む光に目をやり、珈琲を淹れる。今日があの頃になるときに、思い出せるように。

2024/7/11 Tue —

ついこないだまで、夜風が涼しく気持ち良かったのが、風すら生温く汗がにじむ季節になった。

開店準備の前。店の扉を開けたらコーヒーを最初に淹れる。もう1ヶ月も前から朝はアイスコーヒーになった。氷に注がれるあつあつの濃いめに淹れたコーヒーは氷を溶かしながら濃さも冷たさもちょうど良く整っていく。

冬には4歳になる上の娘はアイスが大好き。おやつの時間になると決まって「アイス食べたい」下の娘もつられて「アイス食べる」

「毎日アイスだから違うのにしようよ」と言うと、
「お外暑いから冷たいおやつがいいんじゃない」
と一丁前に提案してくる。
自分は氷たっぷりのアイスコーヒーを飲みながら、子どもにせんべいをすすめるのもと思い、「まあアイスか」となる。

初夏の暑さが厳しい日。店の玄関をあけた瞬間の「あー涼しい。」という感覚のおかげで、ふいに普段意識することのない細かな喜びにつつまれた。

涼しさの心地よさは対の暑さがあってこそ—。

店の中でも随所に対比がある。休日なんかのお客さんが多い日と静かな日。日中の喧騒と閉店後や開店前の静寂。苦いコーヒーと甘いケーキ。冷たいサラダと温かいパンやスープ。新しさと古さ。

どちらが良いということはなく、片方があるからもう片方の感覚を愛おしくさせる。ひとつに浸りすぎれば、もう一方を感じたくなる。

初夏の夕暮れ、家に帰りその日一日を楽しんだ娘たちの「おかえりー!」もまた対比の美しさを感じる瞬間だ。

生活はさまざまな対比にあふれている。忙しさと平穏、喜びと悲しみ、成功と失敗、晴天と雨、経験と純真、未来への希望と過去の思い出。

対比があるからこそ、日常の中で感じる一瞬一瞬が心に響くのだ。

対を楽しむということで言えば、おやつも煎餅。アイスもホットコーヒーでもいいかもね。

電気代が気になるから、いつもできることではないけれど、たまにはいつもより設定温度を2度下げて。
外は灼熱、中は少し冷えるかな。そこで煎餅とアイスコーヒー。アイスに飽きた頃に、対の対で楽しもう。

#創作大賞2024

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