学会メモ ビフィズス菌の有用性

2021年9月18日農芸化学会シンポジウム「見えてきた、ビフィズス菌がヒトのおなかに棲む理由と意義」の聴講メモです。

【内容】

・ビフィズス菌種の住み分け

 乳児の腸にはビフィズス菌が多く存在することが分かっている。また老化に伴いビフィズス菌の割合が減少していく。ヒトの乳児、大人または他の動物のビフィズス菌の種類は異なる。ヒト常在性ビフィズス菌(HRB)は母乳中に含まれるヒトミルクオリゴ糖(HMOs)を代謝し増殖できるが、ヒト非常在性ビフィズス菌(Non HRB)は増殖できない。母乳中にはビフィズス菌の餌となりうる乳糖が6%ほど含まれるにも関わらずNon HRBが増殖できない原因は、リゾチームであった。このようにHRBは餌(HMOs)と毒(リゾチーム)両方の選択圧を受けている。

・ビフィズス菌の機能性

 1:葉酸はHRBのみが生産する。

 2:オピオペプチドは食事の消化によって発生し、腸管バリアが成熟していない乳児の場合血液に移行し脳に流れた場合疾患につながる。オピオペプチド分解活性は乳児タイプのHRBが有する。

 3:トリプトファンのビフィズス菌代謝産物の一つIndole-3-Lantic Acid(ILA)は乳児タイプのビフィズス菌のみが代謝する。ILAは炎症抑制活性を有し、免疫機能を活性化する。

・ビフィズス菌によるアルツハイマー型認知症予防の可能性

 近年、脳腸相関に関する研究が進んでいることから、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性を探索したところB.breve MCC1274株臨が床試験(二重盲検試験)で認知機能指標の改善が確認され、機能性表示食品届出が受理されている。


【感想】

研究の導入として、乳児特異的なビフィズス菌種とその他ビフィズス菌種でそもそも母乳で増殖するのか?という実験を行なっているところが重要だと思った。そこから関与する成分を特定していく流れがすばらしい。同じ菌種でもこれだけ環境特異的に適応していることがわかり、自分の分野で起きている現象を考え直すきっかけになる。

【この講演を聞いて生まれた問い】

・母乳期間が長い乳児と短い乳児との間に、脳の発達過程に差はあるのか?

・年配者が乳児タイプのビフィズス菌を摂取すると定着する?有用成分の摂取により健康面でのメリットはある?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?