見出し画像

肉肉しい夜がヒュイゴ!〜友人万歳物語〜(5/28)

二十歳にパリで仲良くなった友人と再会した時に「今日珍しくお肉食べたいんよね」と言ったら「え!ヒロコがお肉!珍しいな、どうしたん?」と返ってきた。
まさか想定外の私の発言に近場のお店が見つけられず、結局安定のイタリアンに行った話は以前に日記でも書いたと思う。

その翌日、友人の彼女から「ねぇ、ヒロコ。私もずっと会いたいと思ってて、彼にも言ってたんだよ!次は三人でご飯食べよう。ヒロコはお肉が食べたいって聞いてるよ。」と連絡があった。

あんなに色々と真面目な話をしたのに「お肉が食べたかったらしい」という情報のみが彼女に伝わっているってなんやねん!と若干恥ずかしい気持ちと"ちがう"という気持ちに苛まれたが(無論、軽口です)ここは素直に、それではお肉を食べようと提案に乗った。

フランスのテレビシリーズなど小さい頃から活躍している人気の女優さんらしく(私はテレビを観ないから知らなかったのだが)華があってとっても可愛らしい人。気取らず、明るく色んな人を繋いでいくポジティブなオーラは私もとても好きだ。ジョークを言ったり、すぐ踊り出したりする姿は小さい女の子を見ているようでとても微笑ましい。(実際、私よりだいぶ年下なのでその影響もあるかも)いずれにせよ、そんな向日葵とか流れ星みたいな子が近くにいるのは友人として嬉しいものだ。
友人にはなるべく幸せでいて欲しい。

さて、時間通りに到着するのは当然、私のみ。「◯◯の名前で、三人で予約してるよ」と店員さんに伝えるも、そんな名前はない、しかも三人の予約は一組だけのはずなんだよなぁ、と出鼻を挫かれる。

うっかり失念していた彼女の苗字の方で再度検索してもらったら、五人での予約で入っていた。
基本的に私は、少人数でのディナーの時に勝手に他の人も呼んでいるという状態が好きではないのだが、"友人同士のディナー"の時、フランスではわりと勝手に色んな人が呼ばれている印象だ。パートナーを断りもなく当たり前に連れてくることも珍しくない。(これに関しては、結構二人の関係性とか性格でこちらの居心地が変わるので、予め伝えてほしい派です!)

とは言っても当日ならば、それはそれで切り替えてテーブルに座るようにしているのだが、全然気の合わない人がいるとイマイチ楽しめない事もある。この辺りは、私の日本人的な感覚だろうか、もしくは国別の文化ってよりもっとパーソナルなものなのだろうか。

さておき、今回は本当にめちゃくちゃ面白い人たちばかりだったので杞憂が始まる前に終わっていた。そういうマッチングの嗅覚も、そういう彼女だから優れているのかもしれない。いずれにせよ、初めましての二人も役者さんとミュージシャンだったから、話題の共通点も多くて話しやすかった。

来年初めてパリで行う確定申告やVISAの更新のことで、最近は暇さえあればどうやってお金を稼ぐかばかりに支配されがちだった。
本来、あんまりお金に生活や思考を占領されたくなくてミニマルに暮らしているタイプなので、お金の話題に生活が侵食されていることが自分の予測以上に精神的負担になっていたのだろう。

皆んなそれぞれに繊細さを抱えて悩んだり傷ついたりしていても、なんだかんだポジティブに生きていて、それを共有し合える仲間とゲラゲラ大笑いすることで、そこにようやく自覚的になって少し目が覚めた気分だった。

彼女の最近のお気に入りリストに仲間入りした今日の"お肉のレストラン"は、その名の通り、初期ギャスパー・ノエの『カルネ』を彷彿とさせるようなお肉屋さんの奥に広がる空間だった。お肉屋さんのスペースに牛、豚、仔羊がパーツ毎にずらりの並べられ「私はこの部位を、このくらい食べたい」と指名して焼いてもらい、奥で頂くシステム。少し回転寿司的な発想に近いかもしれない。
そういうプロセスがあってモノを食べるという行為に、豊かさを感じた。

普段90%はベジタリアンって感じの生活を送っているのであまりの肉肉しさにちょっと圧倒されながらも、散々迷って選んだ仔羊はシンプルな美味しさ。
友人たちと過ごしている時は、健康がカロリーがと真面目になりすぎないで、美味しく楽しくお腹いっぱいに食べたいと思っている。
人と摂る食事は、生理行動というより経験だ。

それにしても、薄味でお馴染みの私なので、外食は味の濃さにすぐ臓器がヘタってしまう。ドレッシングやソース、ポン酢にケチャップなどなど、市販の調味料は買わないし、サラダを食べたらドレッシングのケミカルな酸っぱさに舌が痺れるし、ソースは素材の味がよく分からなくなるので好まず、色々と不便な人間である。なにより野菜という存在自体が目にも舌にも大好きで、なるべくそこから遠く離れずにいたいという願望もあるかもしれない。

どんっと出されたステーキではあったが、一緒に運ばれてきた調味料たちを足さなければ、むしろ素朴(素材勝負)と言えるので、この点は下手にベジタリアンのお店に行くより好印象。
そして大好物のじゃが芋をピュレやポテトフライの形で楽しめるのも、フランスでお肉を食べる醍醐味だ。

深夜にようやくお店を出てから、友人の犬の散歩がてら皆んなでウロウロして今日はおひらき。

笑うって大事だし、友人って大事だね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?