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SDGsとは。その本質を考える。

1.SDGsの認知度について

どうも。専門は「SDGs 」だっけ? あ、「物理・化学」か、、というイジられかたを日々されている『芽もりー』と申します。普段は、私立高校で理科を教えたり、広報活動したりといった感じです。お手柔らかに宜しくお願いします☺︎

 最近、マスメディアでも頻繁にSDGsが取り上げられ、認知度がぐんぐん伸びてきてますね。電通さんによる、最新(2021/4/26日現在)の第4回「SDGsに関する生活者調査」の結果では、生活者の認知率は遂に50%を超えました。

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                 ※全国10~70代の男女計1,400人を対象

 SDGs認知率はコロナ禍を経て、昨年(2020年1月)からほぼ倍増したが、肝心の「内容まで知っている」は20.5%にとどまっています。そこから更に「要点を理解して、正しく伝えることができる」レヴェルにまで達している方はそういません。SDGsって何だか分かりにくい、って感じの方も多いと思います。そんな訳で今回は、そもそもSDGsとは何かということから、SDGsの特徴や本質までお話させて頂きます!

2.SDGsって何だろう

SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標) の頭文字をつないだ言葉です。「誰一人取り残されない」という理念を掲げています。そもそも「持続可能な開発」という考え方は 1980 年代に登場し、「次世代の幸せを奪わずに今の世代の幸せを考える」という意味だそうです。開発より、成長、発展の方が意味を掴みやすいかも知れません。         ちなみに、下図のように「流しそうめん」に例えられることも。(ESDはお気になさらず、SDGsの教育バージョンの呼び名とご理解ください)
食事会や飲み会で後から参加する人のために、お皿に盛って残しておくことにも似ている。我慢ではなく、美味しさや楽しさのシェアとも考えられる。

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 つまり、SDGsとは『将来にわたり全ての人が快適に暮らせる世界を実現するための目標』であると捉えると良いと思います。

 近年、気候危機(変動)による自然災害や貧富の差の広がり、国境を超える感染症など、グローバル化によるマイナスの 側面が深刻さを増す中、SDGsは、こうした地球規模の課題を乗り越えるための「未来を変える17の目標」として誕生しました。2015年に国連で全会一致で採択され、2030年を達成の期限としています。(他にも、全世界の多様な人々1千万人の声を反映した地球市民みんなの目標 つづかない世界をつづく世界にかえる目標など色々な言われ方をしています)

 ここまで具体的に未来の姿が描かれ、しかもそれが世界中のすべての国に合意されたのは、人類史上 初めてといっても過言ではありません。SDGs は、全世界がこれから進むべき方向を示しており、「未来の世界のすがた」なのです。

3.SDGsの各目標を見てみよう

では、SDGsの各目標を簡単に見てみましょう。気になる目標はありますか? 私は、4番と13番の目標に心のモヤモヤというかマグマというか、なんとも言えぬ感情が湧き上がってきます。(別に聞いてないですね笑)

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4.SDGsの本質①「測って比べられる」

17の目標は、169のターゲット(具体的目標)と、その成果を測るための232の指標(メーター)で構成されていて、 各地域・国ごとに「測って比べる」ことができます。169のターゲットを一つずつ見ていくのは、大切ですが、日が暮れてしまうので、今回はやりません笑。(下図:参考例)

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ここでお伝えしたいのは、「三段構えにより測って比べられる」ことこそSDGsの重要な仕掛けであり本質の一つだということです。これにより、世界中の情報と現状が正しく可視化されることで、世界中で正しい行動が生まれています。実際に、数値目標はモニタリングされ、毎年、達成度合いや進捗状況が全世界に公開され共有されています。ちなみに下表は、2020年度、各目標の地域別達成度に関するものです。【 高い 緑←黄←橙←赤 低い 】

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 この表からは、先進国が多く含まれるOECDの達成度が高いことや、サブサハラアフリカでの取り組みが遅れている(赤がほとんど)こと等が読み取れます。

 ちなみに2020年、日本の達成度は17位という結果でした。日本における各目標の達成度や進捗度は以下の通りです。目標5、10、13、14に課題があります。*SUSTAINABLE DEVELOPEMENT REPORT 2020

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5.SDGsの前にあったMDGsとは

 三段構えで測って比べる仕組みの原型は、貧困を無くすために2000年につくられた「MDGs(ミレニアム開発目標)」から引き継いでいます。8つの目標、21のターゲットから構成され、途上国の問題を解決するための目標です。下記に示したように(小さくてごめんなさい)一定の効果があった反面、期限だった2015年までに達成できなかった問題があったり、新たな課題が見つかったりしました。また、当時は世界経済が潤い、富の総量が増えれば、シャンパンタワーのように貧しい所にもお金が行き渡ると考えられていましたが、それは間違いでした。結果として、残念ながら世界中で格差は拡がり続け、様々な地域・立場の人が取り残されてしまったのです。これらの反省をもとに、次こそは「誰一人取り残されない」世界を創ろうということでSDGsの理念「No one wii be left behind」が誕生しました。(誰もが置き去りにされる可能性があるため受動態になっている)

