日本の左翼とQアノンの急速な融合
しばらく前から、立憲民主党の原口一博議員の陰謀論的発言が問題になっている。彼は頻繁に「DS」の入ったツイートをしているが、この「DS」はトランプ系陰謀論者「Qアノン」が「闇の支配者」というような意味合いで使う言葉だからである。
これが原口氏一人の暴走であればある程度看過できるのだが、問題は野党は末端の支持層から国会議員に至るまでQアノンに侵食される傾向が見える、ということである。以下少し確認していこう。
親ロシア・プーチン
朝日新聞が報じている通り、親ロシア・プーチン支持は現在のQアノンを特徴づける一つの要素と言ってよい。原口氏も「ロシアへの制裁はディープステートの陰謀」という、Qアノン系陰謀論者どまんなかの発言をしているが、Qアノンの親ロシア言説にはロシアの工作が関与していると現民主党政権に指摘されている。
日本では、左派が伝統的に反米主義を取り、反米シンパシーから親ロシア・プーチン支持を表明することが頻繁に見られる。例えば琉球新報の乗松聡子が度々ロシアのプロパガンダメディアであるスプートニクを引用しているのは知られている。また先日のG7で「広島サミット粉砕」と公言してデモを行っていのが中核派だったが、反戦・反核を標榜してきた団体・人物にロシアの侵略戦争を擁護するものが相当割合見られるし、その一部がスプートニクを引用しているあたり、Qアノンと出元は同じである。
私がロシアの侵略開始直後にロシアに対する態度の分類図を作ったことがあるが、この図で底辺あたりにいるアカウントは、モーフィアスアイコンのQアノンアカウント等を好意的にリツイート・引用したのを確認したうえでそこに分類しており、その中には反差別の運動家として有名だった人物もいるし、鳩山由紀夫・「新右翼」一水会・孫崎享はコラボしており、一水会/鈴木宗男と内田樹がよくつるんでいるようで、一体化が見られる。
ドイツでも代表的左翼政党の緑の党はウクライナへの軍事支援に積極的で、極右のAfDが親ロシアである。この点に関して日本の左派は本当におかしな態度を取っているように思われる。
反ワクチン
Qアノンで目立った主張の一つは反ワクチンである。「神真都Q会」はコロナ禍中での反ワクチン運動で悪名を広めた。原口氏もワクチンをめぐる発言で日本ファクトチェックセンターから取材を申し込まれている。
原口氏以外の立憲議員(中島氏)からもイベルメクチンの承認薬化を求める質問が出されているが、イベルメクチンをコロナに使えという主張はQアノンのそれとされる。
立憲民主党では、あべともこ氏が子宮頸がんワクチン反対運動をしていたなど、反ワクチン的ムードがもともと存在していた。あべ氏は新型コロナワクチンでも慎重姿勢を取ったため、党内からも苦言を呈されており、流れとしては、この反子宮頸がんワクチン運動がQアノン系反ワクチン論と合流した格好だろう(末端レベルでは女性左派にイベルメクチン傾倒が見られる)。
限界ネトウヨと同質化する野党コア支持層
最近、こども家庭庁がJリーグと会談したニュースが、野党支持者の間で「こども家庭庁関連予算5兆円」と結び付けられ、ありえない利権だ、無駄遣いだ、批判的にバズったことがあった。
この「5兆円のこども家庭庁関連予算」というのは、そのほとんどがこども家庭庁がなくとも存在する保育関係や児童相談所関係の予算で、主体としては厚労省が使うようなもので、こども家庭庁「関連予算」としてリストだけしているものに過ぎない。
これと似たようなことは実は過去にもあった。男女共同参画に関する予算が9兆円リストされていたことに対して、ありえない利権だ、無駄遣いだと限界ネトウヨ層が騒いだというものである(リンク先記事でも防衛費と比較するツイートがある通り騒いだのは限界ネトウヨ層である)。ただこれもファクトチェック記事にある通り、男女共同参画局の予算ではなく、厚労省や文科省が扱うような育児・介護関連の予算を「関連予算」としてリストしたものに過ぎない。
今の野党のコア支持層は、限界ネトウヨと同じレベルだとかそういう話を超え、全く同じことをやっている。この例では顕名の東大教授のみを取り上げたが、もはや「集団的謝ったら死ぬ病」が発病するくらい多量のツイートがされているので、この間違いを突き付けて撤回する人がどの程度いるか疑問にある水準にある。
最近のtwitterで導入された新機能「コミュニティノート」について、「本来トランプ系Qアノンを抑制するために導入されたのに日本では左派攻撃に使われている」云々といった意見が見られたが、見ての通り、立憲の原口議員は外形的基準で完全にQアノンに分類される発言をずっとしているし、支持層は以前にファクトチェック記事を出されていたのとまったく同じ陰謀論を今やっている。ファクトチェックにQアノン・限界ネトウヨを抑制する機能を期待しているのであれば、それとの融合や同質化が急速に進みつつある日本の左派がファクトチェックの対象になるのは当然なのだ。
以上の通り、今野党のコア支持層から議員に至るまで、Qアノンや限界ネトウヨとの融合が想像以上のペースで進行している最中である。願わくは、心ある野党支持層の方がこの記事を読み、野党支持層の間に警鐘を鳴らしてくれることを祈る。
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