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山の天狗

昔話を一つ。出典は若い頃に読んだ民話集です。


昔あるところである男が柴刈りに山に入ったところ、丘の上の開けた場所で天狗たちが博打をしているのを見つけた。男は木の陰でこっそり覗いていたら、ある天狗が「なにやら匂うぞ」と言い出して、見つかってしまった。男は天狗たちの真ん中に引きずり出されて、「おまえは何者ぞ」と問い質された。


男は人間だと答えたら食い殺されると恐ろしくてたまらなかったが、はったりを効かして「儂は八幡大菩薩ぞよ」と言い切った。すると、天狗たちは素直に「これはかなわん」と皆飛び去ってしまい、男は残った博打のための宝を持ち帰った。


 その話を聞いた隣の男も天狗の宝を手に入れようと山に入ったら、やはり天狗が博打をしていた。そして、匂いで見つかり天狗たちの真ん中に引きずり出されて、「おまえは何者ぞ」と問い質された。


男は「儂は伊勢の神様ぞ」と答えるつもりだったが、大勢の大天狗たちににらみつけられて怖じ気づいてしまい、「儂は、イセ・伊勢エビぞ」と言い間違えた。すると、天狗たちは、伊勢エビならうまかろうと男を食べてしまったそうな。

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