イズミ

自分語り

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お前って真面目だよね

何故か覚えている言葉がある。小学生の低学年のころ、机から落ちた女子のハンカチを拾ったら「触らないでよ!」と言われたことや、高校の文化祭で女子達と調理室で何かを作っている時、「洗い物だけしてればいいから」を言われたこと。今でも鮮明に覚えているということは、きっとそれなりにショッキングな一言だったのだろう。 そんなような言葉で、中学1年生のころ、男友達から「お前って真面目だよね」と言われたことを何故か今でも覚えている。僕はクラスではそれなりに道化役な方だと思っていたから驚いた。こ

    • 新宿紀伊国屋本店

      2016年の俺にとって新宿紀伊国屋本店はかけがえのない場所だった。いや、2016年だけじゃない。上京したあの日から今もずっとかけがえのない場所だ。 5限終わりの戸塚から上りの湘南新宿ラインは帰宅ラッシュの時間だったが下りに比べたら大して混んではいなかった。何なら軽く肩がぶつかるくらいのこの混み方は好きな子と物理的にも心理的にも近づくにはちょうど良いとさえ思えた。戸塚から俺のアパートがある横浜駅は3駅で着く。所要時間は15分くらいだっただろうか。電車に詳しい方なら分かるだろう

      • ずっとラジオに救われている

        1時過ぎまでスマホをぼちぼちいじっていて、そんな自分に嫌気がさして、枕元のラジオをつけた。乃木坂46のオールナイトニッポンが放送されていた。人の声を聞くと落ち着く。深夜ラジオ独特の閉鎖感と占有感。この感覚に救われてもう10年以上になるのか、としみじみ思う。ニートになったばかりの頃、将来への焦りと不安を誤魔化すためにswitchを買って朝までゲームをしていた。ずっと夜が続いて欲しいと思って目を覚ましているのに容赦なくカーテンの下から光が刺す。今日が明日になったとくさびを打つタイ

        • 春の海

           東京から来た先生が、卒業式には桜が咲いていると初めて聞いた時、ここが改めて北国であることを思い知った。  東北の三月は、雪の下に埋まっている蕗のとうを発見することによって春の華やぎの影を見る。  雪がちらちらと降り始め、それに気づくや天を仰ぎ、灰色のどんよりとした重い空が大きく不気味な顔を屹立させ、私たちと対峙する。その対照的で幾重にも重なる立体的な色彩に神秘を感じながらも、数キロ先の青空を認めると私たちがいかに神秘とはかけ離れた矮小的であるかを思い知らされる。翳りがちな

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        お前って真面目だよね

          【私小説】灯台

          船内にひとつだけある喫煙所には壁に手すりがついていて、ここが確かに船の上であることを思い出させてくれた。それだけでも旅気分にさせてくれる。 大学生が夜中に汚したのだろうか。喫煙所にはストロング缶のロング缶が潰されて灰皿の周辺に灰に塗れながら乱雑に置かれていた。 喫煙所を出てすぐ脇にある甲板に出られる扉のすぐ傍に足が見えた。倒れている。大学生ではない。齢40くらいだろうか。喫煙所を汚したのが大学生だろうかと疑っていた自分の偏狭な視野に辟易しながらも、明らかに酔っ払ってこんな

          【私小説】灯台

          みんな孤独を誤魔化しながら生きている

          何か夢とか目標があることを前提に話されることが苦痛だ。 何者かになるんじゃない。自分は自分。自分らしく。そんないかにも令和染みたことは逃げるための陳腐な言葉にしか聞こえない。 何にもなりたくない自分は息をしているだけで、ただ毎日が蝋燭のように溶けていくだけだ。 何かに収まるのはとても居心地がいい。 それは年相応の教育機関に属していたり、組織でも、肩書きでも何でも、何か言葉にカテゴライズされるものに自分がはてはまると気持ちが楽になる。 所詮はそんなものだ。 一生の愛を誓おう

          みんな孤独を誤魔化しながら生きている

          ここ最近の日記の散文

          寒さに追いつけず、未だに半袖短パンの生活を送っている。 案の定、風邪を引く。 スウェットを探し出し、着てみるものの布団の中で大量に汗をかく始末だ。 最適解が分からず結局夏服で過ごしてる。 大きな雲がいつもより早い速度で東へ走っている。 そろそろ夜明けだと思っていたが、朝日の時間を遅らせる冬の厳しさはいつまでも孤独であり続けさせる優しさも含んでいる。 コンビニで買ったパスタが袋の中でぐちゃぐちゃになっていた。 腕を出しながら寝ていたら寒気が腕を伝って胴体を冷やしていた。 布

          ここ最近の日記の散文

          お願いだから静かにして

          いつもの席は近所の高校の生徒らしき人に使われていた。 仕方がないから駅と線路を見下ろせる窓を正面にして座ることのできる背もたれのないカウンターに座った。 猫背だから背もたれのない席でいつものように長時間い続けるのは無理だと察したが、隣に誰かの気配を感じながら作業をするのは背もたれがないことよりも苦痛に思った。 数日前から小説を書き始めた。どこに行く時も色々なアイディアや言葉がコトコトと頭の中をよぎるが、具材だけあって調理器具がない台所のように、思いついた言葉やアイディアをう

