『地球の限界』を考えてみよう。それは・・・(6)

引き続き、ご紹介します。
 
壊滅的な火災となっている原因 その3:高温
 少雨で乾燥しているだけでなく、今夏(北半球の冬に当たる)は、例年に比べて気温も高く推移しています。2019年中には、平均気温も最高気温も過去最高を記録しました。また、シドニーでも2020年1月4日に、過去の最高気温記録が塗り替えられ、西部の町ペンリスで48.9℃を記録。それまでの最高記録47.3℃を1.6℃も上回りました。
 ユーカリの油分(精油)には、テルペンという揮発性の高い引火性物質が含まれていますが、気温が高くなると、このテルペンの量が増え、濃度が上昇します。火が起きているところでこのような状態になると、まさに火に油を注ぐ格好となり、火災が拡大してしまう一因になっているのです【2】
 ただし、落雷や摩擦などによってユーカリが自然発火することはあるものの、近年の火災原因は人為的なものがほとんどとなっていて、過去の調査では、落雷による自然発火はわずか13%。残りの87%(うち40%が放火)が人間の活動に由来する=人為的という報告もあります。

脚注
【1】
 1月11日の時点では、焼失面積は約110,000平方キロメートル、死者数27人、ニューサウスウェールズ州だけで5?8憶、他州を合わせると何十億もの生き物が死んでしまったのではないかという試算が発表されました。
【2】
 1991年に米カリフォルニア州オークランドヒルズで起き、3,000以上の家屋が焼失した大規模森林火災について調査したところ、この火災で放出されたエネルギーの約70%がユーカリによるものと推定されました。しかし、この火災がたまたまそうであっただけで、カリフォルニアの森林火災の原因がユーカリに限定されるわけではなく、もともとその土地に自生する樹木自体にも可燃性の高いものが多いようです。なお、カリフォルニアのユーカリは1900年代初頭にオーストラリアから持ち出され、植林されたものだそうです。
 
・2017年、サイエンティフィック・アメリカン誌のジャーナリスト、カレブ・シャーフは森林火災に目を付ける。
針葉樹林を1エーカー燃やすと4.81トンの炭素を放出する。=400億トン放出とは、毎年およそ100億エーカーの林を燃やし続けることを意味する。
・1988年以降に排出された温室効果ガスの71%の元をたどると化石燃料を扱うたった100社に行きつく。
※88年以降のCO2総排出量の7割、化石燃料業界から
 
国際環境評価NGOの英CDPは7月10日、1988年―2015年までの世界の二酸化炭素排出量の71%を、化石燃料業界の100社が占めていると最新の報告書「カーボン・メジャース・データベース」で発表した。

 同報告書は、クライメート・アカウンタビリティ・インスティチュート(CAI)のデータベースをもとに、企業が排出したCO2について解説し、さらに将来の見通しにも触れている。CDPテクニカルディレクターのペドロ・ファリア氏は、「CO2排出量の削減に対処するための、組織的な変化を遂げるための鍵を、わずか100社が握ることを、この事実は示している」とした。

 100社には国営、民間の企業が含まれる。特に民間企業は、同業界の32%、世界の全産業における5分の1のCO2を排出。サステナブルな経済への移行には、個人投資家の責任投資に対する意識醸成が不可欠であることを浮き彫りにしている。投資家は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に沿った情報開示と、パリ協定の目標に照準を合わせ、「サイエンス・ベースト・ターゲッツ・イニシアティブ(SBT:科学と整合した目標設定)」に即した削減目標の設定を、企業に求める必要がある。

 昨年11月発表のCDPの報告書「オイル・アンド・ガス・セクター・レポート」によれば、スタトイル(本社:ノルウェー・スタヴァンゲル)を筆頭に、化石燃料業界には、すでに自然エネルギーに切り替え始めている企業もある。この報告書を受け、「カーボン・メジャース」では、気候変動に取り組む企業の役割について説明され、2100年までの予測も立てられている。
 
 リチャード・ヒード CAI代表は「世界規模で急速に自然エネへの転換が進む現状を考慮し、化石燃料業界各社は将来設計を行うことを迫られている。気候変動の影響を感じ、自然エネルギーに切り替える顧客、消費者、投資家など、多くの人々のために変革を行う義務がある」と述べている。

「カーボン・メジャース」で触れられている100社中、排出量が多いと指摘されたのは、国営企業ではサウジアラムコ(本社・サウジアラビア ダーラン)、ガスプロム(本社・ロシア モスクワ)など、民間企業ではエクソンモービル、シェル、BHPビリトン(本社・オーストラリア メルボルン)などとなっている。
 
 
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