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【日記】RPGって何が面白いんだっけ?

ペーパーマリオとダメージ計算式

最近『ペーパーマリオRPG』(『ぺパマリ』)のリマスター版が出た。
youtubeで実況している人がいたので少し見たが、やっぱり凄く良い。

ドラクエやFFに直で触れるにはやや若い年代だった自分にとって、
RPGとはマリオストーリー(前作)やぺパマリのことだった。

紙をモチーフにしたお芝居めいた世界観。
立体的かつ発見に満ちた、飽きることがないステージ。
マリオ世界でありながら奇妙でシリアスなストーリー……

言葉にし尽くせないほどの良さがあって、本当に好きな作品だ。

その中でも、後に至るまで自分が影響を受けたのが戦闘システムだ。
『ぺパマリ』の戦闘におけるダメージは、

ダメージ=攻撃側の攻撃力ー防御側の防御力

というシンプルな式(俗称『アルテリオス計算式』)で定められている。
この計算式は『攻撃力』と『防御力』の差が1違うだけでゲームの展開がまるで異なってしまう、シンプルゆえにデリケートな式だ。
しかし、注意深くデザインすれば、1ケタの数字の組み合わせで奥深い戦闘を作ることができる。

実際、『ぺパマリ』ではゲーム開始時に2だったマリオの基本攻撃力が、
ゲーム最終盤になっても6までしか上がらない。
なのに成長の方向性やアクション、アイテムの使い方に工夫する余地があり、当時小学生だった自分は夢中になった。
シンプルなシステムは美しい。
ぺパマリのシステムは、自分にとって一つの指標となった。

あの感じを再現したかった

それから十数年後。
色々あってゲームブック(一人用TRPGのようなもの)を作るようになった。

その中で、『ぺパマリ』戦闘システムの美しさに立ち返り、
自作のゲームブック同人誌『夢幻のマダラメイア』に採用した。
アクション要素に当たる部分をサイコロの出目に落とし込むことで、
アナログゲームなりの面白い戦闘・成長システムを作れたと自負している。

後には、この戦闘システムに特化したゲームブック『DDD』も作った。

かなり計算して作ったので、戦闘自体は面白く作れたと今でも思っている。

しかし、『DDD』の評判は芳しくなかった。
自分の信じる『良いシステム』を抽出し、煮詰めたのにどうして?

冷静になってプレイし直してみると、確かに何かが違っている。
戦闘システムに特化してローグライト風に仕上げたつもりが、今まで作ってきたゲームブックシリーズ、ひいてはRPG元来の良さのようなものまで捨象してしまったような感じだ。

その『良さ』とは何だったのか。
戦闘システムに特化するのの何がいけないのか。
それが分からず、ゲームブックづくりからも離れてしまっていた。

……のだが、
youtubeの『ぺパマリ』実況を眺めていて、
あることに気が付いた。

戦闘ってそもそも……

実況者たちは『ぺパマリ』を心から楽しんでいた。
楽しんではいたのだが、しかし戦闘そのものを楽しんでいたわけではない。
むしろザコ敵は面倒くさそう。
ボス戦もテンションこそ上がってはいたが、
「気合を入れて一仕事!」というぐらいの感じだ。

あんなに美しい戦闘システムなのに!?
そうおもったが、考えてみれば当たり前のことだ。

そもそも『戦闘』は、プレイヤーにとっては目的達成を阻む障害だ。
それ自体は、楽しいどころかむしろストレスであり、
『障害を工夫して乗り越える』という体験の一部でしかない。

思い返してみればドラクエもFFもポケモンも、
戦闘は終わってみれば楽しかったが、
「面倒くさい」「ヤバい」「キツい」と思いながらやっていた気がする。

じゃあ、RPGの『面白さ』って、ストーリーや探索の面白さ?
いや、もっとフワッとしたものだったような……

RPGって何が面白いんだっけ?

そもそも、何が楽しくてあの頃RPGを夢中でプレイしていたのだろう。

初めて遊んだRPG(?)は、『ポケモン銀』だった。

今にして思えば、戦略性もへったくれもないプレイをしていた。
最初にもらったワニノコをオーダイルにし、相性関係なしにとにかくレベルとわざの威力とアイテムの物量でシロガネ山まで行った。
ポケモンの収拾要素も相性要素も、ほぼガン無視だ。

それでも、とんでもなく楽しかったのを今でも覚えている。
それは確かに、ポケモンを構成する各ゲーム要素が優れていて、
やめることなくプレイできたというのも一因であると思う。

しかし、根源的な理由は別のところにあった。

草むらに入れば野生のポケモンが出て来る。
どうくつではいつでもでてくる。
たまに珍しいポケモンもいる。
トレーナーと目が合ったらバトル。
ポケモンセンターで回復ができる。
昼と夜、曜日でいろんなイベントが起こる。
これだけ歩いたんだから、もうすぐ街なんじゃないか。

そういう細かいルールや出来事が積み重なった結果、
「あの世界を旅してるような気がした」
のが面白かったんじゃないだろうか。

そんな気がする。

思い返してみれば、そもそも『ぺパマリ』も
あの世界にいること自体が好きだった。

あちこちにキャラやアイテムが隠された、入り組んだ構造の世界。
毎回違うことが起こるストーリー。
分かりやすく奥深い戦闘システム……

要素は最初に書いたこととほとんど同じだが、
その結果として作り出される体験全体が良かったから、
パーツとなるこれらの要素をも好きになれたのだ。

どうやら自分は、その順番を間違えていたようだ。

考え方を変えてみる

表題の『RPGって何が面白いんだっけ?』という問いには、
明確な答えがない。
それは特定の部位ではなく、要素の組み合わせによって生じる機能にある。

強いて言い表すなら
ポケモンなら「旅してるような気分」
ぺパマリなら「絵本を読んでるようなわっちゃり感」
といった感じだろうか。

言葉にするとあまりにも陳腐でフワッとしている。
しかし、『面白い』体験は、そういう言葉に言い表せない感覚まで行って
初めて完成するのかもしれない。

収集、探索、育成、戦闘、物語……
ここ数年は作品を要素に分解して考えることばかりしていたが、
作り手の事情に固執して、原体験の味を忘れていたような気がする。

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