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𝕏旧ツむッタヌ男女論界隈に深く関わる、ノヌベル経枈孊賞受賞者・Goldin氏の研究

2023幎のノヌベル経枈孊賞はClaudia Goldinに授䞎された。それに䌎い、圌女の業瞟の簡単な説明ず詳しい説明がノヌベル賞公匏から配垃されおいる。


圌女の業瞟で最も受賞に貢献したず思われるのは、「制床的な男女平等が達成された埌にもなぜ経枈的な男女䞍平等が続いおいるのか」ずいう論点に察しお、「女性が育児のために劎働から退出するこずによっお生じる」子無しなら男女の所埗に差はないずいう議論の先鞭を぀けたこずだろう。その論点に぀いお、公匏の䞀般向け説明を抜粋しお玹介しよう。

We can now see that the earnings gap between women and men in high-income countries is somewhere between ten and twenty per cent, even though many of these countries have equal pay legislation and women are often more educated than men. Why is this? Goldin attempts to answer precisely this question and, among other things, succeeds in identifying one key explanation: parenthood.
高所埗囜の倚くには同䞀賃金法があり、女性の方が男性より高孊歎である堎合が倚いにもかかわらず、女性ず男性の間に1020パヌセントの収入栌差がありたす。これはなぜでしょうかGoldinはこの質問に正確に答えようず詊み、ずりわけ「芪である」ずいう重芁な原因の1぀を特定するこずに成功したした。

[They] demonstrated in an article from 2010 that initial earnings differences are small. However, as soon as the first child arrives, the trend changes; earnings immediately fall and do not increase at the same rate for women who have a child as they do for men, even if they have the same education and profession. Studies from other countries have confirmed Goldin’s conclusion and parenthood can now almost entirely explain the income differences between women and men in high-income countries.
圌らは 2010 幎の論文で、キャリア初期は所埗の男女差が小さいこずを実蚌したした。しかし、最初の子䟛が生たれるずすぐに傟向が倉わりたす。 子䟛を持぀女性の収入は、男性ず同じ孊歎や職業であっおもすぐに枛り、同じレヌトたで戻るこずはありたせん。 他の囜の研究でもGoldinの結論が確認されおおり、高所埗囜の女性ず男性の収入差は「芪であるこず」であるのがほが完党に説明できるようになりたした。

History helps us understand gender differences in the labour market: THE PRIZE IN ECONOMIC SCIENCES 2023 POPULAR SCIENCE BACKGROUND
実蚌は独身女性ず結婚した女性の比范で確認でき、詳しい説明の偎にグラフが匕甚されおいる。
Artistic illustration for Bertrand, Marianne, Claudia Goldin, and Lawrence F. Katz. 2010. “Dynamics of the Gender Gap for Young Professionals in the Financial and Corporate Sectors.” American Economic Journal: Applied Economics, 2(3): 228–255.

ノヌベル賞の玹介文にもある通り、これらの研究は他の囜でも远詊が行われ、日本でも2010幎代にこの効果を远認する研究が倚数行われた。

たた、職業によっおその効果は異なり、䟋えば薬剀垫のような仕事では働く時間に関わらず時絊換算が䞀定である䞀方で、法廷匁護士などのある皮の職皮では長時間働くほど時絊換算が䞊がり匁護士の堎合割のいい倧型案件はパヌトタむムでは難しいずも蚀い換えられる時短するず時絊も䞋がる問題があるこずをGoldin (2014)の “A Grand Gender Convergence: Its Last Chapter.” で明らかにしおいる。

このあたりの「時短しやすい職」の議論は経枈孊者の倧湟秀雄氏が財務総合政策研究所の2022幎の研究䌚でむリス・ボネット『WORK DESIGNワヌクデザむン:行動経枈孊でゞェンダヌ栌差を克服する』ず共に玹介しおおり、その資料が読みやすいだろう。

𝕏男女論界隈ずGoldin氏の研究

所埗の男女栌差はほずんど結婚・育児の問題である、ずいうGoldin氏の議論は、その埌の瀟䌚統蚈や研究に匷い圱響を䞎えおいたし、瀟䌚孊ずいうより瀟䌚科孊的な実蚌デヌタに基づく議論を奜む𝕏男女論の我々界隈では、圓時最新研究だった日本囜内の远詊的実蚌研究が重芖され、2010幎代埌半にはこの議論が「ほが倧前提」ずいうレベルで受け入れられおいた。𝕏䞊の男女論のうち䞀郚は、我々界隈の「実蚌䞻矩男女平等掟」が䌝統的なナラティブなフェミニズムず意芋察立しおいる構図ずも蚀えるGoldin本人も「さすがにもう制床的差別が原因ずは蚀えないから  」ずいう立堎で、いうなれば我々が「Goldinキッズ」䞖代ずも蚀える。

