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映画感想「茶飲友達」

あらすじ

2013年10月に起きた高齢者売春クラブ摘発のニュースに着想を得て生まれた社会派群像劇
主人公・佐々木マナ(岡本玲)は高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」を設立。新聞の三行広告に「茶飲友達、募集。」と掲載し、集まってきた男性のもとへ高齢女性を派遣するビジネスを始める。

語られる問題提起

エロいのかと思いきや、さまざまな社会問題を混ぜ込んだんだ作品だった

  • 「人生100年時代」って言われる高齢化社会の高齢者の孤独

  • 高齢者の社会への関わりの低さ

  • 老老介護

  • パチンコ依存

  • 独房のようなキレイな介護施設

  • 妊娠しても女1人で産んで育てるなんて無理ゲーな日本のシステム

  • なにもやる気がないその日暮らしの若者たち

など

感想

実際の事件とは異なり、リーダーを心に暗い過去を引きづってる若い女性にすることで「性」に対するとらえ方が変わっているし、
高齢者への扱いも決して商品扱いしない
「高齢化社会の新しいビジネスモデル」をつくって自分の「ファミリー」を増やすことに命を燃やすマナ
家族ってなんだろうって映画

正しいことが正義って本当の母親
「母親がもうすぐ死ぬんだよね。
でも、全然悲しくない。私なんか欠けてるのよ」

是枝監督の「万引き家族」と一緒で、
今まで一緒だった時ともう会えなくなってしまってからと
どっちが幸せなんだろうって
「正義って何」っていうのがこの映画の主題
それは、ラストの受話器を取り落とすシーンで物語っている



PLAN75との比較

不幸なことに、同じようなテーマの映画が同じような時期に作られることは多い(社会のニーズが生むシンクロニシティなんだろうな)
向こうは大女優なのでどうしても見劣りしてしまうが
内容としては、先の問題提起の数としてもラストのカタルシスといい
だいぶ僕には刺さる映画でした
向こうが変な法律を押し付けるディストピアもので、合法のなかで孤独を表現してるのに対し、
この映画は、実際の事件がベースで、違法のなかで孤独をいやすことを表現してる
まったく真逆な映画

何が違うのかなと考えると、この映画は主人公が若い女性で周りのクルーも含めて、今の時代のよくわからないシステムになんとか反抗しようとする若い世代の物語なのだ。
親世代からのツケをどうやって、払っていくか
がんじがらめの世の中でどうやって幸せを掴むか
っていう

「ファミリー」と呼ばれる気持ち悪さ

ちょっと気持ち悪いのが「ファミリー」という言葉
「わたしたちファミリーなんだから」 ってセリフが何度か出てくる
この作品の中では、最後のカタルシスが起こって
散り散りになってしまうまでは「ファミリー(疑似家族)」の関係は、悪くない。
マナは本気で「ファミリー」を作れると信じてた
それは、会員1000人のパーティで一瞬だけ叶った
一瞬だけ

でも、「ファミリー」っていうと犯罪の匂いがする
ゴットファザーとかシャロン・テート殺人事件のマンソンファミリーや
日本でも尼崎の角田美千代が起こした連続殺人事件も
暴力で無理やり従わされていた彼女が率いる「ファミリー」だし

この映画では、そんな気持ち悪さはなくリーダの佐々木マナの心を埋めるために「お金」でつながってる感じでしたが
急に「恐怖」で支配するようになると偽物家族は変貌してしまうのかもっていう危うさを「ファミリー」って言葉から感じていた
多分、実際の事件はこんなにやさしさに溢れるものじゃなくてただヤクザな事件だったんだろうなって思った

いいセリフ

ルールを破った事がバレるとみんな不幸になるシステム
たぶん、最後の取り締まり室での一人語りは一番主張したいところなんじゃないかな
「正しいことしたって誰も幸せにならない」っていうマナに
「あんたは自分の寂しさを他人の孤独で埋めてるんだよ」
正義を守る警察は正論しか言わない

幸せは結局つかめなかったのか、
一瞬掴んだけどすぐに行ってしまったのか?
社会の中で正義は大半に人にとっては生きていくのに正しいルール
でも、
誰かの正義は、自分の正義じゃないこともある
折り合いをつけて生きていかねばいけない
そんなことはわかってる
けど、
胸の中にモヤモヤをのこしてこの映画は終わる.…

最後に

もし、まだ両親のいずれかがご存命なのでしたら
たとえ、なにかわだかまりがあったとしても
今すぐ電話をして話をしてください。
っていう映画でした。

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