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 これらの課題を引き継ぎながら、更に「気候変動対策」や「雇用や労働のあり方」「平和」「イノベーション」『エネルギー』などの現代的な課題が追加されアップデートされたものがSDGsです。MDGs は途上国を先進国が助けるしくみである一方、S D G s は先進国・途上国問わず、すべての国を対象としています。

 SDGsが全ての国を対象にしているのは、途上国だけでなく、先進国にも、先進国ならではの課題(例えば、日本も6、7人に一人は相対的貧困)があるからではありません。もちろん地球規模的課題に対処するためといえばその通りです。しかし、それよりも重要な視点は、「途上国と先進国の課題がつながってしまっている」ということです。グローバル化により国家間の人・資源・情報の流れが爆発的に増加し、一見する途上国国内の問題に見えても、実際には国の枠組みを超え、さまざまな原因が絡み合っているため、先進国も含めた世界全体の枠組みで対策を講じる必要があります。

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6.SDGsのカラフルなアイコンに問題点がある?


 改めて、SDGsの17の目標アイコンを眺めてみてください。イラスト付きのカラフルなアイコンはとてもわかりやすい一方、このままではSDGsの大切な考え方が伝わらないのでは?と問題視されている点があります。実際、このイラスト全体に関して国連でも議論が巻き起こりました。さて、一体どこでしょうか? 

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 正解は、目標どうしがタイルのようにバラバラに配置されていて「目標どうしのつながり」が見えない点です。SDGsの17の目標は不可分一体の目標です。独立して存在するのではなく、お互いに作用し、相互に依存しています。

7.SDGsの本質②「目標どうしのつながり」

 この『目標どうしのつながり』はSDGsを理解し語る上で最も重要だと私は認識しています。例えば、発展途上国に学校を作る例を見てみましょう。 

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せっかく学校を作っても子どもは来ませんでした。家族が貧困から抜け出すため、一日中働かなくてはならないからです。そもそもなぜ一日中働かなくてはならないかというと、先進国に住む人が安いパーム油を使った食料品や化粧品を求めるからです。(日本人は年に5kgも消費)安いパーム油を作るには、違法に熱帯林を伐採することで大規模農園をつくり、過酷な労働環境で働かせるほか方法がありません。そして、森林が伐採され、地球温暖化が加速し、不作や異常気象が起こります。その結果、雇用がなき都市が増え、世界中で失業者が増加し、仕方なく多額の給料が貰えるテロ組織に入る。このような負の連鎖(負のSDGs ドミノとも)が現実に起きています。上記で示した通り、途上国と先進国における課題のつながりが鍵を握っています。
 この問題は、決して他人ごとではなく、私たちの選択と行動の結果引き起こされています。つまり、一人ひとりがSDGsを自分ごととして捉えることで世界は良くなるともいえます。

 一方、正の連鎖を生み出す「目標のつながり」も数多くあります。下図は、ベルギーのRembertさんが作成した17の目標とそれに関する項目を地下鉄の路線図のように線で結んだものです。さまざまな課題が繋がっていて複雑に絡みあっていることがよく分かります。繋がって「しまって」いるから皆で一斉にアクションを起こさなければならないと言えるし、繋がっているから「こそ」1つに取り組むことが全てに取り組むことにつながると、ポジティブに解釈することもできます。

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8.経済・社会・環境の3要素の調和が重要

 もう少し大きなくくりで見ていきましょう。実は、17の目標は、大きく「自然環境」に関わるもの、「社会」に関わるもの、そして「経済」に関わるものと、3つの項目に分けることができます。そして、SDGsを達成するには、経済・社会・環境の3要素が調和している状態が求められます。(以下、例)
経済発展による大気汚染問題、年間880万人が亡くなっている
                       【 経済>社会(健康)】               フランスの黄色いベスト運動、温暖化対策のために燃料税(炭素税)増税
                       【 環境>経済(格差)】
バイオ燃料の普及(全生産量の30%使用)、トウモロコシ不足、価格高騰
                                                                                        【 環境>社会(飢餓)】

このように「あちらが立てばこちらが立たず」つまり「トレードオフ」の関係になってしまう場合が多いのが現状です。いかにこの3要素を並び立たせるかは重要な課題になっています。国のみならず個人や企業に、トレードオフではなく、シナジー(相乗効果)を生みだす取り組みやイノベーションが期待されています。

 より俯瞰してみるには、経済・社会・環境の3要素からSDGsを捉えた有名な図が適しています。スウェーデンのロックストーム氏が提唱した「ウエディングケーキモデル」です。下図をご覧ください。ケーキの最下層を分厚い「自然環境」が支えています。そして真ん中の層が「社会」、そして一番上の層が「経済」となり、3層を貫く形で目標17番のパートナーシップがのっかっています。