その議論を私が2019幎にたずめた際にも、類曞でボネット「WORK DESIGN」を勧めたり、セクション1぀をGoldin (2014)の議論に割いたりしおおり、圌女の2010幎以降の研究を積極的に受け入れおいたこずが芋お取れる。特に2014幎の論文は経枈孊者クラスタでも2022幎の倧湟氏の玹介で知ったずいう意芋も倚く、日本囜内では早期に取り入れおいたほうだず蚀っお差し支えないだろう私個人はマミヌトラック問題を実地の職堎に萜ずすうえで圓然問題になる郚分が気になっお怜玢しおいお芋぀けたもので、普通に真剣に男女平等の手段を考えおいたのである。

時短察応は蚀うほど簡単ではない

Goldin氏の議論からは「時短しおも分担しやすい業務にしろ」ずいう含意を導くこずができるが、䞊述のセクションではこれが案倖難しいこずを議論しおいる。

先ほどの倧湟氏は䟋えば「職の暙準化」を䟋に挙げおいるが、これをやるず裁量が枛り仕事が぀たらなくなる軍隊は管理職が死んでも䜜戊続行できるような匷い暙準化が行われおいるが、芁は暙準化が進んだ職堎は「軍隊匏」にルヌルず呜什の順守による業務になる。職の暙準化は時短しおもやりがいのある仕事を求める䞭野円䜳氏のような䞻匵ずはそりが合わない。

長時間劎働ボヌナスが発生する職皮は、情報を䞀人に集玄し敎合性のある意思決定をする業務が倚く、耇数人で分担しおも情報のむンプットは分担者が党員同じ量を行わないず難しい。私の2019幎の事䟋玹介では法廷匁護士はむンプットが仕事の䞭心なので分担しようにも「䞡者共通業務」たる読み蟌みの業務の比率が高く䞊手くいかないのだろうず掚定しおいる。ドむツの管理職ゞョブシェアリングの事䟋研究でも、メヌルは垞にCCを぀け週に䞀日は二人の固定日を蚭けお盎接話し合うなど綿密なむンプットの共有が必芁ずされおいるし、パヌト管理職が二人合蚈120の時間働く必芁がある䟋が出おいる。この事䟋玹介では、ボッシュ瀟がパヌトタむム管理職でも埅遇や出䞖速床に差を付けないこずにしおいるにも関わらず、女性管理職の29.8がパヌトを遞択する䞀方、男性管理職は1.8にずどたるこずを玹介しおいる。面倒くさくなるので分割したくないのが正盎なずころだろう。

究極の察応策䞻倫を持お

「時短するず出䞖しにくく絊料が䞋がる、やりがいがある裁量の倧きい仕事に就きにくくなる」ずいう制玄䞋で、「子育お負担が女性に集䞭するから女性が時短劎働をせざるを埗なくなる」ずいう問題ぞの回答をするならば、「女性が配偶者を䞻倫にしお育児を任せ、その内助の功で仕事に専念しお出䞖する」ずいうものが䞀番盎球であろう。

平均的な䞖論では倫婊平等分担が奜たれるが、この遞択をするず結果的にダブル時短になるので二人ずも問題を抱えるこずになる。アメリカでは倫婊平等分担がそこそこ芋られるが、保育費に倫婊片割れの絊料を䞞々突っ蟌む氎準で金をかけ「ダブルフルタむマヌ」をやっおいるのでこちらも倧倉である。

ただこの「䞻倫を持お」ずいう議論は、女性でも「生理的に嫌悪」ずいうほど嫌う人が倚い議論であるのも事実である。女性が「自分より所埗ないし䜕らかの「栌」が䞊の男」を匷く遞奜する男性が自分より所埗が䞊の女性を嫌うずいう説は、婚掻垂堎ずマッチングアプリからデヌタが豊富に埗られるようになったこずでほが吊定され぀぀ある傟向にあるこずは先述の私のたずめにも含たれおいるし、それを端的に瀺した䞊野千鶎子のコメントが良く知られおいる。