          お願いだから静かにして

          肌寒い朝の散歩にて

          向こうはオレンジ色に染まりかけていた。 カラスも鳴いていない10月の明け方4時は、少し前と違ってまだ夜闇の気配がたしかにそこに存在していた。 番組終了まで残り1時間を切ってしまった深夜のラジオ番組を聴いて散歩をした。 線路沿いを果てしなく歩く。 3両編成の小さなローカル線ならではの駅間の短さは、着実に前に進んでいることを定期的に教えてくれる。 パーソナリティが選曲理由を話していた。 暗闇が空の端に追いやられている。 新鮮な太陽の光線を裸で浴びているようだった。 知らない

          肌寒い朝の散歩にて

          今さらだよ、そんな

          仲が悪くなる人は決まってとても仲がいい人だった。 高校時代や浪人、大学、社会人時代でそれぞれのフェーズで1人はいる。我ながら人付き合いが下手くそ過ぎて失笑するしかない。 疎遠になる理由は大体がしょうもないことで喧嘩だったり、何となく気まずくなったりで、こうしておけば、ああしておけばと思う。そうしていれば自分は男女関わらず何でも話せるような親友のような友達がいて、もしかしたらもう少し真っ当な人生を歩めたのかもしれない。 思い出は美化される。 今でこそ後悔があるが、あの時の怒り

          今さらだよ、そんな

          できるだけ素直でいたいから

          片手でスッと取り出したたった15枚の紙はどことなくぬるっとした感触があった。 そのたった15枚の紙切れは割りに合わない軽さで、その軽やかさが不思議でならなかった。 普段手にしない額だからか、手が震えていた。 そんな自分に驚く。きっと宝くじで大金貰ったら分かりやすく動揺してしまい挙動不審になるタイプだ。ATMの傍に置いてある封筒に入れて区役所へ向かう。 区役所がある駅に降り立つと何故だか晴れやかな気持ちだった。国のためにお金を払うことに気分が良くなるなんて国にとって都合いい

          できるだけ素直でいたいから

          何となくで住めてしまう東京の恐ろしさと優しさと

          東京には魔物が住んでいると聞いたことがある。 何となく生活できてしまうこの生ぬるい優しさ。 色々な境遇な人を受け入れる懐の広さが東京にはある。 就職したいけど組織に向かない性格なのは幾度の就職で痛いほど分かっている。 お前は会社で働かない方が向いていると友達から言われるのも何となくわかってしまう。でもフリーランスでやっていくほど、何か秀でているものがないから現実は厳しい。 やりたいことだとか、好きなことで食っていくのは一握りの人だってことは頭では分かっていても諦めきれない往

          何となくで住めてしまう東京の恐ろしさと優しさと

          自己嫌悪に陥っても料理をしてみたら意外と気持ちが楽になった

          雨が降っていた。今日は本屋に行こうと思っていたのに、面倒になって家に引きこもることにした。昨日買った楽しみにしていた本を読んだが集中力が続かない。本屋に行かない代わりに久しぶりにAmazonで本を注文した。明日の午前中に来るらしい。先進国に住んでいてよかったと思った。注文してしばらく経つと「お支払い方法を更新してください」と連絡がきた。更新したと思ったデビッドカードがうまく更新できていなかったらしい。社会生活を送る上でみんなが当たり前にできていることがどうして自分はできないん

          自己嫌悪に陥っても料理をしてみたら意外と気持ちが楽になった

          きっと居場所が欲しくて音楽を聴いているのかもしれない

          煙草を押しつぶした。 火種が消えていなかったらしく、灰皿の中で煙を立てている。 消し直そうとしたが、さっきまで口に触れていた箇所が灰に塗れていたから触るのをやめた。 喫煙者とはいえ煙草の匂いは苦手だ。 ジャズが聴けて煙草が吸えるこの店は重宝している。 さっきまで隣に座っていたカップルはバイト先の客とスタッフの悪口を言いながら出て行った。 座っている席のすぐ脇にある本棚から雑誌を取り出してジャズの記事を読む。聴いたことない曲名と聞いたことのないアーティスト名が羅列されている

          きっと居場所が欲しくて音楽を聴いているのかもしれない

          嫌いな奴が幸せになって欲しくない

          嫌いな奴がいる。 苦手な人は?と聞かれたらそいつの表情から行動まで一挙手一投足を頭に思い浮かべて話す。 そういう奴いるよね、と同意されて話が盛り上がり更に酒が進む。俺だけじゃない。あいつみたいな人間はみんなから嫌われるんだ。安心する。 しかしながら嫌いという感情は好きよりも厄介に心にこびり付く。 好きはなんとかなる。興味を自発的に逸らしたり、諦めたり、時間がなんとかしてくれる。 嫌いは厄介だ。時間が何とかしてくれるだろうが、執拗な僕の場合は年単位で時間を要する。 ふと見かけ

          嫌いな奴が幸せになって欲しくない

          無能社会人2年目の憂鬱

          仕事が全く手につかない。 この4連休の間に溜まったメールを返し、iPhoneのアプリのアイコンの右上に書かれた「6」という数字に絶望してため息を吐きながら6件全てに電話を折り返す。 そして午前中に溜まっていたほぼ全ての案件を終わらせる。 探せば嫌と言うほど出てくるが、今日やらなければならないという仕事がないから、取り敢えずどこかへ行こうと思う。率直に言うとサボりにどこかへ行きたいと思ってしまう思考が癖になってしまっているのだ。 それでもやはり幾分かは罪悪感は抱くので、せめて

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