8月1日 君たちはどう生きるか

まもなく発表会が始まる時間で、もう楽屋から舞台袖に移動しなければならないというのに、わたしは未だ観客席で自分の荷物を抱えながら、自分の台本にピンク色の蛍光マーカーでラインを引いているのだった。

それがどういう演目だったのかは覚えていないが、わたしの役は物語の間ほとんどずっと眠っているという少女であった。

しかし、台詞も少しはあるらしい。序盤に「ええ」と一言の相槌があり、眠りから目覚めた後にまた少し台詞があるのだが、後半の台詞はひとつも見ないままで楽屋へ向かうことになる。

台詞を覚えられたとしても、前後の文脈がわからなければいつ言えばよいのかもわからないのだから、どうしようもなく時間は足りないのだ。

楽屋の入り口にいる先生に挨拶をしたところで、目が覚めた。

よくある夢です。


宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を、7月21日と29日で2回観てきた。
観る前に得ていた情報は、Twitter(※断固として)に漂っていた公式のキービジュアルといくつかの感想のみである。感想といってもネタバレに配慮された内容で、大抵は困惑しているというようなものだった。

ここから映画の内容に触れていきます。






そんなわけで、警報機の音をはじめに聴いたとき、とても苦しいものを見に来てしまったのではないかと思ったのだった。
冒頭の炎の場面は強烈であり、異常なまでの描写をもって死の経験を目に焼き付かせた。眞人にとっての死の経験である。
なんとはなしに、ポニョが水面を駆けるシーンを思い浮かべた。

異世界での移動は脈略がなく、C.S.ルイスの『不思議の国のアリス』を彷彿とさせた。眞人の人格と体はほぼずっと連続しているが、場所は転々として、ひとつの道順として思い出すのが難しい。はちゃめちゃである。
「破綻」と評する人もいるが、わたしの頭では破綻しているのかどうかすらもわからない!

眞人の行動に驚かされることがあった。
喧嘩した帰りに自分で頭に傷をつけたこと、青鷺に対して木の棒を持ち出したこと、青鷺を殺すために弓矢を作ろうとし、夏子の部屋をお見舞いを装って訪れ、煙草を盗んだことなど。
はじめに無口だったのを大人しさだと勘違いしていたために、毎度の行動が突拍子もなく起こされたように思われた。
眞人は、異世界でキリコさんと出会ってから素直になっていったと思う。「便所」ではなく「トイレどこ」と聞いた辺りのことである。
でも契機はあの本を読んだところにあるのだろうな。

パパの運転がカリオストロ

ワラワラの「ワァ……!」

インコの鼻息

カヘッて言わない青鷺(Twitterの見過ぎ)

パンにバターといちごジャムをたっぷり塗って、幸せだったなぁ。

眞人はアンダーワールドを旅して、最後に自分の世界に戻ることを選択する。
「あまり好きじゃない」と言った孤独な世界に、継母と共に帰り、友達を作るのだと。
「自分には悪意がある」と、母と大おじと友人の前で告白することも簡単ではない。
急に頼もしくなった。眞人は成長した。
そのことに巨大な感情を抱いてしまいそうだ。

世界の賛美でありながら、わたしたちに押し付けられたものはなく、ただひとつの問いが残るのみである。




音楽について。ピアノが印象的だった。
青鷺の視線を感じさせる一音。
墓を写し出すと同時に鳴った重低音。
異世界に降りたとき、はじめて「時の回廊」を渡ったとき、そして星が割れたときの和音。

エンディングの「地球儀」はじんわり心に染みる感じがあったけれど、呆然としていて歌詞まで聞けていない。
いつか映画の消化ができたらちゃんと聞きたい。できなくても聞きます。


疑問を書いておく。

・「ワレヲ学ブ者ハ死ス」の発言者は誰か。メタ的な見方はあるだろうが、作品内でいえば大おじの言葉になるのか? あるいは石とか

・ひみはなぜ火を扱えるのか。エプロンドレス姿は魔法少女みたいだけれど…。火事に通じる運命のようなものなのか?

・夏子はなぜ自ら異世界へ向かったのか。

・石とは何か。なぜ契約の相手が石なのか。

・大量発生したなまずたちと蛙たちは何?

・ワラワラも何? 命の種とか、魂の種?

・インコも何? でかすぎる。欲の権化!


蛇足 少し考えたこと

産屋は墓なのではないかと思った。母は石舞台古墳を思い出したと言っていた。
金色の門の先にあった墓と同じ組み方の石が産屋の中にあり、お祓いをするときに使われるようなひし形の紙が回っていて、夏子は白い装束を纏っている。
産屋に入ることは禁忌であった。お産は穢れだとされるが、生者が黄泉の国に入ることとしての禁忌とも捉えられるのではないか。
そうすると、夏子がいなくなったときの、「行きたくて行ったんじゃないと思う」という眞人の発言は正しかったといえる。
ヒミの「妹は帰りたくないと言っている」という発言に対し、夏子は眞人に「逃げて」と言う。夏子は何かの務めを果たすために、あの産屋で眠っていたのか?
姉が火を扱える魔法少女(巫女)なので、夏子も力を持っているのだろうと思う。弓を持っているし。
姉の死も夏子が異世界に行った要因になりうる。


纏まっていないけれど、こんなところで朝ごはんを食べることにする。


適当お茶漬けにハマっている。
お茶碗に温かいごはんをよそって、おにぎり用の鮭フレークと鰹節を散らし、冷蔵庫で冷えている黒豆茶をかける。お醤油を1周して、今日はチーズも少し撒いた。最後に海苔を切って散らばす。
火も頭も使わずに簡単に用意できる上、夏の朝には食べやすくて美味しい。適当すぎるけど……

今思ったけど、冷たいお茶じゃ鰹だしは全然取れないわね。風味要員でした。

雷が鳴っている。
雨雲も来た! 夏だ〜


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