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アニメ『葬送のフリーレン』雑感 ~文学のような名作~
アニメ『葬送のフリーレン』を観た。その感想のような批評のような雑記。
ざっと感想
魔法が出てくるファンタジーの世界観ではあるけど、アクションシーンがたくさんある怒濤の展開はない。(後半はけっこうあるけど)。どちらかというと静かな物語。早く先が観たい!となるアニメではなかった。でも、決して退屈さはない。
人物描写や心理描写が細かく、すごく文学的でリアリスティック。長く心に残るような素敵な作品。(余談だけど『蟲師』というアニメと近しいものを感じた。)
「葬送」
「葬送」という言葉はあまり馴染みがない。こういう意味らしい。
遺体を墓まで葬り送ること。また、葬るのを見送ること。送葬
弔う、みたいなニュアンスかと思っていたが、微妙に違うようだ。「葬る」と「弔う」の違いを考えてみると分かりやすい。
「葬る」も「弔う」もどちらも死者に対して行うものですが、「葬る」はあくまで“埋葬する”という行為のみを指す言葉です。一方、「弔う」は“慰める”という意味合いが強く、死者への行為だけではなく遺族への行為や、死を悼む感情を含む言葉と言えるでしょう
葬るの方は感情を含んだ言葉ではない。「葬送」もしかり。フリーレンは感情の起伏が少ないキャラクターだが、『葬送のフリーレン』は、そんな彼女とこの物語を適格に表しているタイトルだ。
長寿のフリーレンの後悔
フリーレンは寿命が千年以上あるエルフだ。なので、人間と時間の感覚が違う。人間の仲間が10年「も」旅をしたと感じるのに対して、フリーレンはそれを短いと言う。
寿命が長いので、彼女は仲間たちを常に見送る側になる。1話では仲間のヒンメルが寿命によって亡くなる。葬儀の際フリーレンは参列者に言われる。“悲しい顔ひとつしないなんて、薄情だね”。
この葬儀をきかっけに、フリーレンは彼のことが何にも分からなかったと後悔し、人という他者を知るために新たな旅に出るわけだ。
新しい仲間と追憶
旅をするにあたって、フェルンというかつて戦災孤児だった少女が新たな仲間(弟子)となる。彼女もこの作品のキーパーソン。フリーレンと共にこの物語を経て成長する。
フェルンとの旅とクロスフェードするように、ヒンメルたちとの記憶が随所に挟まれる。追憶というか、過去の記憶を捉えなおすことによって、フリーレンの他者に対する態度が変わっていく。
特に後半の最終話『また会ったときに恥ずかしいからね』の最後が象徴的だ。とても美しい終わり方。観てない人は観てみてね。
不器用すぎる登場人物たち
フリーレンも大概だが、不器用なキャラが多い。フェルンもそうで、彼女はすぐご機嫌ななめになる。まるで子供のように。
最終話では、とある手練れた老魔法使いが「悪名でもいいから師匠が歴史に名を残すため」という理由で、フリーレンを打ち取ろうとする。それに対するフリーレンの返す言葉がいい。
まったく…戦いしか知らない魔法使いは不器用な連中が多いんだから。歴史に名を残す必要なんてないよ。
そして、老魔法使いの不安は杞憂だったことが、フリーレンの口から告げられる。彼の師はこう言っていたという。
たくさんの弟子を取ったよ。どれも私の足元にも及ばないままほとんどが先立った。だが、不思議なものだ。気まぐれで取ったはずの弟子なのに、一人一人の性格も好きな魔法も鮮明に思い出せる。フリーレン、なぜか私は弟子をとって後悔したことは一度もないんだ。たとえ歴史にその名を残せずとも。
「自分の弟子にすれ素直に気持ちを伝えられないんだ。ホントに子供みたいな人だよ」とフリーレンは返す。その直後、フェルンが現れる。フリーレンの放った言葉は彼女自身にも当てはまることを示唆しているようだ。
全体を通して不器用なキャラクターが多いが、その不器用さがどれも愛おしいくなってくる。
小さい日常の中に
どちらかというと、世界観というマクロなものより、キャラクターの心情や日常の機微というミクロのにフォーカスが当てられている作品。
ちなみに、フリーレンはガラクタや何の役に立つか分からない魔法を集める趣味がある。そういうものが人生に彩りを加えてくれる。長寿のフリーレンはそんなことを示してくれている気がする。
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