日記0401『やまおとこが下見に来た』
インターホンの呼び出しが鳴ったのでモニタを見ると、やまおとこが映っていた。
『やまおとこ』であって、『山男』ではない。
緑色の服の上にベージュのベストを付けた、やや肥満体形で豪快な笑みを浮かべた、探検帽の男。
ポケモンシリーズでおなじみ、たぶん第四世代ぐらいの『やまおとこ』が、ご丁寧に登山杖まで片手に携えて玄関前に立っている。
「何で?」
テンガン山とかイワヤマトンネルにいるんじゃないのか、アンタらは。
そう思いつつもインターホンの通話ボタンを押す。
「はい、■■ですけど」
すると、やまおとこはややわざとらしく驚いて見せ、
「おっとすみません。間違えました」
と、口だけで謝って通話終了ボタンも押さずにどこかへと去っていった。
やまおとこらしからぬオドオドした感じが、妙に印象的だった。
後になって思うに、彼はやまおとこのフリをした空き巣の下見だったのだろう。
空き巣犯は昼間に人の家のインターホンを鳴らしては、返事がない家を外出中とみてターゲットにすると聞いたことがある。
おおかた、恰幅の良い『かじばどろぼう』か『ロケットだんのしたっぱ』あたりが変装していたのだろう。
ポケモンバトルになったら、ドガースとかを使ってくるのだろうか。
まったく油断も隙もあったもんじゃない。
しばらく、外出中はドータクンに留守を頼もうかと思う。
(終)
※追記
この日記の内容に対して、
「やまおとこに変装してわざと印象的にふるまって見せたのは、あなたの投稿を促してSNSアカウントを特定し、外出時間や手持ちポケモンを割り出すためでは?」
などのご指摘を幾つかいただきましたが、その心配はありません。
今日は四月一日。
やまおとこに変装した空き巣も、ドータクンも、本当はいないんですから……
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