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 経済成長や 技術革新といった「経済」に関する目標を実現するためには、暴力や紛争がなく、健康で日々の食事に困らない「社会」でなければなりません。更にそのような社会の根幹のとなるのは、私たちが生きていくために必要な水と陸や海の豊かさ、「自然環境」です。私たちが何を飲み、何を食べ、どんな土地に住んでいるかを考えると当たり前かも知れません。経済活動と人間社会は「自然環境」を土台として成立しているのです。

 2020年から猛威を奮っている新型コロナウイルスも良い例かも知れません。コウモリ由来の感染と言われている通り、「自然環境」が破壊(人が自然・生態系に介入しすぎている)されることにより、健康「社会」に多大なる影響を及ぼし、世界中の「経済」がストップしてしまいました。
 自然環境、すなわち地球は既に限界に達しており(火星と比較すると恒常性、自然治癒能力を失っているらしい)世界は気候危機に瀕しています。更に気になる方は「プラネタリー・バウンダリー」と検索してみてください。

9.SDGsの本質を表現した『SDGsの桶』

 ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。SDGsについて少しでも理解が深まれば幸いです。まとめとして、私がデザイナーのMIZUHOさんと一緒に制作した『SDGs』の桶を紹介します。(ドベネックの桶をもとに創作)

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 桶が17枚の板(各目標)から作られているとすると、複数の板が長くて も、一枚の板が短いと、そこから水が流れ出てしまいます(課題の連鎖)。桶中の水量は持続可能性と捉えてください。つまり、全ての板の長さを高くすることの重要性を表現しています。

 ★SDGsの本質とは
「測って比べる」
ことができる→指標(数値目標)を板の長さで表現
「17の目標のつながり」→相互連関性や同時解決性を板のつながりで表現
この2つだと私は考え、それを表現しました。

 ちなみに2019年度の日本におけるSDGs各項目の達成度を参考に制作しています。(5.12.13.17目標の達成度が低く、1番短い板になっています)
 上図では、日本のみを取り扱いましたがですが、SDGsは、日本のみならず、全ての国と地域で持続可能性という名の水を貯めなければなりません。

 下図は、先進国クラブとも呼ばれるOECDとサブサハラアフリカの比較。
(記事前半にある地域別達成度 2020年版をもとに進捗状況と達成度の両方を表現しています)
 サブサハラアフリカ地域は、かなり深刻で長い板すらない状況です。そして、長い板を作れないのは先進国の影響かも知れません。当然のことながら、まだまだ全ての国や地域で短い板の目標を同時かつ着実に伸ばしていく必要がありそうです。

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 桶を構成する部分として、他に「底板」と「タガ」がたります。底板は、人々のSDGsへの「意思の強さ」であり、タガは人々の「繋がりの強さ」なのではと私は考えています。タガが外れるという言葉があるように、気が緩んでしまい人や国の協力が弱まってしまえば、SDGsは決して達成できません。


10.SDGsの正式な文書のタイトルは何でしょう

 実は、「Transforming our world:the 2030 Agenda for Sustainable Development(我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)」という名称で国連にて採択されました。(ぜひ原文を読んでみてください)
 決議書は、「SDGs」ではなく、「我々の世界を変革する」というタイトルなのです。この変革「transform」という言葉が使われていることが重要です。電車を乗り変える時などに使う「変える:change」ではなく、サナギが蝶に変わるなど、根本から変化する際に使われる「変わる:transform」が用いられています。これは人類も地球もこのままでは持続不可能であり、早急な抜本的変革が必要だということです。2030年までの時間は限られています。
 しかし、先述の通り、SDGsの目標は繋がっています。もっと言えば世界はつながっています。繋がってしまっているので課題の連鎖が起きるとマイナスに捉えるのではなく、繋がっているからこそ私も変革の起点になれるとプラスに捉えることができます。安いパーム油の商品を買うのではなく、認証マークの付いた商品を買う。そんな些細なことの積み重ねで世界はトランスフォームしていきます。誰しもが世界を変革する主役なのだと私は思っています。そして、一人でも多くの人にSDGsを理解し、行動してもらえるよう、noteを通して、SDGsに関する様々な情報を発信していく予定です。

 新聞やカードゲームを用いて、楽しく本質を学べるSDGsワークショップを開催しています。気になる方は、ご連絡いつでもお待ちしております。
 また、地球に優しいデザイナーことMIZUHOさんにもデザインの依頼が可能です。

 次回は、企業がSDGsに取り組まなければならない理由やSDGsの不完全な部分や更なる可能性についてお届けする予定です。

芽もりー


※ドベネックの桶について
リービッヒの最小律という考え方があり、植物の生長速度は、与えられた窒素・カリウム・リン酸といった栄養素や水・空気・日光のうち、最も少ないものにのみ影響されるとする説です。そして、ドベネックの桶は、このリービッヒの最小律を例えたもので、生長を桶の水量に、桶の各板を養分に見立てています。









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