不器用で愚かな人間がモルカーのニードルフェルトキットに手を出した結果

その愛くるしさから世界中の人々を魅了し続けた名作ストップモーションアニメ『PUI PUI モルカー』も、2021年3月23日でついに放送終了を迎えました。最終回と同時に多くのモルカー欠乏症患者が出現したことはみなさんもよくご存知かと思われます。
しかしそれを見越したように次々とモルカーグッズが発表/発売され、モルカーロスに陥った人々の心を癒やしているのもまた事実。公式からの供給がある限り、まだまだモルカーブームは終わりそうにありません。

先日発売されたばかりの自作キット『ニードルフェルトでつくる PUI PUI モルカー』もそのひとつ。羊毛フェルト製パペットアニメの公式キットというだけあって、予約開始と同時に即完売するほど話題性の高いグッズでした。
これを書いている現在も、公式オンラインショップをはじめに売り切れや入荷待ちのため購入不可のところが多く、その人気の高さが伺えます。

私も買おうかどうか悩みましたが、これまで私が100均で買い集めた羊毛フェルト関係の道具代＆材料費の総額（約900円）とモルカーの公式キット代（定価990円）がほぼ同じ金額というケチくさい理由から躊躇していました。それに加えて、羊毛フェルト工作にかかる手間やモルもどきの爆誕を考えると、どうしても気軽に手を出せないと思ってしまったのです。

……だったんですが、イオンの手芸用品売り場で見かけたが最後、無意識のうちに手に取って気付いたときにはレジでお会計していました。
あれだけ「値段がー」「羊毛めんどくせー」「失敗こわいよー」と言っていたにも関わらずこの身の変わりよう。やはりモルカーには人々の心をモル狂わせる魔力があります。

さて、話は変わってこのキットに同封されている素材は羊毛や手芸綿でなく、アクレーヌというアクリル繊維素材。羊毛と比べて弾力があって発色がきれいなニードルフェルト用素材です。

アクレーヌ | ハマナカ手芸糸

で、このアクレーヌなんですが、ものすっごく扱いやすい神素材。

普通、羊毛フェルトというと気合と根気で刺しまくって形にするもの――少なくとも私はそういう認識でした。しかしアクレーヌはそこまで必死にならなくとも、少し刺すだけですぐにいい感じに形が整います。そのため「同じパーツを作る」という難関作業もそこまで労を要することがありません。
わずかな量を手に取っただけでもしっかり色が付くのも良点。おまけに刺し跡や毛羽立ちも目立たない性質のため仕上がりもきれいです。

成形、着色、毛羽立ち……羊毛初心者を悩ませるこれらと無縁のストレスフリー素材アクレーヌとの出会いは、これまで100均の羊毛しか触ったことのない私にとってとにかく衝撃的でした。
それこそ感動のあまり、「アクレーヌヤバいマジヤバい」「こんなの使ったらもう100均の羊毛になんて戻れない」などとうわごとのように呟きながら作業を進めていったほどです。

そんな神様ハマナカ様アクレーヌ様のおかげで順調に刺し整えること約4時間。爆速で完成したものがこちらです。

PUI！ PUI！ モル！ カー！（モルカーのテーマ脳内再生余裕）

ちょっと面長になってしまったものの、それでも初代ポテｔ……モルもどきと並べると完成度は雲泥の差です。それどころか現存する商品の中でもっとモフモフでプイプイなモルカーグッズではないでしょうか。
ぬいぐるみ系グッズのサンプル写真を見ては「なんか微妙にモルみが足りてないんだよなぁ……」と感じてしまう辛口モルカリストの私でも納得のいくモルモルしさです。

横から見るとこの通り。羊毛がうまくまとまりきらず潰れたスイートポテトのような形になった100円ショップの羊毛製モルもどきに対し、純正キットのアクレーヌ製モルカーはムニムニとした弾力を維持しつつ小動物らしいフォルムにまとまっています。

アクレーヌは意外と多めに入っており、説明書通りに作ってもこれだけ余りました。刺し目さえ用意すれば、もう1モル作れそうです。

材料もたくさん入っていて、説明書や型紙もわかりやすい。アクレーヌの性質上、羊毛フェルトに比べて手間はそんなにかからない。パッケージ写真のクオリティに遠く及ばずとも「世界に一つだけのモルカー」が出来上がるので愛着がわきやすく、とにかくかわいくてしょーがない。
値段で躊躇していたことが馬鹿らしくなるぐらい満足度が高く、最高にプイプイな商品です。モルカーファンはもちろん、色や形もシンプルなのでニードルフェルト初心者にもモルカー布教を兼ねておすすめできるキットだと思います。

前回の記事で「いきなりこれ買って挫折するぐらいなら100均の羊毛買って練習しとけ」なんて羊毛玄人ぶったことを書きましたが、ここで撤回させてください。
アクレーヌは本当に扱いやすく初心者にもおすすめ……いえ、「針も触ったことのないド素人ならとりあえずアクレーヌ買っとけ！！」「羊毛に挫折した不器用な人間もとりあえずアクレーヌ買っとけ！！」「指先が器用な羊毛玄人もとりあえずアクレーヌ買っとけ！！」「もう細かいことはいいから全人類とりあえずアクレーヌ買っとけ！！」と。

そんなこんなですっかりアクレーヌのとりこになった私ですが、押し入れには100均で買った羊毛がまだまだ残っています。……これが全部アクレーヌだったらいいのに。