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海抜0m地帯で鍛えられたオランダの国民性 ~オランダ振り返り投稿7~

オランダ振り返り投稿其の六では、低地・平地のオランダで行われてきた国土計画を紹介した。前回参考にしたのと同じ文献に、オランダの国土の特徴故に生まれてきた国民性についても書かれていた。まさに「土地柄」である。以前の記事と被ってしまう内容もあるが、地形という観点から再度国民性を読み解いていきたい。

【ヒエラルキー(のなさ)】

水という、職業や身分に関係なく襲ってくる自然に立ち向かうためには誰が上だとかあーだこーだ言っている暇はない。皆が協力しなければならないのだ。真っ平な国土自体が階級との無縁さを象徴しているとも言えるだろう。

また、都市も分散している。オランダと言えばアムステルダムを思い浮かべる人も多いだろうし実際に首都なのだが、政治機能のほとんどはハーグという街が担い、そして貿易の中心はロッテルダムにある。これら3大都市は西海岸に集中しているとはいえ、ユトレヒト・アイントホーフェン・フローニンゲン・私の住んでいたアーネムなど、そこそこ大きな都市は全国に分散している。ゆえに、都市間格差はいくらか抑えられている。

【合意形成】 

ヒエラルキーのなさとも似ているが、水から身を守るためには、計画から資金繰り、工事、管理までを皆で協力してやらなければならない。なにせ、地域の誰かが水管理を怠ったら全員が被害に遭うからだ。

連携を取るために発展したのは、自分の意見を主張しつつも他人の意見もしっかり聞いて、皆が納得するまで粘り強く話し合う文化だ。

ルールを守る(守らせる)ために日本の五人組制度のような見張りの仕組みではなく、フラットな議論が基盤にある合意形成文化が発展したのは興味深い。ここについて深く考察はまだできていない(仮説、大歓迎!)

国民文化の指標

ちなみに、これらの文化的な違いは定量化されている。
例えばHofstedeというオランダの社会心理学者の6次元モデルの指標「権力格差」と「集団・個人主義」。下の図のように、オランダは日本に比べて権力格差が小さいことが分かる。また、個人主義(自己主張)の度合いが高いのと同時に男性性が弱く、つまり皆が参加できることが重要視される。

Hofstede Insights より。オレンジが日本、青がオランダ。左から権力格差、個人主義の度合い、男性性の度合い。

Erin Meyer の The Culture Map という本にも、似たような指標がある。これを眺めていると、オランダと日本はビジネス文化がほぼ正反対だということに気づくし、この記事で説明したオランダの国民性も理解できる。うち、4つの指標を紹介しよう。

Erin Meyer の The Culture Mapより、筆者作成

最後に

国民性はやはり、土地や気候とは切り離せないのだな、と今回調べていて感じた。日本の感性の豊かさや自然との向き合い方、例えば八百万の神々、いただきますと手を合わせること、武士道精神なども、日本の気候や地形から生まれてきたのではないか。

壊れてしまった部分も多いけれど、自然から離れてしまった部分も多いけれど、今でも稲穂はたわわに実り一面を黄金色に染めるし、新緑の香りがする風は吹くし、カエルの大合唱で目覚める朝もある。

たぶん、この日本で暮らす人々が、自然の声・心の声に耳を澄ませば、もっと豊かな社会になるのではないか。


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