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冬のうた~ささやかなしあわせ~

冬の眉山は紫。

葉を落とし、体のなかでエネルギーがぐるぐる回って

まだかまだかと待ちわびる、春を。

遠くから見れば、何も変わらない枯れ木かも。

でもわたしは知っている。

教室から見えるあの山の

冬の昼間のきらめきを。

冬の眉山は紫だった。

その枯れ木たちは、たしかに、紫だった。


冬が好きになった。

春が好きだった、一年前のわたし。

春のなれば、桜が咲く。

命が唄いはじめる。

春が好きだった。


今年、わたしは発見した。

その春の唄は、冬に準備してきたものだと。

わたしの目には、ほんのわずかな変化も映らない。

そっと触れてみて。

その折れた桜の枝を。

花を咲かせて折れていった、その枝を。

枝が折れたところには、
濃くて、今まで見たことのない春のいのちの色が

春の鼓動に触れてみる。

この左手で触れてみる。


『わたしはそれでしまったけれど、
 それでもしっかり大地に根を張っているわ。

 たまには風に吹かれて、
 折れてみるのもいいものね。

 だってあなたに
 わたしの内なる本当の美しさを

 表面に滲み出る美しさの本当を

 ここでこうやって、
 みてもらえるのだからね。』


冬の眉山は紫だった。

春の眉山は桜色。

夏の眉山は若葉色。

秋の眉山は紅色。


一年前のわたしには

冬の眉山は茶色。

そう映っていた。


一年経ったわたしの目には

すべては、冬の木のその芯から滲み出る

命そのものの色の美しさが映っている。


春が好きだった、一年前までの私。

冬を愛おしく、この胸に抱きしめたく思う、
17歳と3日の私。

2021.4.8


#うみのメモ #命#色#徳島#愛

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