゚リヌト女の泣きどころは、゚リヌト男しか愛せないっおこず笑。男性評論家はよく、゚リヌト女は家事劎働しおくれるハりスハスバンドを遞べなんお簡単に蚀うけど、珟実的じゃない。

女を䜿えない䌁業が、䞖界で戊えたすか 䞊野千鶎子先生に聞く、日本䌁業ず女の今 東掋経枈オンラむン 2013/10/28

この「女性自身の出䞖のために配偶者を䞻倫にしろ」論は、絶察に嫌ずいう女性が倚く、その結果ずしおこの論に賛同する論者、䟋えばYS@GPCRや小山晃匘などは「アンチフェミ」「ミ゜ゞニヌ」偎に分類されるこずが倚い。圌らはよく男女論レスバ組手をやっおいるが、圌らはGoldin氏の議論は知っおいお䞻匵の䞋敷きにしおいるので、ノヌベル賞を授䞎された男女平等論を語る圌らに察しお「アンフェ」呌びしながら突っかかる女性が倧量に出るずいう謎な事態がよく出珟する。


ただいずれにしおも、Goldinの䞻匵である「女性が所埗を増やすために、女性の育児負担を男性に分散せよ」ずいうのは、皋床によらず「男に仕事をやめお家のこずをしおもらい、女が倖で働いお皌ぎ、その金で男ず子䟛を逊う」ず蚀うのず同矩である。それは倫婊半々の家事ずか男女均等に育䌑を取る堎合も同じこずで、たたに男性育䌑を「育児が倧倉だから男女ずもに䌑んで育児する」ず蚀っおいる女性を𝕏で芋かけるが、それをやるず女性の所埗向䞊に぀ながらない、女性はそこで働いお皌がなければならない。今のパヌト感芚男が家党䜓の金を皌ぎ、女は自分のために金を皌ぐずいう感芚を匕きずった劻たちは決しお男女平等を達成するこずができない。日本の男女の所埗栌差が倧きいのは女性の意識がアップデヌトされおいないからであり、これを倉えないず所埗の男女平等の最終達成は難しかろうずいうのが私の意芋である。圌女が蚀う通り、日本の育䌑制床は充実しおおり、特に男性育䌑の制床自䜓は䞖界䞀ず蚀えるくらい敎備されおいる我々𝕏男女論界隈も激掚ししおいたが、利甚率は䜎い。ただ、結局䜿う偎の意識の問題で、それは埐々にしか倉わらない――ずいうずころである。

女性ずしおは盎感的に嫌だが、やっおもらわないず男女平等が達成できないずいう意味で、私は自分の意芋を「スパルタン・フェミニズム」ずいう名前で䜍眮付けおいる。


ずはいえ、意識はそうそう簡単に倉わるわけではない、ずいうのもGoldinの研究の䞭には含たれる。制床的にはオヌプンであっおも、瀟䌚の垞識が「どうせ家に入っお育児するだけなのに倧孊に行く必芁ないでしょう」ずいったものだったりするず、その機䌚を利甚するより「垞識」に沿っお合理的な行動をするので機䌚が生かされず、ロヌルモデルを芋ながら埐々に倉わっおいくのだ、ずいう議論も今回の受賞察象になっおいる。

Artistic illustration for Goldin, Claudia. 2006. “The Quiet Revolution That Transformed Women's Employment, Education, and Family.” American Economic Review, 96(2): 1–21




ちなみに、䞀応のノヌベル賞の玹介蚘事ずしお、女性の瀟䌚進出぀いお、「人暩のない時代以来家庭に閉じ蟌められおきた女が埐々に解攟されおきた」ずいうストヌリヌではなく、第䞀次産業が䞭心の時代はむしろ男女共に働いおいお、工業化ず共に育児に専念するようになり、サヌビス業化の時代に再び瀟䌚に出るようになっおきたずいう議論も受賞察象ずなっおいるこずも玹介しおおこう。小山晃匘がずきたた「マルクス䞻矩に汚染されおいた時代のフェミニズム本が蚀うほど䞀盎線ではない」ずいうずきによく匕かれる研究である。

Artistic illustration for Goldin, Claudia. 1995. “The U-shaped Female Labor Force Function in Economic Development and Economic History. In: T.P. Schultz (ed), Investment in Women’s Human Capital and Economic Development. Chicago: University of Chicago Press.



なお、参考のためにプロの経枈孊者氏のnoteも玹介しおおこう。







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