辻村深月さんの「嚙みあわない会話と、ある過去について」

こんばんは。今日もお疲れ様です。

いつもこの時間にnoteを開くと、一番にこの言葉が入ってくる。
これが沁みるか沁みないかで、いまの心の状態が少しわかる。
いつもなら特に気にも留めないけど、今日は沁みます。

ここ数日少し元気がなかったのは自分でもわかっている。
職場でも業務に必要なこと以外は一切喋らなかったし、友人彼氏との連絡もおざなりになっていた。
連絡といっても、わたしはインスタはやっていないし、Twitterも世間のごく一般的な情報と大切な推しにまつわる情報を得るためだけにやっていて、リアルな知り合いとは繋がっていないから、ラインの返信が遅かった、これに尽きる。

原因は自分でもわかっている。(のに、解決するのを先延ばしにしているし、まだ向き合う力が足りないのか、ここにもまだ書けない。)

とりあえず今日書きたいのは、そんな落ち込んだ時に一番支えになるのは、「こんな憂鬱抱えているのは自分だけじゃない」と「知ること」だと、わたしは思っている。

そして、それを知るのに、本は良い。自分だけの感情だと思っていたものが、先人たちが何十年何百年も前に、とっくに得ていたのだと気づくことができるから。そういえば中学生の頃に、何がきっかけだったかもう定かではないけど、ニーチェのあの有名な名言を知って驚愕した覚えがある。

"あなたが出会う最悪の敵は、いつもあなた自身であるだろう。"

中学の時の自分が何をもって最悪だと感じていたのかはわからない。
ただ、改めて考えると、中学時代に感じた最悪と、いまの最悪は少し違う気がする。14の時には自分に期待があったけど、28にもなると自分への期待がなくなるというか、まぁこんなものだよな私は、と思うことが増えた。そういった意味で、今の方が最悪、だ。これ75になった時にも思うのだろうか。もちろん歳を重ねれば重ねるほど「最」は更新し続けられるだろうから、75の最悪は本当に最悪だ。best of worst。

まぁそんな最悪な日々の中で、なぜか引き寄せるものがあるのか、最近は嫌な本にも出会いました。
辻村深月さんの「嚙みあわない会話と、ある過去について」です。
久々に新しい本が読みたいな~(訳:憂鬱な自分と向き合うのが疲れて現実逃避したいな~)と思って横浜駅の本屋さんに入って、ふらーっと見ていた中で目に留まった。

あなたの「過去」は、大丈夫?
美しい「思い出」として記憶された日々――。
その裏側に触れたとき、見ていた世界は豹変する。
無自覚な心の内をあぶりだす「鳥肌」必至の傑作短編集!

そんな風に帯に書いてあったら、気にならないわけがない。未来より過去に思いを馳せがちなわたしにピッタリだ!最近は学生時代のことを思い出す機会も多かったから、なお引き寄せられた。(実は、辻村さんのハケンアニメ!は途中で読むのを辞めてしまっていたので、自分に合うかは不安でした・・)

結論から言うと、何の現実逃避にもなりませんでした(笑)レビューでもたくさんの人が言っているんだけど、これはホラーです。ヒューマンホラー。
自分が記憶している過去の思い出と、相手の思い出って、同じようで全然違う。Aだと思っていたものが、Bだったり、A’だったりする。
別にそこに深い意図があったわけじゃないし、むしろ本人は忘れていたりするけど、相手はしっかり覚えている。逆に相手が忘れていることを自分が覚えていたりする。しかも違う角度・視点で。
あとは、あの頃から何年何十年という時の中で、それぞれその思い出を、それぞれが、引き出しの中から出したり戻したり、着たり日に当てたりを続けてきたことで、色が変わってしまったのもあると思う。黒だったものが気づいたらグレーになっていて、丸だったものが楕円になっていて。
そんなことが計4編の短編エピソードで書かれていました。これ全然フィクションじゃないです、先生。胸が痛いです。

と、こんな文章を考えている中で、そういえばとニーチェのあのセリフを思い出しました。

”事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。”

Aだと思っていた、あの「何か」は、実は最初から存在しなかったのですね、わたしがAだと思っていただけで・・。

しっかりと過去の自分と向き合わされました。自分はいい子で生きてきたつもりだったけど、全然そうじゃなかったかも。いや、絶対そうじゃない。
自分から目を背けたくて買ったはずなのに、640円かけてまた自分の加害性を見なきゃいけませんでした。(涙)

暗い気持ちになりたい時、とてもお勧めです。

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