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ウキウキ気分でウインドウショッピング

ー バルセロナ きらきら太陽の真下のカフェで ー

◇このエッセイは二十年ほど前のバルセロナのお話しです◇

 ただ散歩に出かけたはずが、いつのまにか腕にショッピングバックをかかえていることがある。
それぞれのお店がウインドウという限られた中で、空間をうまく利用してあれこれと飾っている。規則正しく並べてあったり、色別で積み重ねていたり、季節に合わせてディスプレイされていたり。そんな知恵とユーモアが渦巻くウインドウに、私は磁石のように惹きつけられる。気がついたら「オラー!(こんにちは)」とドアを開け、ちゃっかりお店の中に入っているのだ。
 数あるお店の中でも一番惹きつけられてしまうのはアーティストたちが作った作品を扱っているお店『HIPOTESI(イポテシ)』。
私はこのウインドウに、ここを通るたびに魅せられてしまう。いつの間にか鼻の頭をべったりとウインドウにつけてまでも、ボーッとみつめていた時があった。小さなアクセサリーが飾られているので奥の奥まで見ようとすると、あまりの興味深さと好奇心でウインドウの存在すら忘れてしまう。店の人はそんな私をみて笑いをこらえていたに違いない。ウインドウにばっちりついてしまったオイリーな鼻の跡、私も笑ってしまった。もちろんお店に入って作品をゆっくり見たい、でもおそらく買わない。そりゃぁ、経済的に許されるなら欲しいけれどそうはいかない、、、。毎日お店に入って見てみたい。でも買わないのに何度も訪れるのはご迷惑だろう。でも、見たいのだ!が、このウインドウに鼻をつけてまで見てしまう行為になってしまっているのだ。とりあえず、入りたい衝動を抑えて我慢して2週間に一度の割合でここへは通っていた。何が好きって、このお店に飾られているアーティストの作品は、私の脳と心に膨大なエネルギーを与えてくれるのだ。カワイさがひょっこり顔をのぞかせていたり、抽象的モチーフが持つ想像する楽しみがある作品など、ここに集まって来るモノは、どこか青空のように気持ち良いバルセロナの香りがするのだ。

ここからは二十数年前からヒューッと時間をもどし、現在のことをかきます。

 残念なことに、大好きだったお店『HIPOTESIイポテシ』はもうない。
あれは確か、2008年のリーマンショックから営業が午前中だけになったり午後だけになったりと営業時間が不安定になったまま2、3年後に閉店してしまったのだ。実はリーマンショックの数ヶ月前にこのお店に飛び込みで、自分が作った布のバッグを置いて欲しいと頼みに行ったことがある。どうなるか最高に緊張したけれど、すごく気に入ってくれて、10点くらいは作って持ってきて欲しいと言われ、頭がどうにかなってしまうんじゃないかというくらい、うれしくて笑顔のまま頬骨筋をキープして街を歩いて帰ったことがある。
 その後、一度日本に戻って製作して数ヶ月が経っているうちにリーマンショックがやってきたのだ。再びバルセロナのHIPOTESIにバッグを納めに行った時にはお店の経済的事情で置けなくなってしまってごめんなさいと言われてしまった。
これについては落ち込んだけれど、素敵なアーティストの作品を日々見ているお店の人に、私のバッグを見て気に入ってもらえたことは、大切な箱に大事にしまっておきたい出来事なのであった。

それでは今日はこの辺で 良い一日を ボンディア!

HIPOTESIで買った指輪。イギリスのアーティストの作品


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