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Ⅵー2.ケアマネさんたち

母を担当するケアマネさんたちは、すごい人たちだ。母が認知症だと診断され、その連絡が地域の連携センター(とそこをベースにしているケアマネさんたち)に届いて以来お世話になっている。

母のケアプランを立ててくれて、介護事業者との橋渡しをして実家にヘルパーさんが来てくれるようにしてくれるのが仕事の概要だが、母のケアマネさんたちは、なんというか人間としてとても賢明な人たちなのだ。以前別の記事にも書いたが、私が実家の食事作りをしていることを知ったときには「大変だからデリバリーしてもらうほうがよいのでは?」と声をかけてくれた。

弟の入院と母の病気で手が回りきらない私に対して「家族の支えは大切だけど、すべて家族でやろうとしなくてもいい」と言ってくれたこともある。普通はもっと家族があれこれやっているだろうし、私のように気が回らないところだらけでは気になるだろうと思うのに、家族のストレスになるようなネガティブなプレッシャーをかけられたことが一度もない。

そもそも年中入退院を繰り返す弟と、認知症の母が同居しているのだから、弟が入院したら、母はどうなるのかという難しさは常にある。弟が意識を失って倒れると母が長年の習慣で救急車を呼ぶ。そして真夜中に救急車に同乗して車で何十分も離れた病院に行ってしまうことは前にも書いた。姉である私に連絡することなど考えない。私が弟の入院に気づいて、仕事の予定をやりくりして実家に飛んで帰るのは最短で翌日、無理なら数日後だ。

その間母がどんな事故にあうとも限らないし、母の食事をどうやって用意するかも問題になる。弟には入院で必要になるものを届けなくてはならない。母は病院で「これと、それを持ってきてください」と言われると、その場ではわかった顔をして聞いているが、家に戻ると何をすればいいのかわからなくなって途方にくれている。病院にいる弟は、母の病気を理解しているのかいないのか、いくら私が諭しても、認知症の母に電話をして「〇〇を病院に持ってきて欲しい」とか「〇〇を家に持ち帰って洗濯してほしい」と頼み事をやめない。

こんなカオスのような実家に対してケアマネさんたちは、実に的確な支援をしてくれる。時折母を、弟の病院に連れて行ってくれたり、弟の手回り品を弟の部屋からかき集めて病院に運んでくれたりだ。実家の家事のサポートに入ってくれるヘルパーさんに対しては、弟の生活を理解したうえで、作業内容を細かく指示してくれる。ヘルパーさんが母を支援して家事を回してくれるおかげで、弟も間接的に必要不可欠な手助けを得ている。ケアマネさんたちが、母と弟の生活だけでなく、二人の性格もよく把握したうえで、どこにどのような支援をするのが妥当か判断してくれるからこそ、うまくいっている。

コロナのワクチン接種のときも、「地元で基礎疾患のある患者の予約が始まった。自治体のホームページを見て」と素早く連絡をくれた。ケアマネさんたちが母の視点を通して弟にも注意を払ってくれるから、私も手遅れにならずに手を打つことができていることが多い。

誰にでもあたたかく広い心で接してくれて、認知症の母のわがままや気まぐれにも上手に合わせながら、実にうまく母の行動をリードする。どうしてこんなにすごいのだろうといつも感服するばかりなのだ。

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