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【本紹介】マネジメント職だけでなく、対人支援者にも読んで欲しい1冊!

部下との対話が上手なマネージャーは観察から始める
〜ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方〜


私も自著で聴き方に関する書籍を執筆する際に、さまざまな「聴き方」に関する書籍や資料を読んだ。
多くの場合「聴く方法」は多く書いてあるけど、「聴く方法を実践するために必要なこと」は意外と多くない。

たとえば、ミラーリング(相手と同じ仕草、行動をしてみる)を活用すると、親近感が強まり距離が縮まりやすいと言われるけれど、それ以前に相手の行動を観察して、それを鏡のように実践できる冷静さや気持ちの余裕がないことには、実践は難しい。
こうして文字で見る分にはできそうな気もするけれど、いざ相手が目の前にいて、話を聞きながら、「そういえばミラーリングって手法があったっけ、やってみよう」と思い出しながら実践する。そう考えている時点で相手の話の内容は半分くらいしか聞けていなかったりと、本末転倒になりかねない。

だから、そういった技法や手法はもちろん大事だけど、もっと大事なのは自分の状態がどうなのか、相手の状態がどうなのかをしっかりと観察・把握して、その状況に合わせて対処することだと、心底思っている。

そして、この本はまさにその「観察」についてとても詳しく、実践的に、わかりやすく書いてくれている、おすすめの本!

人の状態を色で把握する

この本のベースは自律神経系の学説「ポリヴェーガル理論」
自律神経の種類、交感神経、副交感神経という言葉は聞いたことがあると思う。
交感神経はアクセルのイメージ、副交感神経はブレーキやリラックスというイメージ。
ポリヴェーガル理論では副交感神経にもさらに2種類あって、急ブレーキのイメージのものと穏やかなイメージのものがあるとしている。

むむむ・・・なんだかだんだん難しくなってきた・・・

それをこの本の中ではアクセル全開のモード(戦う・逃げる)を赤のモード、急ブレーキのモード(固まる・動けなくなる)を青のモード、緩やかなブレーキのモード(安心する・つながる)を緑のモードと色分けしてくれている。

3色に色分けして、さらに、さまざまな状況の事例と一緒に、「このケースは赤のモード」「このケースは緑のモード」「このケースは赤と青のハイブリッド」という感じで、表してくれているので、とてもわかりやすいし、自分の状態にも当てはめやすい。

もちろん、今自分がどのモードにいるのかを観察・把握するために必要な身体感覚の観察のヒントもたくさん載っているので、身体感覚の観察が初めてでも、慣れていなくても自分がどのモードにいるのか、感覚として掴みやすい。

モードごとの対処法

さらにこの本には、各モード(ミックスされている時も含めて)ごとに、どういう対処方法があるか、エクササイズも紹介してくれているので、自分がどのモードにいるかに気づくことができれば、そのエクササイズを実践して緑のモード、いわゆる「いい状態」に戻すこともできる。

3つのモードは自分自身だけでなく、相手のことも観察して、相手がどのモードにいるかを当てはめてみることもできる。相手のモードがわかると、今自分がどんな対応をしたらいいかがわかるようになるので、お互い納得感のある時間を作ることができる。

例えば、今まで相手がなんだかイライラしてるな〜と感じると、「なんか感じ悪いな」とか「うわ、嫌だ」とか感情を揺さぶられて、まともに話が聞けなかったりする。そうすると相手はさらにイライラしたりして、結果的に「この時間はなんだったんだろう」となってしまったりする。

けど、イライラしてるな〜、赤のモードなんだな〜、じゃあどういう声の掛け方をしたらいいかなと、冷静になることができる。そうすると相手も徐々に冷静さを取り戻して、建設的な話ができるようにもなる。

「イライラ」は感情だからともすれば影響を受けやすいけど、「赤のモード」は客観的事実として認識するから、影響は受けにくくなるのだと思う。

対人支援をする人にもおすすめ

本自体はマネージャー職の方々を対象に書かれているけれど、カウンセラーや、コーチ、キャリアコンサルタントなどの人の話を聴いてサポートをする人にも、ぜひ、ぜひ、読んで活用して欲しいと思う。

対人支援をするとき、自分が緑のモード(いい状態)ではない状態、つまりは自分に余裕がない状態で、いい支援はできないから。
逆にいえば、赤のモードでも、青のモードでも、それに気づいて緑のモードに戻すことができたらいい支援はできるようになる。

対人支援の根幹は「目の前にいる悩んでいる人の力になりたい」だと思う。元々そういう思いがある人自体がいい状態であれば、極論スキルや知識なんかなくても、「なんとかしたい」一心で話を聴くだけで、いい解決策が見つかったり、いい声がけ、いい問いが浮かんだりする。
そこにスキルや知識の引き出しがあるから、さらにより良い支援ができる。

けど、自分に余裕がない時はそんな大事な想いより、講座で習った技法や理論、どういう声がけ/ 問いをしたらいいかの方に意識が向きすぎて、結果的になんかしっくりこない、反省だらけのセッションになってしまったりもする。

だから、支援する人がポリヴェーガル理論を知っておくのは大事だと、改めてこの本を読んで感じた。


マネージャー職の人はもちろん、対人支援をする人にもスキルアップをするために、まずこの1冊から始めてみて欲しいと思う一冊。


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